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個人でできる生産性向上

あたりまえのことですけど

 残業すればするほどコストはかかります

「みなし残業だから大丈夫」なんてマヒした考え方をしていたら、それはもう企業にとって損害を与えかねません。なぜなら、そうした考え方を許容し、実践させると、物理的にも心理的にも同調圧力を周囲にも強いる結果となるからです。なかにはみなし残業の対象ではない人だっているでしょうし、日頃から思考しないようになればみなし残業時間内で済まなくなっていきます。

とことん生産性を高める努力もせず、

 「期限さえ守ればいいんでしょ」
 「残業で何とかなるから大丈夫」

という甘えた考え方をしはじめたらもう末期症状です。集団でそうなっているようならもう既にちらほらと鬱になって休職していたり、離職していたりしてるんじゃないでしょうか。

「働き方改革」という言葉もそろそろ安定して根付いてきた気がする昨今ですが、しかしどこの企業でも現場の中では

 「ただ単純に残業減らせって言っても」
 「売上や利益が落ちてもいいのか」

等の声があがっていると言う話を耳にします。もちろんただ残業規制等を行えばその通りにできる…と言うわけではありません。国もそんなことが荒唐無稽であることは分かっています。

だいじなのは「既存リソース内でパフォーマンスを上げる」ことです。
リソースには、人的、金銭的、物理的の他にも「時間的」なものも当然含まれます。

私は、働き方改革には大きく3つのテーマが求められていると考えています。それが、

 ①ルールや規制整備による一定の強制力
 ②競争力をつけるための企業取組みの促進
 ③チームや個人の生産性向上

です。

①はいわずもがなトップダウンアプローチです。

どんなに下手に出て周囲にはたらきかけても、世の中の「人」と言うのはなかなか言うことを聞いてくれません。

そのせいでどんなに景気が悪くなろうが
そのせいでどんなに精神疾患者が増えようが
そのせいでどんなに若い命が失われようが

自分の身の回りに被害が及ばなければ殆どの人は関心を持たず、延々と改善を加えません。特に役職が上がれば上がるほどそういう傾向が強くなっているように見えます。

だから元々国が定めていた基準に則り、平然とアンモラルな活動を続けていた企業や、企業にそう言ったことを強制する顧客の考え方を根っこから改めさせるためにはこうしたトップダウンでの強い意思と決定を実現する行動力が必要となります。

②はそうした国の規制整備に対して、個々人の努力だけでは改善できない現状を「規程類」と「環境」から変えていくというものです。

たとえば「国が残業するなと言ったから残業しないでください」と言うのは、言われたから従うというだけで企業としての改革ではありません。

それが実施できるようにするために、「定常業務の簡易化」「システム導入による自動化」など個々人の活動をよりスムーズにするような支援をする必要が出てきます。

それを個人に全て丸投げするのは組織のすることではなく、個人事業主の集合体でしかありません。

組織とは、端的に大きく分けると「金を稼ぐ部署」「それを支援する部署」の2種類があります。ごく一部を除き、そのどちらにも属さない組織と言うものは存在しません(内部監査室などの自浄能力を求められる組織もありますが、どこの企業も全体の1%未満です)。

前者は、その目的のために必要な努力を惜しんではいけませんし、その目的を永続化するための仕組みや人材の育成なども当然必要になります。ただし金を稼ぎさえすればそれ以外はどうでもいいと思っていいものではありません。ガバナンスやコンプライアンスを無視するようになったら、それはただの無法地帯でしかなく、パワハラの温床にしかならなくなってしまいます。

後者は、前者を最大限生かすために全てを費やす必要があり、決してその邪魔になるようなことがあってはなりません。逆に言えば、その目的を果たせない部署は存在価値が無いと言ってもいいでしょう。

それぞれの組織が、それぞれの目的に応じて効果を最大化することが求められています。そのために「役職」と言う縦の構造があるのですから、その「役職」にみあった役割責任において部下のパフォーマンスを最大値化を図れていなければ、つまりは役職として評価に値しない…と言うことになるのです。

そして最後に③です。生産性向上も立派な働き方改革です。

しかも大抵は小チームや個人の中に閉じて実施ができるため、とにかく"簡単"です。私に言わせれば、ごくごく簡単なことであればみなさんが現在担っている活動のうち、その何割かの活動に対しては生産性を数百倍に高めることができると確信しています。

当然、すべての仕事…と言うわけではないので総じて1日あたりの生産性は数%~十数%程度かもしれません。

しかし、仮に10%改善できるとして1日8時間+4時間残業することが当然のように行われているとした場合、

 1.2時間

の改善が可能になるということです。
1年を200営業日と仮定すると、実に

 240時間

もの無駄な時間を改善でき、プライベートに向けることも可能になるということです。そんな中でも新人教育などでよく取り上げるのが、

 「IME辞書登録の活用」

です。残念なことに「使ったことが無い」と言う人も多いかも知れませんし、利用したとしても簡単な定型文程度しか用いていないかもしれません。

おそらくは、IMEの辞書登録に改行コードすら利用できることを知っている人も少ないことでしょう。たとえばIME2010であれば次のような手順で改行を含む辞書を登録できます。

