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商品開発は、売れる商品にして初めて価値があります。商品の価値を最大化する商品の設計手法をお伝えします。

宇宙一外食産業が好きな須田です。

さて、業態コンセプト、商品コンセプト、メニューコンセプトと業態開発で必要なコンセプト1セットについて解説してきました。

これらのコンセプトが出来て、初めて商品づくりに移行できます。
と、私だけが考えていますが、実はここで大事なことがあります。

実は、まだ商品づくりには移行できません。


この段階で移行したとしても、いつも通りの“美味しい”“美味しくない”を、基準とした商品開発に終始してしまい、無駄に時間を浪費して何となく商品を作ってしまいます。

すると、あれだけコンセプトをしっかりとしたのに、商品とコンセプトが連動することなく、商品が売れない状況が発生してしまいます。


その理由は、商品のゴールを決めていないからです。

商品の目指すべきゴールを決めないので、どの商品も決める基準は感覚的な美味しさに終始してしまいます。

その商品のどの味のポイントを際立たせるのか、何を感じて頂くための商品なのか、その商品のポジションはどこなのかを決めないままに、商品開発を進めます。
これはゴールの無いマラソンの、スタートを切った状態です。

そこには、過酷なレースが待っています。

どこに向かっているのか、いつ終わるのか、そもそも終わりの基準は何なのかがわかりません。

始まりはわかりますが、終わりはわかりません。

解っているのは、社長が「よしっ これで行こう!」 と、一言言ってくれるだけで終われることだけです。

すると何が起きるのかと言うと、社長の好きな味を開発のゴールにしてしまいます。

社長が 「これで行こう!」と言ってくれるように、ターゲットを社長の舌にしておきます。

すると、開発業務は終了できます。

その開発ごっこが終わってから、全店へレシピを回せるように改良をしていきます。

店舗オペレーションで、簡単に誰でも出来るようにします。

社長へのプレゼンテーションで調理を担当するのは、その会社の調理のトップです。

その人が作ると美味しくなりますが、現場の調理スタッフが作るとそうは問屋が卸しませんと、なってしまいます。

ですから、店舗オペレーションに適応できるように改良を加えて、結果的に社長がOKを出した商品とそっくりな違った商品が出来上がります。


これは極端な例ですが、実際に私が経験したことです。

試食会に立ち会って欲しいと要望されて立ち会ったことが何度も有りますが、この光景は幾度となく見ています。

勿論、商品開発の担当者には悪意はなく、それどころか自分の技術以下の現場スタッフでも簡単に調理が出来るように、真剣にレシピ精査に向き合っている方ばかりです。

でも、厳密に言うと店舗にわたるレシピと、開発段階で社長がOKを出した商品は微妙に違っています。

この現状に対する良し悪しを論ずる気はありません、ただ、こんな事も起きているという事例の一つを紹介したまでです。


では、なぜこの現象が起きるのか、原因は明確です。

ゴール設定が無いから。

ゴールを決めるために私は、「味の設計図」を作りましょうと伝えています。

私は普段設計も業務として受注しております。
元々は、デザイナーでもあります。
飲食業の設計を極めたくて、飲食業に飛び込み、飲食業を深く知ることとなりましたが、そもそもは設計がしたくて、店を創りたくて今の仕事につきましたが、当初よりコンサルティングを行いながらの設計でした。

