見出し画像

主体的に進めることが可能な仕事の正しいススメ方

PDCAのほか、PDCあるいはOODAなど、様々なプロセス改善手法が提起されてはいますが、そもそもPDCAすらまともに利活用できないのでは他の方法も大して活用することは難しいでしょう。

「PDCAはもう古い」

なんて言葉も聞こえてきそうですが、決してそんなことはありません。

というか、PDCAすらまともに実施できないようでは「物事を正しく見る」ことも、「適切な判断を行う」こともできないと私は考えています。業種によっては、末端の従業者や担当レベルであればPDCAを捨ててほかの方法を採用しても何問題はありません。むしろ有効に機能することもあるでしょう。

しかし、どの企業であっても、どの組織であっても、少なくとも経営層や管理職になる人はPDCAができなければ話になりません。事業の在り方が

 計画 → 評価 → 是正

の繰り返しで実施されなければならないものとなっているからです。上場した企業にいたことがある人は否応なく理解しているはずです。それ以外の方法を認められていませんし、機関投資家も個人投資家もそれ以外の方法を認めていません。

経営や管理においてPDCAが推奨されるのは、そもそもPDCAの生い立ちによるところが大きいでしょう。

PDCA は元々生産現場で品質管理などの継続的改善を行う手法として用いられてきたものです。PDCA は日々劇的な変化を起こしづらい環境の中で最善を尽くす方法を探るメソッドです。企業経営は規程などによってガッチリと固められていますし、組織マネジメントもある程度その制約を受けますので、勝手に劇的な変化を起こすことができないという条件にピッタリ合致します。

一方、OODA は元々軍事戦略を策定する際に用いられ、その後ビジネスの世界に応用されるようになった手法です。戦場から生まれた OODA は、刻一刻と変わる状況に対応できる機動的なメソッドです。動くことを前提にしているメソッドなので、時代の変化や顧客ニーズに対する即応性が高いと言えます。マーケティングや営業業務など「相手の出方次第」で予測することも難しい場合は戦略の幅を限定することもできないため、OODAのような方法が向いているといえるかもしれません。また、セルフマネジメントの裁量内であればどのような職種・業種であってもOODAを採用していいと思います。

したがって、明確な答えを定義することが難しい中で「相手の動きを含めた状況分析を行い、自分の戦略作戦を実行する」のが OODA であり、一定の答えをあらかじめ決めておくことが可能で「その手順に従って状況分析を行い、自分の状況を改善していく計画を立て実行する」のがPDCA です。

個人的にはPDCAとOODAは両立できるとさえ思っていますので、そもそも両方使いこなせばいいだけのことです。どちらが良いとか悪いとか勝手に決めつけて、選択肢をわざわざ狭めようとするのは愚の骨頂です。


それにしても、日本人はこのPDCAプロセスアプローチを非常に苦手とする人種と言われていますがなぜ苦手なのでしょうか。実際に観察してみると、厳密に、PDCAサイクルを実施すること自体が苦手なのではなく、

 ・最初から導入しようとしない
 ・ライフサイクルと言う考え方がない

風土や文化の方が色濃いようにも見えます。

これは、PDCAの本質を理解していないからという側面もあるのでしょう。

事実、PDCAに関する書籍群は非常に数多く出版されていますし、そういった説明がなされているWebサイトもたくさん見かけますが、その中でPDCAが本当の意味での『目的』が記載されていないか、記載内容がごく一部であるものが殆どです。

これでは理解できるはずもありません。

また理解できない以上、当然のことながら"イテレーション(反復)"も理想通りに進めることはできません。なぜなら、イテレーションの根本概念はPDCAにあるからです。

では、PDCAの本質的な『目的』はどこにあるのか?と言うと、第一に浮かんでくるのは

 変化の吸収

ではないでしょうか。

  1. まず最初に理想(ゴール)をイメージし、理想通りのゴールにたどり着くためのプロセスを計画する。

  2. 計画通りに実行しながら微調整を行い、最後に計画と現実の乖離した部分を分析し、計画からの変化部分を受け入れ、取り込み、次回以降の精度向上に役立てる。

たしかに、これがPDCAの最も重要な『目的』であることは疑いようもありません。

しかし、これがただの旅行や夏休みの計画といった一過性のものであればよかったのですが、常に類似の行動、活動を反復する通常の業務やシステム開発ではさらに深掘りして目的を見定めなければなりません。だからこそイテレーションという考え方が生まれたのです。

