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残業しない仕事の進め方を身につける

2015年、ホワイトカラーエグゼンプション(ホワイトカラー労働時間規制適用免除制度、通称「残業代ゼロ制度」)が閣議決定されたことは記憶に新しいと思います。世知辛い世の中だと捉える向きもあると思いますが、これを機に労働のあり方を見つめなおすことは悪くありません。

私自身も、昔は残業にそれほど抵抗を持っていませんでした。

今でも、残業そのものには抵抗がありません。
おそらくは習慣として染みついてしまったからでしょうが、そこで思考停止するわけにはいきません。残業するしないではなく、自らの成長のために「時間対効果」や「費用対効果」を向上させずして何がプロか、と思うようになったからです。

というかトラブルプロジェクトなどに多くかかわっていると時間なんていくらあっても足りません。そんななかで通常のパフォーマンスしか出せないままでは、解決できるものもできなくなってしまいます。

そう考えるようになって以来、日頃から「残業しないで与えられた過剰業務をすべてこなす」だけの生産性向上や効率化を徹底して行ってきました。

先日、現在の企業内でもハイパフォーマーとして認められたり、ベストパフォーマーとしてノミネートされたりしましたが、実際「個人業務の生産性」のみに限って言えば、私の目の届く範囲で私以上に優れていた人…というのを、これまで20年近くのうちたった1人しか見たことがありません。

その人は、私が日あたりプログラム3000行ほどの生産性だった当時に、10000行ほど作成してしまう猛者でした。ドキュメント作成の生産性では負けなかったのですが、スクラッチのプログラミングで大幅に差をつけられたのは後にも先にもその方だけでした。


また2021年度の日本の労働生産性はOECD加盟38ヵ国中28位と年々順位を落としつつあり、決して高い水準とは言えないことからもそもそも論的に働き方の改善が必要であると言えます。

生産性向上は多くの企業、組織、部門、担当者が抱えている課題のひとつですが、案外提示後に予定を押し付けてきたり、現場サイドでは思うように進ませてくれない人が多く、その影響を受けている人もまだまだ少なくないのではないでしょうか。

こうした活動は他人をあまりアテにできません。
もちろん企業にも期待はできません。

そこで、あらためて個人でできる「残業しない仕事の進め方」について考えてみましょう。

強い意志が残業を減らす

いつも朝早くから夜遅くまで忙しく働いていても、会社が指定するノー残業デーには早くあがって習い事や飲み会に出かける人は少なくありません。また出張のフライト時刻が決まっている場合や決められた時刻までに保育園に子どもを迎えに行かなければならないケースではその時刻に遅れたりはしません。

言うまでもありませんが、タイムリミットが決まっていると人は限られた時間的リソースの範囲内で「スピード」を基軸として働くようにできています。

しかし逆にその時間的制約がなければ、プロセスやアウトプットの質を重視すると同時に無意識のうちに自分にとって快適なレベルにスピードを調整して仕事を進めてしまうのです。

日本人は目先のものであっても失敗することが恥ずかしいと考えてしまうため、他国と比べてもクオリティにこだわる傾向が強いと言われています。そのためか世界的に見ても日本人の1つの仕事に対する生産性は非常に低いことが明らかになっています。

しかし、顧客満足やワークライフバランスの観点から考えるとスピーディーに仕事を完成させることも大切です。その意識を強く持てばデッドラインがなくても仕事を早く片付けられるはずですが、そのためには『仕事のムリ・ムダ・ムラ』を徹底的に解消していくことが必要になります。ビジネスにおいては自分の感情を優先させるのではなく、論理的に効率化を図っていく必要があるのです。

仕事の量を減らす

日々の仕事には無数のムダが溢れています。

たとえば定例の会議

議論するトピックやその議論に必要な情報が乏しければそれは時間のムダです。しかし、「定例として決めたことだから」と議論に必要な情報もなく、共有すべき情報もないのに何故か会議を開催します。そして議題がなければ雑談のようなダラダラとした話が続くことになります。

また、一回の会議のためだけに手の込んだ資料を作り込むこともムダです。

多くの人が薄々気づきながらもその仕事が習慣化していると、そのムダを思い切って指摘することは困難となります。特にこうした改善はボトムアップでは機能しません。上司などから率先して改善しない限り、いつまで経っても企業貢献への道は閉ざされたままです。

しかし、ちょっとしたムダであっても年単位、あるいはそこに関わる人単位の積み重ねを見ると相当に大きな負担となっていることがわかります。当然、看過すべきではありません。