私にはコンサルティングと設計はセットで、区分けはありません。
境界線は、図面を描くか開発をしているのか、でも、どちらも店創りの一環の作業です。

話を戻します。

お店を創るときに、必ず設計図を描きます。
設計図が無ければお店は出来ません、見積もりも取れません。

でも、商品は設計図なしに作られてしまいます。
完成品の姿がしっかりと決まっているのが、図面がある状態、即ちゴールが明確です。

それが、商品の場合には、設計図が無くいきなり商品を作りだしてしまいます。

即ち、完成品の姿を誰も知りません。

調理担当の方は、このゴールが見えない状況で、過去の個人的な経験とデータと、今回のプロジェクトの意図をもとに、何となく商品を作りあげていきます。

開発に携わるメンバーも、調理担当の方が作った商品だからと思い、何となく社長の顔色をうかがいながら意見を述べます。

余り辛辣なことを言って、波風を立てるわけにもいきません。
開発メンバーから、外されでもしたら大変です。

と言うように、社内の人間関係と自己の保身に根差した商品開発が行われます。

お気づきのように、ここにはお客様の存在はありません。

ペルソナ設定をしたにも関わらず、商品開発になったとたんに、お客様の存在は紛失して、社長の舌が基準となってしまいます。

これが、プロダクトアウトになる根本原因です。


ですから、これを回避するために、味の設計図をつくりましょうと、お伝えしています。

味の設計図とは、商品のディティールを決めることを指します。

味には五味がありますが、日本には旨味と言う六味目があります。

この六味のバランスと、食感・見た目・ポジションなどを決めることを、味の設計図を作ると表現しています。

昨日、担々麺の試作を一人で行っていました。

現在サポートをしているクライアントに、試作品用のレシピを提供するために試作と、レシピづくりを行っていました。

これを事例として、設計内容をご紹介します。


そもそも担々麺は、このお店の人気メニューでしたが、担々麺はほぼどこのお店でも人気の上位に来るメニューです。

担々麺は、商品名の由来にもなっているように、天秤棒で担いで麺を売り歩いていたので、茹で上がった麺に調味料と具材をかけて混ぜて食べるのがそもそもの商品です。

陳健民さんが日本人の食習慣に合わせて、現在の汁ありの担々麺が出来上がりました。
ですから、日式担々麺とでも言えるのが、現在の担々麺です。

担々麺はオペレーション上非常に優れた商品です。

調理技術も不必要ですし、提供も早くできる、その上、単価もある程度とれる、本当に優れた商品です。

このように優れた利点があるので、人気商品、一押し商品にポジショニングする狙いがあります。
商品開発の基準はここになります。

人気商品にする、取得率を圧倒的に上げる、いくつかの商品と併せてセット商品にする、汁なし担々麺と坦々つけ麺などのバリエーションの対応が出来るようにすると、決めました。
これで、ポジションが決まりました、展開する方向も決まりました

次に、味を分析します。

担々麺の構成要素を分解します。

いつものように分解すると、麺とスープと頭となりますが、担々麺の場合スープに胡麻のペーストの芝麻醤が絡んできます。

この芝麻醤の扱い方で商品のイメージが変わって来ます。

そこで先ず、今回担々麺を通して提供したいメッセージは何かを決めます。

伝えたいメッセージは、業態が完全に様変わりして、更に美味しくそして本格的でありながら、日本的な細やかさの加わった、現代的な中華レストランになったことです。

ですから、以前よりお店を代表する人気商品の担々麺を、刷新することとしました。
人気商品、集客商品は、このメッセージを決めることが非常に大事になります。

次に、一般的な担々麺の弱点・不満を考えます。

すると例えば、胡麻を感じられないときがある、辛いだけの時がある、野菜がない、刺激が足りない、お店によって商品のばらつきがあり過ぎる等、いくつか想像できます。

そこで、味の設計を開始します。

構成要素のスープでは、先ず胡麻のコクを出すこととします。
これにより、今までのシャバシャバの担々麺から大きくイメージ変換を巻き起こします。
ターゲットは宮崎県の方々なので、熱くて湿気の高い地域です、すると甘味と酸味も外せません。
醤油ダレは風味を際立たせて、塩味は少しきつめにします。
スープの濃度は、麺にしっかりと絡むくらいの濃度にします。
これを基準に、胡麻の量を決めます。
濃度があり過ぎると、重くなりリピート率が下がる懸念があるので、重くならない程度にして、麺を食べ終わった時に、どんぶりにスープが半分残っている程度になるように、胡麻の量とスープの量を決めます。

構成要素の頭は、肉味噌がポイントとなります。
肉の旨味が感じられ、肉味噌がスープに合わさることでスープに旨味がプラスされコクも増強されるように、圧倒的な旨味を肉味噌に添加することにします。

