仕事のただしいCHECKとは
PDCAに限ったことではなく、仕事においてCheckとは一言でいうと「振り返り」であり「比較評価」のことです。
誰だってミスや失敗は繰り返したくありません。
「何度同じ事を言わせるの!」「やっぱり君には無理かな」とは言われたくない。
一方で、うまく出来たことは繰り返したい。
「前回は良かったのに...」「まぐれだったの?」と言われるのはごめんです。
どうしてミスを繰り返してしまうのか。
うまく出来たことを繰り返すことができないのか。
その理由の多くが活動・行動に対する評価の仕方、振り返り方にあります。
そもそも思い起こしてみてください。
たとえば、
新人教育等の研修を受講した
外部セミナーでアンケートを求められた
仕事で勉強になると思って本を購入し、読んでみた
こうした中で、報告や報告書を求められたときに、本当に「報告」をしていましたか?
事実情報を正しく整理し、記述していましたか?
自分自身の思ったことをただつらつらと並べるだけの感想になっていませんでしたか?
初めに知っておいてほしいのは、過去の活動・行動・成果に対する評価や振り返りは「感想」とは別のものだということです。一緒にしないでください。
「面白かったなあ」
「苦労したけれど、自分なりに頑張ったと思う」
「次は自分で企画もやってみたい」
これらは全てただの感想です。報告ではありません。
感想は、ただの主観的な意見(opinion)であって仕事には一切価値がありません。アイデアを出し合う場であるならばまだしも、報告を求められる場で用いるものではありませんし、なにより「比較評価」や「振り返り」の中で個人的な意見にどれほどの価値があるというのでしょう。
仕事における"比較評価"・"振り返り"とは、
「終えた仕事(または途中まで進めた仕事)の出来映え・やり方を
あらかじめ定めた目標や基準と比較して、その良し悪しを明らかにすること」
です。
そのためには事実(fact)以外の情報は視界を濁らせるだけです。
これが仕事の大小を問わず機械的に行われないといけません。
事実に対し、基準と照らし合わせてそのギャップを比較するわけですから、個人的な意見や感情など入り込む余地はありませんし、あった時点でそれはもう評価や振り返りとは呼べません。
そして小さな仕事の振り返りがきちんとできない人は、大きな仕事の振り返りもできません。
教育等についても同様です。
学んだ内容に対し、あらためて自身の直近の仕事ぶりを振り返ってみて、出来ややり方の良し悪しを評価しなければ教育・育成等設けた意味がまったくありません。
また、自分にとって"都合の悪い事を振り返らない人"は次もまた同じ失敗を繰り返します。これは絶対です。
振り返らないということは、良し悪しを把握できないということです。
善し悪しが把握できないということは、問題を自覚できないということです。
そして、問題を自覚できなければ、当然ながら原因の特定も改善もできないということです。
であれば、次回も同じことを行い、同じように問題を起こし、同じように都合の悪い状態となるのは自明の理です。
振り返らない人というのは、言い換えるなら
「次もまた同じことをしてやるぞ」
と宣言していることにほかなりません。
そのことを本人が自覚しているしていないに関わらず、です。
しっかりとした振り返りは次の仕事に必ず良い影響を与えます。
ただし、当然ながら楽な作業ではありません。
野球やサッカーなどのプロスポーツを思い浮かべてください。
勝っても負けても試合後に監督インタビューがありますよね。
振り返りとは、頭の中で自身がインタビュアーとなって質問事項を作り出し、さらにそれに答える監督にもなって反省し、次からどうするのかを答えるといった一人二役をこなすのに似ています。
インタビュアーの質問例(1)
「あのシーンでの審判の判定は、どう思われましたか?」
「なぜ抗議しなかったのでしょうか?」
振り返るべき点はそこだけではありません。
振り返りに「偏り」があると今後に活かせる大切なことを見落としてしまいます。
インタビュアーの質問例(2)
「これは勝ちに等しい引き分けだと考えてよろしいですか?」
「テストだから勝敗は度外視してもいいということですか?」
サッカーなどでは、ただ勝つだけでは国民が納得しないという国もあるそうです。
練習試合なども含めると、試合の勝敗だけでは成果の良し悪しを決められないケースはもっとあるでしょう。あなたの仕事はいかがでしょうか。何を基準に良し悪しを判断しますか?
