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付加価値を決める要素は「希少性」と「必要性」

「働く」ということは社会に付加価値をもたらすことであり、「組織で働く」ということは組織の生み出す付加価値に貢献することです。社会にとって、あるいは組織にとって付加価値のある人材であることが仕事につながっていくのです。組織とは必ずしも会社のことを指すものではありません。プロジェクトチームの一員としても同じです。

たとえ何らかの高い能力やスキルがあったとしてもそれを活かせなければ付加価値を生むことはできませんし、付加価値を生まなければ仕事で貢献することもできません。なぜなら社会は能力やスキルではなく、それによって生み出される付加価値に対して対価を支払っているからです。

「やればできる」は「やらなければ一生できない」の裏返しでしかなく、態度のあり方1つで貢献できなくなるわけです。

では、このような付加価値はどのように決まるのでしょうか、
また付加価値を生む人材にはどうしたらなれるのでしょうか。

付加価値は、生み出すコトやモノの希少性と必要性によって定まります。

たとえばタイプライターが出現し、仕事の書類がタイプライターで書かれるようになった戦後しばらくの間はタイプライターを使いこなす人が少なかったためタイピストは希少でもあり必要性もありました。

そのため彼らの仕事は付加価値が高くなり、厚遇でどの会社でも迎えられました。

しかし、ワープロやパソコンの普及につれタイプライターを使うことも減り、また簡単にワープロやパソコンで文書を作成できるようになると、タイピストの希少性も必要性も減っていきます。

つまりは、彼らの社会や組織における付加価値が小さくなっていったのです。

ご存知の通り、付加価値を定める希少性と必要性はその能力だけではなく、外部環境によって変化していきます。サッカー選手はJリーグができるまではそれほど高額の給与をもらうことはありませんでしたが、Jリーグができると優秀な選手は高額で迎えられることになりました。

Jリーグという存在が彼らの付加価値を大きく変えたわけです。

そう考えると、若い方の中には高い付加価値生むような希少性、必要性のある能力やスキルを「持っていない」あるいは「身につけるのは難しい」と思うかもしれません。

しかし外部環境をもう少し狭い場で考えること、そして組み合わせで考えることで自分の付加価値について現実的に考えることができるはずです。

たとえば、日本語とベトナム語を話せるというスキルは、社会の中では必要性がそれほど高くありません。しかしベトナムに進出しようと考えている企業、あるいはベトナムと貿易をしている企業にとってはとても必要性が高いスキルです。

あるいはもっと狭い範囲で考えれば、女性しかいない職場において力仕事が求められるのであれば、体力がある男性のスキルの希少性は高いかもしれません。

つまり、希少性や必要性はその場における相対的な関係の中で決まるのです。

ひとことで言えば、

 需要と供給のバランスが崩れたところ

にこそ、希少性が増すと言っても過言ではありません。


また、その希少性や必要性は組み合わせによっても変わります。

たとえば、プログラミング技術に関しては突出して優れているわけではなくても、中国語もわかり多少なりともプログラミングもできるとなれば自分の希少性や必要性が高まるかもしれません。

これはキャリアを積んでいってからも同様です。

営業一筋でいくのも良いですが、複数の職能で仕事をしてきたからこそ技術がわかっている営業といったような特徴的なスキルの組み合わせが生まれることがあります。

特定のスキルや能力において秀でることで自分の生み出せる付加価値を高めるのもひとつのあり方ですが、複数のスキルを束のように持つことで自分の生み出せる付加価値を高めることもひとつです。スキルの組合せは足し算ではなく掛け算で構成されており、その組み合わせによって価値が出る市場が山のようにあるからです。

そしてそれら自分のスキルや能力によって、付加価値の高い貢献ができる場はどこなのかを考えること、あるいは反対に今この場においては自分が持っているスキルを生かしてこのような価値を生み出すことができる…そう考えることこそ自分ができることを考えるというスタンスにつながるのです。


もちろん、組織に入ったばかりではどこを取っても貢献できないと無力感を感じるかもしれません。故に雑用ばかりしかできないと考えてしまうかもしれません。

しかしたとえば、入りたてのメンバーにあって他のメンバーにないことの一つは職場での歴の短さや若さです。

それは学ぶ時間や学ぶことがたくさんあることでもありますし、さまざまなことを学ぶ素地があるということもできます。素直さ真摯ささえ持っていれば、吸収効率はすでに分かったつもりになってしまった年輩の方々のそれよりもはるかに高くなることでしょう。