そうしたムダを削減するためには次の2点を意識する必要があります。

目的の明確化と最適な作業デザイン

たとえば定例会議は、その会議を開催すること自体が目的化してしまい、本来の目的が曖昧であることが意外に多いのが事実です。

もし、会議の目的が意思決定であればそれに必要なメンバーだけを招集すればよいだけですし、単なる情報のシェアであれば電子媒体などでも代替できます。これまでの慣習に捉われず、目的と時間的制約に応じて仕事をデザインすることでムダを省けるようになります。

逆にそういったことに真剣に取り組めない人は、仮に上司であっても会議体の進め方に口を出すべきではありません。

作業の単純化

仕事を丁寧に進めようと考えるうちに、業務プロセスの複雑化やオーバークオリティになる事例も日本ではよく見かけられます。また、似たような作業を重複して行っているケースも散見されます。

こうしたケースは、その業務を発生させている人の自己満足である可能性が高いと考えていいでしょう。まったくの無駄ではないかもしれませんが、明らかに費用対効果や時間対効果は低いはずです。費やすリソース量に比して効果が薄いのであれば、それは効果がそのものがゼロ出なかったとしてもムダでしかありません。

個々の作業について

 「本当に不可欠なものか」
 「簡略化できないか」

という視点から改めて問い直し、余分なものを排除することで仕事の総量を減らすことができます。

仕事のスピードを上げる

調子良く仕事をしている時に、その仕事とは関係のない電話がかかってきて中断を余儀なくされるということはよくあります。また、モノゴトを考えている時に気づけば堂々巡りを繰り返しているという経験は誰もが持っていることでしょう。

こうした中断から元の状態に復帰するには「数分から数十分を要する」とも言われますが、これは紛れもなく作業効率の低下と言えます。残業をなくすためには業務効率を上げていく必要がありますが、そのためには次の2つの視点が欠かせません。

時間資源のマネジメント

マルチタスクプロセスを称賛する声がありますが、本来は1つの業務に集中するための連続した時間を確保する方が効率がよいことは否定する余地がありません。

私も何社と転職してきましたが、どの企業に行ってもほかの人には与えられない量や種類の業務を押し付けられ、1人でマルチタスクをしてばかりでした。そのような中で脳内のスイッチをコロコロと切り替えるのも大変ですし、そのたびにパフォーマンスが下がるのは思った以上にしんどいものです。

本来は1人に大量の仕事を押し付ける企業文化そのものに問題があるのですが、それを言ってもどうにもなりませんから、これを何とかパフォーマンスを下げずに実現する方法を模索するしかありません(でなければ転職するしかありませんしね)。

メールソフトは常時立ち上げておかずにあらかじめ決めた時間帯にのみにチェックするとか、また会議はその目的ごとに制限時間を決めておくべき(意思決定なら15分、ディスカッションなら30分が限度)だとか、またバイオリズムに合わせて企画系の仕事は集中力の高い午前中にこなすようにすることも有効と言えるでしょう。

関連業務のブロック化

タスクを"デッドラインの近い順(緊急度の高い順)"にこなしていく人が多いと思います。

こうしたマトリクスはよく見かけますよね。

そして一番問題となるのは第2領域と第3領域のどちらを優先すべきかという点です。緊急度が高くても重要でないものが優先されるべきか、重要度は高いけれども緊急ではないものが優先されるべきかで誤った選択をしがちな人が多いため、結果として仕事のスピードを著しく阻害する要因となります。

本来はこのような単純なマトリクスのみで語るべきものではなく、繋がりのある業務をひとまとめにして対応することで思考の流れが連続的になり、限られたリソースの中でより効率よく多くの業務を消化することができるようになります。そうして振り出しに戻る回数を減らすことで一日の業務効率は大幅に向上するのです。


キャパシティを高める

しかし、休む間もなく頑張って働いても仕事に追われてしまうことがあります。
その要因は以下のいずれかであることが多々見受けられます。

 ・仕事量に対してキャパシティが不足している
 ・守備範囲外の仕事を引き受けている

前者の場合、多くの組織では増員することで解決を図ることが多いのですが、パフォーマンスの低い要員…いわゆる有象無象をかき集めたところで事態がよくなることは多くありません。特に専門性の高い業務であればなおさらです。むしろ既存要員に負担をかけることで業務そのものが破綻することも考えられます。