こうすることによってメールのテンプレートや、プログラムの基本構文などをあらかじめ作っておき、それをたった1字入力するだけで変換できるようにしておけば、数百~数千秒の改善が可能になります。

こうしたマクロ機能のようなものはいたるところに点在していますが、使いこなせている人はさほど多く見かけません。

わかりやすく言えば、

 IT企業であるにもかかわらず、ITが使いこなせていない

人が多いということです。ペーパーレス化が普及しない部署や個人なども、そういった改善ができていないということでしょう。

 

これら個人レベルで生産性向上に対する意識が向上しない背景には、「お金」ひいては「時間」と言う概念の存在が希薄と言うことが関係しています。思考停止してただ盲目的に目の前の作業をこなすだけで満足してしまっている証拠です。

みなさんは「時間の使い方」について、日々どこまで真剣に考えていますでしょうか。そして、その時間に対する対価こそがそのまま

 「お客さまが汗水流して稼いだお金」であり、
 「生産部門のみなさんが苦労して稼いできたお金」である

とどこまで強く意識して日々仕事に向き合っていますでしょうか。

たとえば、IT企業の年間平均利益率はおよそ5~6%と言われています。10%を超えたりなんかしたら快挙なわけですよ。

この数値自体はさほど悪い業績ではありませんが、もっとリアルに認識するなら、

 "単価100万の売上に対して、5万円しか利益が出ない"

ということでもあります。対して、単価100万の社員が1人日無駄にしてしまっただけで、単価100万(およそ課長クラス)の人が1か月働いて稼いだ利益を無に帰すと言うことです。

たとえば、課長や部長クラスであれば、たった1日ふらふらとしていてまったく生産的でない時間に充ててしまった時点で、あるいはタバコ休憩する頻度が高すぎたせいで単価100万の人が1か月働いて稼いだ利益を無に帰すと言うことです。

たとえば、会議1つ取っても平均単価80~100万の人材が5人そろって2時間会議すれば利益5万が吹っ飛びます。2時間でその経費にみあった価値ある結論が出ているのか?と言うことです。

そんな風に考えられていれば無駄な仕事なんて絶対にしなくなります。

生産性を向上するということは、常に

 その責任と覚悟をどの程度持って、
 日々の仕事に取り組んでいるのか?

という意識が不足してないかが日々問われていることでもあります。だからこそ生産性を向上させようと日々努力している人は、お金や時間に対する責任意識が強く、将来的に大きな仕事あるいは組織、または企業を任せられるという安心がついてきます。

 

お客さまが支払ってくれるお金も、元々はお客さまの企業内で、誰かが苦労してコツコツ稼いできた売上ひいては利益から転用されているものです。『会社の予算』とはそうして生まれるものであって、いつのまにか潤沢に存在しているわけではありません。

人件費として私たちに支払われる給与も、そこから捻出されます。

であればこそ、1円たりとも無駄にしないつもりで、

 経費にみあった活動
 経費にみあった成果

に対して最大値化を図ることが求められるわけです。そしてそのことに思い至らない人たちが、個人の生産性を下げているのです。

 

随分前に書きましたが

 -0.3%運動

と言うものを掲げたことがあります。
これは何かと言いますと、

 「一人ひとりがたった0.3%でいいから、
  日頃の業務を改善し、効率的に仕事を進めよう」

というものです。なんかもう…あまりにレベルが低すぎて、全くやる気が起きないと言う人も出てきそうですが、逆に状況も見ずに「10%改善しろ」と言われた方が非現実的で、それこそやる気以前の問題です。

具体的に0.3%と言うと、

 1時間(3,600秒)あたり10.8秒の改善
 1人日8時間(28,800秒)あたり、108秒…すなわち1.8分の業務効率改善

をしようと言うものです。

キリのいいところで従業者を500人とし、また1年間の平均営業日数を200日と仮定しましょう。

すると、

 (1.8分 × 200日) × 500人 = 375人日 = 18.75人月

の業務改善ひいては経費改善が見込める…と言うことです。
1人あたりの平均単価を100万と仮定すれば、売上はそのままに

 18.75人月 × 単価100万 = 18,750,000円
             ≒ 1900万

の利益改善ができるという計算になります。一人ひとりが1日あたりたった2分の業務改善を行えば、毎年1件新築で家が建てられてしまう計算になりますね。

どうでしょうか。

みなさんは本当にたった0.3%の改善を鼻で笑っていいレベルだと思いますか?

もし一人ひとりが1%も改善してしまったら、毎年決算賞与相当の利益改善になるかもしれません。一人ひとりが1時間あたりたったの数十秒改善するだけで、です。

ほんの少しの自己改善、ほんの少しの生産性向上がどれだけ組織や企業に大きな影響を与えるかについてすこしは実感できたでしょうか。

 企業の生産性向上は、個人の生産性向上の上に成り立っています。

個人一人ひとりが生産性向上を強く意識しない限り、決して組織だった生産性向上にはなりえないようになっているのです。

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