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「組織を開発する」という考え方

世の中には様々な「開発」というものがあります。

多くの場合は製造業などでいう「量産」と対になる開発という考え方が一般的なのではないかと思います。IT企業では量産がないため、一つひとつが「開発」となっているわけですよね。

ですが、そのような製品やサービスを作り上げるだけが開発ではありません。

業界にかかわらず、経営者や管理職が開発すべきものがあります。それが

『組織』

です。

その組織、職場において業務に従事している従業員の能力を高め、労働における成果をできる限り向上させると、組織全体の業績向上につながり、利益の向上をもたらします。

このような労働成果は、経営者や管理職によるものではなく、実際に業務に従事してくれている従業員一人ひとりの労働能力と労側意欲によって得られるものであり、人的資源管理では従業員のやる気(意欲)と能力を向上させることにより、成果をさらに高めていくことができる…とMBAなどでは解説されています。

1960年代に行動科学に基づいた組織変革の方法として注目されはじめた組織開発(Organization Development)は、組織の効果性と健全性を高めるために、組織全体を計画的に変革させていくことをいいます。

組織開発の変革のプロセスとしては以下のような3つのステップで展開されています。

解凍(Unfreezing)

変革へのモチベーションを作り出す段階です。つまり現状の状態を認識し、新しい何か変革を起こす必要性を認識するという過程です。

移行・切替(Moving)

望ましい状態に向けてなんらかの計画的な行動を起こすという実践的な段階。

再凍結(Refreezing)

新しい状態や行動が定着するように工程や仕組み、その他を確立していく段階。

変革を定着化させていく段階では、意識や行動をいかに変えていくかが極めて重要なプ
ロセスとなります。

つまり組織開発とは、組織全体のそれぞれの能力や機能が最大限に発揮されるよう、組織文化や風土などに対して展開される、トップダウンアプローチを中心とした組織的規模の計画的な変革過程であるといえます。

たとえば、これまでスーツ等の着用義務があった企業が、ドレスコードのルールを変えて私服可とした…といったニュースが2018~2019年ごろに相次いでありましたよね。

お堅いイメージの銀行系ですらそういった流れに乗るようになったことは記憶に新しいと思いますが、こうした組織風土の改善もトップが動かなければ絶対に実現できません。

仮に提案等がボトムアップで行われたものであったとしても、トップが重い腰を上げなければ組織開発は決して進まないのです。さらにいえば、ボトムアップで提案されなければいつまでたってもトップは自ら考えられないし決められないというのであれば、それはトップとして存在する意義は全くないといえるのではないでしょうか。

重要なことは、先述にあるように

その組織、職場において業務に従事している従業員の能力を高め、労働における成果をできる限り向上させると、組織全体の業績向上につながり、利益の向上をもたらします。

現在の組織、職場において労働における個々の成果が最大化されているか、また最大化される組織、職場環境が整っているかという点です。

物理的環境を整えるにしてもそれはやはりトップの裁量が必要になるケースが多いでしょう。そのほとんどが設備投資や企業のルール…ひいては規程等にまで関係してくるからです。

設備投資といっても建物や機材の調達だけではありません。デスクワークなどでは机、椅子、PCなどもそうでしょうし、サーバーやネット環境、その運用ルールの煩雑さなども影響を受けることは多々あります。

たとえば、コロナ禍によって多くの人がリモートワークを余儀なくされてしまいましたが、にもかかわらず各種社内手続きのルールが「紙媒体による提出」を義務付けられていたりするなど、規程やルールの改善が推進されていない…なんてケースは往々にして存在します。

当然、組織や職場の業務効率を著しく低下させることは言うまでもありません。利益率の低下にも影響を与えることでしょう。

また人的環境を整えるにしてもやはりトップの裁量が必要になります。一定以上の人事権を行使できる人間もまた限られているからです。

各管理職に人事権を分配しているとしても、その管理職を決めるのはトップの仕事であり、責任です。その各管理職が正しく人事権を行使できていないようでは、トップの人事に問題があると言わざるを得ません。

ビジネスにおける人のストレスは、その多くが「人間関係」にあるといいます。

もちろんそのすべてをトップがどうこう解決するのは不可能でしょう。しかし、その何割かは人事が根本的な原因にあるものです。その証拠に上司や先輩が下のものを圧殺している割合が非常に高いということが挙げられます。

かといって「人」にどうにかしろとコントロールすることを促しても、改善にはいたりません。「人」をコントロールしようとする姿勢がマネジメントとしてあるべき姿でないことは先日ご説明したとおりです。

マネジメントは「仕組み」に対して行うべきものです。そしてマネジメントとは総括すると『経営』を意味します。

であれば、経営を担うトップがすべきことは上司や先輩など一部の「人」にどうにかしろと発破をかけるのではなく、仕組みとしてそういった上司や先輩がストレス源にならなくてよい仕組みを構築してあげることが本当の意味での組織開発であり、経営なのではないでしょうか。

今、巷では人出不足が騒がれて久しく、零細-中小企業では人材がいないという理由だけで廃業に追い込まれるケースも出てきています。

そのような中で「人間関係」がストレス源となって離職を促したり、精神疾患者を増やして休職を増加させるような姿勢は組織開発の観点からも推奨されることではありません。

ましては「俺の若いころは」なんて過去の武勇伝を持ち出しても、何も問題は解決しません。むしろストレス源を増長させるという意味で悪化するだけです。

毎月、なんとなく売上や利益の数字を眺めて、順調でない組織をやり玉に挙げてあーでもないこーでもないと叱咤するだけでは経営とは呼べません。

 優秀な人材が、その優秀な能力を最大限発揮できるように。
 成長性の期待される人材が、その潜在能力を開花させて優秀な人材となれるように。
 そうでない人材が、それでも彼らの持ちうるパフォーマンスを最大化できるように。

そのために必要な取り組みに注力することで、副次的に売上や利益に貢献できるような組織づくりをすることが今後本当の意味で求められているのではないでしょうか。

 『経営者・管理職は従業員に仕組みで貢献し、
  従業員は成果で企業に貢献する』

理想論なのかもしれませんが、今それができなければ今後生き残っていくことは難しくなっていくのはないかと危惧しています。危惧したくなるような企業が増えている気がします。

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