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「利は元にあり」 これを現実化するためには、理論上も運用上も効果的に実行する必要があります。その為の考え方の基準をお伝えします。

宇宙一外食産業が好きな須田です。


前回の記事では、試作段階では原価を気にすることなく思いっきり商品と向き合ってください、それが高付加価値商品を作る必須条件ですとお伝えしました。

一旦原価のことは考えずに試作を行い、完成度を高めていきますが、商品化する段階ではシビアに原価コントロールを行う必要があります。

原価の算出方法と店舗オペレーションにも問題がある場合があるので、今回はそのことをテーマにお伝えします。


現在飲食業に従事している方は、ご存じのことと思いますが、今一度考え方の整理方法をお伝えします。

この方法は、レシピの作成段階を原価の基準とする、一般的なやり方を活用した内容です。

レシピでは、実際に使用する食材のみを設定して原価を出していますが、実際には仕込み段階を基準とした、レシピ原価も必要になります。

レシピ原価のみを設定基準とすることで、発生する問題があります。
この問題点が、原価管理のズレを生じさせる場合があります。


それは、歩留まり、食材ロスなどが、タレなどの仕込み段階で大きく発生しているからです。
当然、これらの歩留まりとロスは、タレの原価として見込んでいると思いますが、仕込み段階でのロスやストック段階でのロスなどを考慮しないケースがあります。
要するに、製造ロスは見込んでいますが、運用ロスを見込んでいない場合がほとんどです。

通常レシピとは1品ごとに制作しますが、店舗においては通常1品ごと仕込んでストックすることは稀です。

一度に10人前などある程度の量を仕込んでおきますが、この段階で原価にブレが発生する原因が起きてきます。

タレやソース・ドレッシングなどは、数人前ごとを仕込んでからストックしますが、提供段階で1人前ポーションに小分けして使用しますが、この段階で必ずロスが発生します。


仮にソース類やタレなどを使用する場合には、保存容器にストックしていますが、これを100%使用することは通常あり得ません。

必ず僅かですがロスが発生します。
これが運用ロスです。

例えばボウルにタレを調合して作ったとして、その完成したタレを保存容器に移して使用しますが、問題はここです。

ボウルにも、保存容器にも必ずタレが残ります。

仮にこのロスする分が20ccあったとして、その量が週に2回転するとして、製造段階と保存段階の2回ありますので、実際は4回転に相当します。
1年は52週あるので208回転になります。

この20ccが40円として年間8,320円となりますが、これが仕込みをしているあらゆる商材に発生すると考えると、大きな金額になってしまいます。
同様のことが10種類の商材で発生しているとすると、年間80,000円相当になります。

たった8,320円かとか年間で80,000円程度ならとか、感じたかもしれませんが、もしそう感じたのなら、その感覚がその認識のズレが最も大きな問題と言えます。

8,320円を売上から発生させるとなると、80,000円相当の売上を達成させる必要があります。
これが10種類の食材で年間80,000円のロスが出ていたならば、年間800,000円の売上の利益に相当します。


80,000円分が経費発生と労働が無く、確保できる利益です。

強く認識をしてください、飲食業はこのような10円20円を大事にして大きな利益を上げるビジネスモデルですから、決して軽んじてはいけません。

レシピは調理工程と単品コストの基準値であり、仕込みレシピの作成が本来のコスト管理に結びつく、大きな要素です。

仮に仕込み後のタレなどが、ストック状況で何らかの理由で廃棄処分された場合の損失は、大きなロスとなります。
また、単品のコストと管理とは連動しないことは、容易に想像できると思います。

開発段階で大切なのは、製品の商品化であることは前回の記事でお伝えしました。

製品と商品の違いを理解することは、非常に大事なこともお伝えしました。

商品化させること、その商品を店舗オペレーション上、ロスなく管理することが、実際の行動に照らしわせた原価コントロールです。

紙面上はある数値に落としこめますが、実際のオペレーション段階でロスが多く発生することは、残念ながら日常的に発生しています。

今一度、調理段階でボウルなどについている残食材、保存用理の底に残っている残食材について意識を向けてください。

あるチェーン展開している業態で、私は、いつも目にして心を痛めているケースがあります。

そのチェーン店では、ソースをストックしていき、オーダーごとに小鍋に入れ再加熱して提供します。

再加熱は雪平鍋で、攪拌は木べらで行っています。
提供時には、必ず雪平鍋にも木べらにも多くのソースが残ったままで、そのまま洗浄されます。

おそらく、30g~50g程度は洗浄されていると思います。

1日200食は販売されています。
1回50gで200食、1回のロス分の金額を10円とすると、1日2,000円の利益ロスとなります。

1店舗につき、月間60,000円に相当します。

このチェーン店は1,400店舗ありますから、6万円×1,400店舗は、なんと8千400万円を排水溝に流しています。
年間では、10億に匹敵します。

信じられますか、この事実。


これほど急激な数字は稀ですが、でも、同じ状況はどこのお店にも発生しています。

紙面上の数値も大事ですが、それ以上に店舗オペレーション上の管理が大事なことはご理解できたと思います。


商品とは、あくまでも消費するモチベーションとシーンを考慮し、顧客の心理に訴えかけることが出来るものに作り上げることが大事です。
それと同時に、利益確保を基準とすると、店舗オペレーション上の管理体制は、非常に重要となります。

食材を調理し皿に盛り付けただけでは製品でしかありませんが、お客様の口福と幸福を果たすことで商品として成立しますが、そこには利益という成果が連動していなければなりません。


この利益がお客様の喜びの証であり、応援の証です。

お客様の為に、利益は確保するべきものです。

今回お伝えしたことは、経営者であるあなたと同様に、調理責任者の方々にも特に強く認識をお願いしたいものです。

技術職に就く方は、その技術を過信しすぎるきらいがあります。

技術を披露・発揮するステージがある、その技術がお客様の感動や幸せに確実につながっている。
そしてそのことが、会社の利益に貢献している。
これらを成し得て初めて、一流の技術者であると言えます。

技術があるだけで、貢献という成果が結びつかない現実を、経営者は経験しているので、技術者を使いたくない不必要だと、非常に偏った思考が蔓延しています。

この思考を蔓延させた原因は、技術者側にもあります。

技術者が率先して利益貢献できるように、ロスに対する考え方を再認識して、お客様の幸福と貢献、会社の利益確保にもっと向き合うべきです。


あえて、誤解を恐れず述べますが、技術者は技術があって当たり前です。

その技術を駆使し、本当に美味しい商品にすることが出来るのか、売れる商品にすることが出来るのか、利益の上がる商品にすることが出来るのか、ゲストの心理に訴えかけ顧客とすることが出来るのか、そのことが最重要課題であり、そのことが本当の技術であると私は考えています。


しっかりと利益確保の出来る店舗オペレーションを行い、大きな利益確保を行うことを会社としてシステム化する、それをしっかりと維持することが店舗を任されている方の責任と言えます。

「利は元にあり」と言われますが、理論上と運用上の両輪が正しく行えることで、成立することです。

全ては、人次第です。

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