そう考えれば今の自分にできることは「一生懸命学び成長することだ」となるかもしれません。

また内部者では気づきにくいことを指摘することも可能かもしれません。それも外部からの客観性を持った目線があるからできることといえます。

とはいえ付加価値は自らの能力やスキルによって生み出されるものですから、高い付加価値を生み出し貢献するためにはやはり能力やスキルを身につけることは必要不可欠です。

いろいろなことを吸収しよう、学ぼうと意欲がある人が評価されるのは自らに能力やスキルが足りないことを自覚し、価値ある存在になろうという姿勢がそこから見えるからでもあります。

若いうちは持っている能力やスキルで高い付加価値を生み出すことができないかもしれません。

しかし今すぐでなくとも、いずれ付加価値を生む人材になるためには学びが必要になっていきます。残念ながら、社会の動きが速い現代では大学時代までに学んだことや能力では長い仕事生活において付加価値を生み続けていくことは難しいのが現実です。

学ぶことも含め「自分の生み出せる付加価値を大きくするためにはどうすれば良いか」を考えていくことが、自分のやりたいことは何かを考えるとともに、仕事を考える上では大事なことだと知ってください。

これまでも20年以上実施してきた新人研修のなかで何度か説明したことがあるのですが、私は基本的に"器用貧乏"です。

ある1つの分野に絞った場合、

「世の中で見れば私の持つノウハウやスキルで、
 何か他を圧倒するほど秀でたものがあるか?」

と言うと何1つありません。ある企業の中でという限定の仕方をすれば何かしら2つや3つくらいは1番といえるものがありますし、なくても作るようにしていますが、市場や世間全体から見ればよくて中の上といったところだと思います。

設計だけ、プログラミングだけ、テストだけ、交渉だけ、ドキュメンテーションだけ…と絞ってしまえば、私よりも優れている人は世の中という大きな括りでなくても、会社内でもたくさんいることでしょう。

しかし、私は器用貧乏です。

ですから、

 多くの分野のスキルを、平均値以上の実用レベルに修得する

という点には長けているつもりです。

自己分析でいうならば、これは私の性格である「好奇心旺盛」が原因なのでしょう。

好奇心旺盛は、よく言えば

  • さまざまなことに挑戦する

  • 行動力がある

  • 向上心がある

と言ったポジティブな見方ができます。実際、採用活動などでの面接ではそういうアピールをされた方もいるでしょう。しかし、ものごとには必ずメリットの他にデメリットもあります。

別の側面から見れば、

  • 飽き性

  • 集中力が持続しない

  • 強みがない

と言った面があるのも事実です。

結果として「広く・浅く」となってしまうのが私の傾向であり、難点です。

それでも、口先だけの"浅く"使い物にならないスキルや知識にしたままだと、その経験や苦労に費やした時間がすべて無意味となってしまうので、そのままにはしたくありません。

ですから、基本的に最低限実用レベルに昇華させることは怠りません。

端的に言えば、自分自身を実験台にして実務の中に無理やり取り込み、その経験を積み重ねて改善を加え、実用レベルにします。

それらは周囲から見れば、非常に効率が悪く見えることでしょう。

毎回、自分を実験材料にして成功だけでなく、失敗を繰り返し、

 「使えるもの/使えないもの」
 「使えるシチュエーション/使えないシチュエーション」
 「使える条件/使えない条件」

等を身をもって知ることで経験を自身の血肉に代えているわけですから、中途半端なスピードでは一生かかっても大したスキルは身につきません。

ですから、私は真っ先にスピードを向上するスキルを身につけました。
独学ながら、速読法を身につけたのもその過程によるものです。

先述のようにスキルや知識、経験は単体ではよほど伸ばさないと希少性や必要性が出てきませんが、組合せによって相乗効果が生まれると一気に希少性が高まり、その希少性ゆえに必要性も総じて出るようになっています。

世の中において、希少性が高まると必ず状況に応じたニーズが出てきます。

わざわざ自分から売り込みにいかなくても、相手に求められる希少性や必要性を身につけることができれば、そしてその希少性や必要性を維持できるよう練磨する自分を見失わなければ、

 一生
 どこでも
 どんな環境でも

生活に困ることはない、と言えるでしょう(困るのは人間関係くらいしか残りません)。

もし今の職場環境、あるいは業務環境が無くなった瞬間、どうすれば良いかわからない…と言う人は、この先の人生において大きなリスクを背負っているということになります。

なぜなら、「一生変化しない仕事」と言うのは世の中に存在しないからです。
ですから、必然的に将来大きな問題にぶつかることが約束されているとも言えます。

そうなる前に自分の付加価値を上げる取り組みが必要になりますが、その手段として「1つのスキルを向上させ続ける」以外にも、

 「2つ目、3つ目を実用レベルまで身につける」ことで、
 相乗効果による希少性を得る方法もある

ということを知っておきましょう。

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