こうしたケースではよほど優秀な上司でもいない限り、組織をアテにできません。

本来は属人的にさせるべきでなかった業務を1人に任せ続けたがためにそうした事態が発生してしまっているので、最初から組織や上司はそういうものだと諦め、自らの能力を向上させることに集中してみるのもいいでしょう。

オーバーフロー状態の中で研鑽の時間を確保することは簡単ではありませんが、一時的に負荷が増大しても長期的に見ると自身の仕事量に対するキャパシティの拡大が対応力の強化に繋がるため、能力開発には積極的に時間を割くべきです。

そうして能力を上げても、企業はおんぶにだっこで何一つ改善しようとしないのであれば早々に転職することをオススメします。少なくとも自身の能力を向上させているわけですし、他社でもっと高い評価を得やすくもなっているでしょうし、もっと有能な上司のもとで適切なビジネスに取り組んだほうが相互に幸せになれます。

一方、後者が原因であることも意外と少なくありません。

突発事象や担当者間のパワーバランスなどによって起こる問題ですが、衝突を恐れずに適正な配分に戻すことで組織全体の負荷バランスが是正され、キャパシティが向上します。

もちろん、こういった対策は、本来組織の長(管理職やリーダー)が仕事を割り振る時点で管理・調整すべきものですが、そこまで優れた上司にいつもいつも巡り合わせるわけではないことを考えると、自分自身で対応できるよう常日頃から能力開発する取り組みは続けておきたいものです。

ひいてはそれこそが次代のリーダー、または上司となっていくために必要なスキルなのですから「なりたい/なりたくない」はさておき得ておいて損はありません。ムリな状態で仕事を続けることはモチベーションの低下を招くだけでなく、深刻な問題を誘発しやすいことからも、早期にムリを解消していくことはとても重要です。

たとえば私も人の上に立ちたいとはいまだに思っていませんが、かといって無能な上司にいいようにこき使われたいとも思っていません。無能な上司の下に就いて苦労するくらいなら、周囲が苦労する様を見るくらいなら

 「だったら自分でコントロールしたほうがまだマシ」

と思っているからリーダーなり、管理職なりを引き受けているにすぎません。私より優れたリーダーや管理職がいればできることならその人にすべて任せてしまいたいと思っています。


いますぐできる、新人でもできる残業を削減する方法

「先んずれば人を制す」ということわざがありますが、これはビジネスにも当てはまります。常に先を見通してスケジュールを立てることで、仕事をかなり効率的に進めることができるようになるということです。また「急がば回れ」ということわざが示す通り、多少遠回りに思えても適切なプロセスを踏むことは、最終的に早くゴールに着くという意味においてとても重要です。

先手を打ってスケジューリングする

同じ種類の仕事をまとめて一気に行うというのは効率化の鉄則です。

たとえば、会議とデスクワークが交互に入っているスケジュールやバラバラと予定された出張は、仕事の連続性が途切れるだけでなく移動による時間のロスも生みます。こうした事態を防ぐには、相手のスケジュールがまだフレキシブルな2~3週間先の日程に自ら会議や出張の予定を投げかけて能動的に調整を図ることが有効です。

スケジュール変更は2週間単位で行う

仕事の遅延や緊急案件のためにスケジュールの修正を余儀なくされることは意外と少なくありません。こうした時、通常は次の仕事のスピードを上げて対応しますがそのスピードアップが仕事の質の致命的な低下を招いて、結果的にその修正に余計な時間を要することがあります。

この負のスパイラルに陥らないためには、1~2週間のスパンでスケジュールを俯瞰し、二次的影響の出にくい単純作業などの効率化によって遅れを挽回することが大切となります。

企画業務は孤独な時間に行う

クリエイティビティを要求される仕事を効率的に行うためには、集中力を高められる環境を確保することが大切です。たとえば、人より1時間早く出社して静かなオフィスを独り占めしたり、逆に出社を1時間遅らせて自宅で仕事を済ませたりすると良いでしょう。

もし、既にオフィスにいる場合は時間を決めて会議室に一人で籠るといった方法が効果的です。

また、脳内でアイデア抽出をするのであれば、通勤時間や入浴中、就寝前などの邪魔の入りにくいスキマ時間を有効に活用するといいでしょう。ただ考えるだけの時間を業務中に充てると何の生産活動もできないまま時間だけが過ぎていく…ということになりかねません。

