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須田光彦 私の履歴書28

宇宙一外食産業が好きな須田です。


坂田さんからは、設計と施工に関することを学んでいました。
社長からは、企画とお金について学ばせていただきました。

当時の企画書は、社長が手書きしたものでした。
この企画書はA4サイズ1枚2枚程度の非常にシンプルなものでした。
業態の特性と商品イメージに価格帯のレンジを合わせて表記したものと、客単価と客数から月商を導き出したものでした。
投資額と7年収支も表記してありました。

プロジェクトを始める前に、社長から企画書が回ってきます。
その企画書に一通り目を通してから、わからない部分を質問していました。
社長は、何となくこんな感じをイメージしているのかなぁと、忖度しながら確認作業をしていました。

このころは既に、坂田さんの提案した何軒も店舗を見ることをしていたので、企画内容はほぼ理解することが出来ていました。

この社長の経験にプラスして、自分の現場での体験と沢山の店舗を見てきた結果から導き出された内容を付加して、企画内容に肉付けして、自分なりにオリジナルの内容にしていました。


社長の企画は、客単価の表記が数値だけで、消費形態がないものでした。
現在私が使用している、消費形態から客単価を導き出す方法ではなく、大まかな目標値としての客単価設定でした。

ここから、大まかな皿のサイズと消費数を想定して、テーブルのサイズと卓数を設定し、設計の根拠としていました。


客単価の想定は、実際に沢山の店舗を回って確認した、テーブルの上に乗っている皿数から客単価を想定する方法を開発しました。

社長から出てくる企画書の客単価の裏付けを自分なりに行うことで、設計に反映させ実店舗で検証をしていました。
この仮説・検証から、実際の設計に反映させて開業した業態は、大繁盛しました。

オープン後のテーブルの上に乗っている商品をつぶさに観察することで、顧客心理と消費動向も見えるようになってきました。

消費には流れがあること、多くのメニューがあってもテーブルに乗っている料理は、いくつかの限られた商品に絞られていること、お客様の人数と消費量の関係などが見えてきました。

組人数が多くなると消費量が増えてくることも理解して、客単価も大事ですが組単価をアップさせることも意識するようになり、宴会・パーティー需要の掘り起こしができる店舗設計にしていきました。

このあたりから、自分の設計理論がどんどん確立して行きます。

客単価と客数とオペレーションから、1日に回せる客数の限界を想定し、最高月商を想定するようになっていきました。

バブル時代と言っても、厳しい営業をしているお店も沢山ありました。
時間を作っては、繁盛していないお店の共通点も探るようにしていました。


そこには、やってはいけないことに関する、正解が眠っています。


自分の理論がそこに向かわないように、やってはいけないことを確認していました。

このころからの経験と理論をもとに、これまでに検証できたことを書いたのが、私の著書です。
紙面の関係上表現し切れていない部分を、このnoteでも公開しています。
詳細に掘り下げてもしています。

社長が行っていた、客数 × 客単価で月商を出す方法は、一般的に浸透している手法ですが、この当時はまだ飲食店のオーナーで、知っている人は少なかった時代です。

何となくの経験値と勘が頼りの、どんぶり勘定がほとんどでした。


私は、客数と客単価から組単価と回転率、その積み重ねで月商を出すことをやっていました。

社長の企画書には、客数 × 客単価だけしか表現されていませんでしたが、その客数を回せるようにレイアウトをし、客単価が稼げるように厨房レイアウトを組み、商品の提供時間と人員配置、ホールオペレーションの効率化を図れるように設計をしていました。

厨房から、もしくはコントロールステーションから店舗の状況が見える = 管理が簡単でシンプルなオペレーションになります。

スタッフが動かなくて済むということは、人員が少なくても回せられる = 人件費がかからない、その結果利益が出しやすくなるということを、このころから実行していきました。

テーブルが見えるということは、消費の状況が瞬時に把握できるので、アップセールスがやりやすくなります、タイミングも外さないようにも出来ます。

その結果、想定していたよりも客単価を上げることができます。

当時社内では、これらのことは誰にも話さなかったのですが、自分が担当した店舗では検証をしていました。
お店がオープンした後も、何回もお店に足を運んで、スタッフの動きもお客様の消費動向も確認していました。