インタビュアーの質問例(3)
「他に改善点はありませんか」
「収穫がそれだけですと、本番に向けて不安が残りますが...」
振り返りによって得られる発見や気づきが多いほど、次回以降の仕事の品質が高まります。
しかし、同じ仕事であっても得られる気づきが多い人と少ない人がいます。どうしてでしょう。気づきを増やすためにあなたが出来ることは何でしょうか。
インタビュアーの質問例(4)
「前の試合でも同じことが課題になっていましたよね」
「『詰めが甘かった』とは? 具体的には?」
せっかく気づいたことも、あやふやなままにしておくとすぐに忘れてしまいます。
どうすれば、具体的な気づきを忘れずに自覚することができるでしょうか。
無我夢中だったと言い訳にすることはできません。
そのプロセスや結果を次にどのように活かすのか振り返ることができなければ、それは決して実力とは呼べず、次回以降の活動に信頼や期待、安心をすることができません。
「もっとさあ、他に気づいたことは無かったの?」
「何も考えないで仕事をしていたわけじゃないでしょ?」
「これじゃあ何のために君にこの仕事を任せたのかわからないよ」
「日頃から問題意識を高く持って、自分で色々な事に気づかないと成長しないよ?」
ではどうすれば"問題意識を高く持った"ことになるのでしょうか。それがわからなければ気づきを増やすことなどできません。
気づきの量とゴールイメージの関係
課題/問題意識の「課題」や「問題」とは、現状と目標のギャップのことです。
目標が無ければ現状と比較することができませんから、当然問題にも気づくことができません。
勘違いしないでください。
「目標は常に高く持て」という意味ではありません。
目標とはゴールイメージのことです。
先ほども仕事における"比較評価"・"振り返り"とは、
だといいましたが、まさにこのことを言っているのです。
仕事の大きさや難易度に関わらず、必ず行動・活動するまえにゴールイメージを明確にしておかなければギャップに「気づく」ことはできません。気づくための比較元となる「ゴール」がないのですから、どんなに行動・活動を行い、比較先となる成果をあげても比較できないのは当然です。
たとえば、お客様からの電話相談を毎日何件も受け付ける「サポートセンター」の相談スタッフを例に挙げましょう。
あるスタッフは"1分1秒でも早くトラブルを解決すること"が良い仕事だと思っています。仕事の中で気づいた事を尋ねると
「もっと早く故障箇所を探り当てるために質問の引き出しを増やさないといけない」
「初めに○○を伝えておくと、スムーズに解決できることがわかった」
などと答えました。
別のスタッフは"お客様に共感を示し、ストレスを和らげること"が良い仕事だと思っています。仕事の中で気づいた事を尋ねると
「ただ申し訳ないと言うだけでは相手の怒りはおさまらない」
「きっと○○にお困りなのでは、という言い方をすると、緊張感が...」
なとと答えます。
どちらが正しいかではありません。
「良い仕事」の定義が違えば、気づくことも違うということです。
もしも、さらに別のスタッフが"早く解決する"と"ストレスを和らげる"の両方の実現が自分の仕事のゴールイメージだと思っていたらどうでしょうか。おそらく、得られる気づきの量はもっと増えるでしょう。それだけでなく「早期解決とストレス対処を両立させることの難しさ」のような、新たな気づきも生み出すことができるでしょう。
今みなさんが行っている仕事のゴールイメージは何ですか。
B2Bのソフトウェア開発の場合、もし不明確であればもう一度発注者とすり合わせを行うしかありません。ゴールイメージは発注者が決めるものだからです。開発する側が勝手に「いい仕事とはこういうものだ」と決めつけるものではありません。
またゴールイメージに「松竹梅」のレベル感を持たせると、さらに気づきの量を増やすことができるでしょう。「現状」と「目標」だけでなく「最低限の目標」や「さらに上の目標」とのギャップも自覚することができるからです。
明確なゴールイメージを持って仕事をしていれば、行っている途中でいろいろな事に気づきます。
ただし、それを全て記憶しておくのは大変です。ふっ、と湧き上がった気づきは、その重要性に関わらずあっさりと忘れてしまうものです。
「手順に問題があったのだけど、...あれ、先にどっちのデータから処理したか、
忘れてしまったよ」
「先週の商談で、お客様が意見を変えてくれて良かったよ。
言い方を変えて商品を説明してみるものだな。...って、あれ? 何て言ったっけ?」
このようなことは頻繁に起こります。
せっかく手にした「気づき」が、指のすき間からこぼれ落ちないようにするには、自分の記憶力に頼らないのが一番です。気づいたその時すぐにどこかに書き取り、記録を残すクセをつけてください。
新人に対してよく「メモを取れ」なんて上司や先輩を25年以上前から現在に至るまで畳みかけてきましたが、案がメモも取らずに「アレ、なんだっけ」と平然と言ってのける上司や先輩社員というのは多いものです。
そういう人たちは、おそらくたいしてまともな振り返りはできていません。
振り返りが常態化している人であれば、一度「アレ、なんだっけ」を行ってしまった時点で振り返りを行い、二度と同じことが起きないよう日頃から自らに改善を加え、メモを取ることが習慣化されているであろうからです。
それができていないということは、(少なくとも現段階において)口ばかり達者なだけで自らが実現できる器ではないということを表しているからです。
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