各業務の対応時間を決める

新着メールのポップアップやチャットの通知ほど業務効率を下げるものはありません。仕事の連続性を阻害されると、再び集中するまでに実はかなりの時間を要します。

そのロスを防ぐためには、メールやチャットに対応する時間帯を決めてそれ以外の時間はメールを見ないという割り切りが必要になってきます。事実、業務効率の高い人はランチ前や夕方、帰宅前などの集中力が低下しやすい時間帯に集中的にチェックしていることが多いと言うデータもあります。

アウトプットイメージを先にすり合わせる

曖昧な解釈で仕事を始めると、最終的な成果物が関係者の期待や要望に沿っておらず、後々修正の必要に迫られることになりやすいものです。したがって、仕事を始める前には必ずアウトプットの様式や要件を細部にわたって詰めておくことが重要になってきます。

私は打ち合わせ中に依頼された業務であればホワイトボードなどにイメージを描いて、また進め方の詳細まで説明し、相手に合意をもらってから作業を開始します。そうした機会が得られない場合は「最初に1~2ページほど作成しますので、イメージとあっているか確認してもらっていいですか?」とお伺いを立てます。手戻りの発生要因を最小限とすることでムダな時間浪費を抑えるようにしています。

また、一度決めた仕様であっても状況の変化に伴って関係者のリクエストが変わることもあるので、作業の中間地点で再度アウトプットイメージを細かくすり合わせるべきでしょう。

いきなり仕事に取り掛からない

たとえばビジネス文書を書くとき、いきなり作業し始めてはいけません。

まずは、用紙やホワイトボード、wordでもexcelでもかまいませんが、そこにその文章全体で何をどのように伝えたいかという設計図を描くことが重要です。この時、特に「What」、「Why」、「How」の3点について構造的に整理するとよいでしょう。

ここでロジック破綻しないように精緻に設計図を仕上げてから文章を書き始めると、書いている途中でストーリーがブレることがありません。なお、この方法は企画書などを作成する際にも当てはまります。

拡大性に注目する

一般的に、"緊急性”"重要性”といった観点で仕事の優先順位を決めがちですが、実は長期視点で仕事を効率化するためには"拡大性”に着目する必要性を求められることがあります。

具体的には、放置すると問題が大きくなっていく可能性の高い案件を先に処理するということですが、たとえば職場の些細なトラブルへの対応などが当てはまります。たとえ小さな問題であっても、飛び火して拡大しそうな案件であれば先に解決しておく方が後のムダな作業の発生を未然に防げるという観点から効率的な仕事術と言えるでしょう。

積極的にコピペを多用する

日本のビジネスパーソンは自前主義の傾向が強いですが、優れた先例は積極的に活用していきたいものです。

たとえば、メール文書やビジネスレターのひな形をいくつか持っておくだけでも1文書作成あたり数分単位の時間はセーブできます。さらに、企画書や提案書も基本フレームがあればコンテンツを差し替えるだけで量産することが可能になるため、自分の仕事にあったフォームを3~4種類はストックしておきたいところです。

但し、ライセンスや著作権などに気を付け、濫用しないようにはしておかないと、簡単に法に触れることになるので注意が必要です。

PC周りの道具をカスタマイズする

会社から与えられたビジネスツールを利用するのが会社員の基本ではありますが、セキュリティやコンプライアンスの問題がない範囲において自分流の道具を使うことを推奨します。たとえばキーボードやマウスを替えるだけでも、タイピングスピードの向上や疲労軽減による作業効率の向上が期待できます。

また、PCのユーザー辞書登録の活用も積極的に活用したいところです。
1変換あたりでは秒単位の削減だが、積もり積もれば大きな削減効果となります。

(3) ITツールを使いこなす
優れたITツールの導入はビジネス効率の向上に大きく貢献するので、可能な範囲で投資をするべきです。たったそれだけのことで1日あたり数十分~数時間かける人数分の業務効率が向上し、年間何百万、何千万という利益改善につながりかねないのですから。

たとえば、

 ・会社のメールとスマホの連動
 ・Web会議
 ・Web日報共有
 ・Webスケジュール管理
 ・クラウド型プロジェクト管理

など、個人の業務やチームでの情報共有に便利なツールは枚挙に暇がありません。

昨今はリモートワークも常態化してきました。これにより通勤時間が著しく減少したことで個々人の労働者の肉体的・精神的負担が軽減されてパフォーマンスの出しやすい状態になっています。だからこそリモートワークだからこそ活用できるITツールにはもっと目を光らせるべきです。

それぞれの組織にマッチしたたサービスの導入ができれば、業務効率は飛躍的に向上します。

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