お店に行ったときは必ず、店長に数字を聞いていました。


当時はまだ、詳細に数字をとっているお店は少なかったのですが、テーブル状況から満席率を出して平均の組人数を出し、月間の客数から客単価を出していきました。


仮に30坪で坪単価賃料3万円とすると、90万の家賃となります。
家賃比率10%ですと、目標月商は900万になり日商は30万です。

仮に平均組人数2.4人に、想定客単価4,500円をかけると、組単価が導き出され10,800円となります。

この組単価を日商で割ると、目標組数は30組となります。
30組に平均組人数2.4人をかけて営業日数をかけると、目標となる月間客数が2,160名1日72人となります。
1日72人を1.5回転で割ると、1回転あたり48人、満席率70%で目標席数68席となります。

30坪68席、坪当たり席数2.2席の席数を確保することが、設計段階の目標席数となります。

この目標席数を基準に、席数・卓数を店舗レイアウトで構築出来ると、事業の成功確率は上がってきます。

企画段階で、席数×満席率×回転数×客単価×30日で月商を出していきます。

68席×満席率70%×1.5回転×客単価4,500×30営業=月商 ¥9,639,000
目標月商900万が現実的になってきます。

こんな仮説・検証を自然とやりながら、設計をしています。


勿論、夜営業だけではなく、ランチ営業があれば目標数値は変化していきます。

ランチ客単価900円、想定客数を68席で満席率70%回転率1.2回転、営業日数25日とすると、ランチ月商128万になります。
目標月商900万ならば、ディナー帯では780万の目標になります。

すると、客単価を下げることも、客数を下げることも想定でき、夜営業が楽になります。
ただ、ランチ営業をすると、原価率が上がる場合も、人件費が上がり、水道光熱費も上がりますから、詳細な計画が必要になってきます。


常に、この数字を基準に設計を、業態開発をしています。


売上を構築するために、ここまで設計理論と開発理論を駆使して、店舗レイアウトも厨房レイアウトも行っております。


経営的なことも、社長から学学びました。

ある日社長に、どこでどのように経営を学んだのか、質問したことがありました。
この時には、しっかりと、完全に、経営と独立に意識が向いていました。

ですから、直球勝負で聞いてみました、今思えばなんと大胆なことかと思いますが、知りたい欲求の方がいつも勝っていました。

社長は、自然と学べると答えていましたが、先ずは本を読みなさい、基礎知識をつけなさいと指導してくれました。

それまでは、デザイン本と飲食関係の専門書ばかり読んでいましたが、この言葉を頂いてからは会計や財務の本を読むようになっていきました。


その結果、店舗の運営と会社の経営は、別だと気づきました。

この気づきは非常に大きく、起業家が最初にぶつかる、お金の管理に関する問題の原因が理解できました。


飲食店においては、運営原価と経営原価があることを、この段階でしっかりと理解しました。


現場のコスト管理は、自分が現場に入ってオペレーションから学びましたが、経営コストをこのころから考え出しました。

お金の動きに興味が出てきた結果、締め支払日も、食材の仕入れのタイミングも、支払いのスパンと売上の上げ時も解かってきました。

社長は興味を持てば、なんでも、どこでも学べると言っていましたが、私も同感で、今は起業家にも若いスタッフにも同じく伝えています。

まずは、どんなことも興味を持つことです。


工事の予算管理と協力業者さんから上がってくる見積からも、契約と着手金の集金のタイミングと仕入れと支払いサイトからも、多くの学びと気付きを得ていました。

20代で数千万から億単位の金額を扱えたことは、大きな経験でした。


お金の流れを理解してきて、どんどんと設計内容が変化していきました。



この会社では、入社3年目に高級輸入家具の専門店を、千駄ヶ谷にオープンすることになりました。
私は、販売経験があり、飲食店での接客経験もあることから、店舗担当に任命されました。

基本的には社長がお店を見るということでしたが、多くの時間をお店で過ごすようになっていきました。

この高級輸入家具の単価は、ダイニングの椅子1客が100万ほど、椅子が6本セットでダイニングテーブルは300万ほどですから、ダイニングセットで900万になります。

高級車が1台買えてしまいます。

ダイニングセットと同時に、シャンデリアもマントルピースも、絨毯もカーテンも壁紙もコーディネートをしてセット販売していました。

1度お取引が始まると3,000万くらいの売り上げはすぐ立ってしまう、そんなビジネスモデルでした。

設計も、現場も、店舗での販売も、個人の邸宅のインテリアコーディネートと、とんでもない状況でしたが、なんとラッキーなことかと、本当のところ私自身は、ほくそ笑んでおりました。

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