その為に、甜面醤・豆板醤・オイスターソースの発酵系の旨味をしっかりと含ませること、中華の基本の肉味噌の仕上げ方で臭みの無い肉味噌にすることを決めます。

あわせて、この肉味噌は担々麺以外の料理にも活用できるようにします。

麻婆豆腐のベースも、この肉味噌にします。
レタスに包むと、また違った一品にもなります。

一般的な担々麺の野菜と言えば、青梗菜が申し訳なさそうに乗っているだけ、しかもカットしていない長いままで、噛み切れません。

個人的には、いつもイラッとしています。

そこで、カット野菜を沢山乗せることとしました。

カット野菜が沢山あるので、健康的なイメージも提供できます。
ある程度胡麻のコクがあっても、醤油ダレの塩味があっても、この野菜を混ぜて、一体感を持たせることで中和できます。
ここに、引き算の法則が適用されます。

フレッシュな野菜と混ぜて食べることで、口の中にいくつもの食感を提供できることとなります。

又このカット野菜は、添え物のサラダとしても使えるようにします。
ランチのミニサラダとか、揚げ物の添えサラダに転用できるようにします。
1回の仕込みでいくつものバリエーションをも足せる狙いもあります。

構成要素の麺は、モチモチの食感の中太麺にします。
現在は比較的細めの麺を使用していますが、現状よりは少し太くして食感を演出します。

担々麺は、胡麻のコクと、辣油による辣の辛さと、山椒による麻の痺れる辛さの2種類の辛さを楽しむ料理です。

ですから、完成後に辣油の辣の辛さを足すこと、山椒をふりかけ麻の痺れる辛さを足すこととしました。
酸味はお客様のお好みで、テーブルで仕上げて頂くこととしました。

山椒も、テーブルでミルでご自分で、お好みの量をかけて頂くことを提案しました。

ミルでガリガリやると、一番香りが強調されます。
オペレーション的にもアクションが一つ減るので、スピード提供が出来ます。

山椒は勿論、中国産の香りが強い花山椒です。
花山椒オイルも、仕上げに掛けることとしました。

これが担々麺の味の設計図です。

この他に、提供するどんぶりのサイズ感も、どんぶりの形状も、セット商品になるときのセット内容や、麺飯セットとして合わせる飯料理もイメージしておきました。

商品名も、メニューブックに乗せる位置もイメージしておきます。
キャッチコピーも大体決めておきます。

売価も原価のイメージも、おおよその原価率も決めておきます。

さて、ここまで読んでいただいて、どんな担々麺になるのか大まかなイメージが浮かんできませんでしょうか?

どんぶりの大きさと形や深さ、頭にたっぷりと野菜が乗っていること、提供されると山椒の香りがすること、ボリューム感があることも。
肉味噌と野菜を混ぜて食べることで、更にスープに旨味とキレが出ること。
モチモチとした麺の食感と、野菜のシャキシャキとした食感を感じられることがイメージできると思います。


ターゲットペルソナは、健康を意識している38歳の主婦です。

家族には健康的なものを食べさせたいと考えています。
胡麻が体にいいことはご存じです。
メニューを見ると野菜が沢山入っている写真が載っています。
地元の新鮮野菜を使っていることも、説明には書いてあります。
しかも、無化調とも書いています。
ご主人とお子さんの健康が、いつも気になっています。

鹿児島産の黒酢と、中国産花山椒はお好みで、テーブルでご自分でプラスできるとも書いてあります。

セット商品もあるので、食べ盛りの男の子でも大丈夫だと考えます。

辛さよりも、旨味の強い担々麺です、お子さんでも十分食べられます。
場合によっては、辣油をカットすることもできます。

こんなお客様の心理を考えて、開発した担々麺です。


この様に、誰をターゲットにして、設定したペルソナの方の性格と感情と思考と愛情を感じながら、開発を行うために、味の設計図が必要になります。

ペルソナ設定を紹介した時にも事例をお伝えしましたが、ある企業の開発責任者の方が言った一言、「これって、美智子さんは喜ぶかなぁ」

これぐらいまでペルソナをハッキリと意識していると、味の設計図が明確な基準に基づいて構築出来ます。

味の設計図をどうか導入して、意図的に売りの商品に、圧倒的な集客商品に仕立て上げてください。

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