追加するべき目的は、以下の3つです。

①タイムボックスを小さく区切ることで、計画の精度を高める
②システム等、可視化できる成果物を使って、要求を確認する
③リスクの高いユースケースを早く実装して間違いのないことを確認することで、
 仕事全体のリスクを低減する

①は、1つのタイムボックスを小さくすることです。
タイムボックスとは、"時間をある程度の塊にまとめたもの"です。1年の開発プロジェクトをまとめて1年分計画するとどうしても精度が落ちます。ですから、工程単位や成果物単位といった小さい単位で、さらに詳細な計画に落とし込むのです。

小さくすればするほど、計画精度は向上します。

アジャイル開発手法のほとんどが、小さい単位の開発+イテレーションで進むことを前提とするのはそのためです。また、小さな単位にし、時間的制約を設けることで、

 ・短期間となるため集中力を高めやすい
 ・リズムを生み出しやすい

などの効果も期待できます。

PDCAは、その1サイクルだけで1つのタイムボックスが作れます。そのため、PDCAを念頭に置いた場合、どれだけタイムボックスを小さく区切ってサイクルさせることができるかが成功のカギを握ることになります。

PDCAと聞いて1つの業務に対し

こんな感じの大雑把なサイクルを1つ思い浮かべる程度のイメージしか持てないようでは、あまりにもPDCAに対する理解が浅すぎると言わざるを得ません。

これまでも何度か説明してきましたが、PDCAは複数のタイムボックス/サイクルを最適に組み合わせて運用することによってはじめて効果を出します。

また、「計画しない」「計画書(スケジュール表)を作らない」と言うのは、PDCAそのものを否定することになります。評価とは、あらかじめ定めておいた答えとの『比較』をすることです。比較元を用意しないで適切に評価できることは絶対にありません。結局、評価する人の好き嫌いや思い付き、その時の感情、でっちあげ、気分、etc.…属人的なその場限りのものとなってしまいます。そのような評価基準は再現性を伴いません。同じ人が評価したとしても、もう二度と全く同じ基準で評価されることはありません。

そのため、タイムボックスが明確にならず「いつまでに」「なにを」「どのような状態に」しなければならないのかが誰にもわからなくなってしまうため、計画破綻を起こしてしまう確率が大幅に上昇します。

②は、小さな単位で成果物を作成するため、目に見えるものを用いて発注者(ユーザーまたは依頼者)の確認が行えるメリットがあります。

たとえば、1つのドキュメントを作るとしても、全部作ってから確認するのではなく
1章、1ページが作成できた時点で確認する計画としてしまえば、最小単位のPDCAで不良や指摘部分が明確になり、変化を受け入れ、残りの作業精度が向上することになります。

目に見えない(何もでき上っていない)状態で、打合せ等を開いて意識確認をしたところで口頭で話した内容が互いにとってすべて共通のイメージとなっている可能性は低く、PDCAによって可視化した成果物を利用した確認の方がより高い品質となるのは自明の理です。

③は、リスクの高いものほど優先的にPDCAを実施することです。これによって残った作業のリスクを包括的に低減させることが可能になります。

たとえば、チーム作業の場合、最初に確認した1人目の時点でリスクが明らかになれば、それをチーム内で共有することでチーム全体のリスクを摘み取ることも可能になるわけです。


PDCAサイクルは元来、自らが主導権を持ってマネジメント/コントロールできる業務であれば、とても馴染みやすいプロセスモデルです。

しかし、個々人のレベルになると、どうしても計画そのものを立てることも、問題を解決させた後にふりかえることも億劫になってしまうためにこのサイクルの組織的な浸透を妨げています(そもそも仕事なのですから、面倒とか億劫という理由で実施しないこと自体、企業に対する背信行為とも取れるのですけど…)。

正しく理解し、「やってもやらなくてもいいもの」ではなく、「やることが当たり前のもの」になるよう組織的に改善することが望まれます(本質さえ誤っていなければ、具体的なやり方はどのような方法でもいいのです。もっともやりやすいやり方となるよう、自分なりにアレンジすればいいだけなのですから)。

いただいたサポートは、全額本noteへの執筆…記載活動、およびそのための情報収集活動に使わせていただきます。