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down the river 第一章  第三部〜崩壊③〜

ユウと敬人は事後にシャワーを浴びず急いで登校したが、派手に遅刻してしまったことは言うまでもない。
ユウはここぞとばかりにしこたま高石に怒鳴り散らされ鬱憤を晴らされてしまう結果となったのだ。

「ユウ。」

休み時間になると優しい微笑みを携えて亮子が近づいてきた。

「…」

「来て。」

「はい…」

2人で教室を出ようとしたところ、哲哉に呼び止められた。

「ユウ、どした。お前が遅刻とかよ。ん?」

「いや、寝坊だよ。まったくもう、家族揃って遅刻だよ。」

「なんだよ、興奮して眠れなかったんか?」

哲哉は亮子とユウの間に入り交互に2人を見た。

「私は興奮して眠れなかった。ホントに。」

亮子はスローモーションがかかった様に微笑み、哲哉を見返す。

「フゥ〜まったくお似合いだよ。んじゃ、ごゆっくりぃ〜。」

哲哉は後ろ歩きて道化の様に去っていった

『まったく、お気楽だよねテツちゃんてばよ。』

美沙という文武両道の才女と付き合い、友人も多く、クラスどころか学年でも人気者のおちゃらけキャラである哲哉をユウはこの時ほど恨めしく思った日はなかった。
こういう人間がお得に人生歩んでいけるのだろうとユウは口を尖らせた。

「ユウ、してきたのよね?」

2階建ての新校舎2階に空き教室並んでいるエリアがあり、ここは人があまり来ない。その突き当りでユウは壁を背にして亮子の尋問を受けている。
第二次ベビーブームの頃に慌てて地方自治体が作った新校舎であるが結局10年経たずして過疎化が進み、新校舎は特別教室と多目的室や小ホールなどがあるだけで後は空き教室が並んでいるだけの寂しい建物と化している。

「ユウ、朝からするなんて凄いね。答えて?ねえ?」

「はい。たくさんしてきました。」

ユウは目を閉じてボソリと呟く。

「傷がまだ痛むのに?」

「…亮子さまはしてもいいって…」

「誰も怒ってないわよ。どんな変態なことしたのかなって。気になっちゃって。フフッ。」

「こ、ここでは言いたくありません…」

亮子は静かに上着のポケットに手を入れると、チキチキとカッターナイフの音を響かせた。

「か、ん、勘弁し、してください!お願いです!」

ユウは素早く膝を付き、亮子に懇願する。

「いつなら言えるの?どこでなら言えるの?」

「放課後!放課後に!はい!必ず!亮子さまのお家で!」

「そう、良かった。立って?誰かに見られたら大変よ?」

「はい!」

ユウは軍隊さながらに素早く立ち上がり亮子の目を真っ直ぐに見つめた。勘弁してほしい、もうこれ以上はここで追求しないでほしい、切り刻まないでほしい、そんな思いを眼力に込めて、亮子を見つめた。

亮子はポケットからカッターナイフを取り出し、チキチキと音をたてて刃を出した。

「ヒィっ!やめ、やめ…り、りょ、…」

「変態ね。ユウ。」

亮子はそ言うとカッターナイフの先端をユウの股間に当てた。

「ハハハッ!ユウ、勃ってるじゃん!ハハハッ!」

亮子の言う通りユウの男性の象徴ははち切れんばかりに膨張していた。というよりユウはカッターナイフの音を最初に鳴らされた時には既にムクムクと性衝動が沸き起こっていたのだ。
朝からあれほど派手に敬人と性行をしてきたというのにまったく揺るがずに膨張していた。

「あんま言うこと聞かないと…余った皮切っちゃうよ?」

「き、聞きます!本当です!なんでもします!ごめんなさい!」

「ああ、面白かったぁ。ユウ帰ろ?手をつないで教室に戻ろ?」

「はい…」

亮子の艶々の小さな手を握ったユウは色々な思いが交差していた。
ユウは亮子に期待していたのだ。尋問を受け、答えることができない自分を亮子が切り刻んでくれる事を。そして、最後のセリフもユウが期待していたものだった。見苦しく膨張したものを、味わったことがない痛みを恥辱と共に味わえる、なんて素晴らしいことなんだと期待に胸を膨らませていたのだ。

『も、もうだめだ。俺はもうだめだ。欲しい…欲しい…。』

「クッカハっあ!」

ユウはあまりの慟哭に胸がつまり咳き込んだ。 

「ユウ?大丈夫?」

亮子は優しく手をユウの胸に置き、顔を覗き込む。
亮子の優しい眼差しと愛おしそうにユウを見つめる顔は、カッターナイフを手に迫る亮子とはまるで別人だ。
ユウは頭の中で、今の優しい亮子とカッターナイフを手にした亮子がまるで旧式の映写機の様に交互に映される。

「だ、大丈夫だ…す。」

「ハハッそう。でも無理して敬語使わなくていいよ?敬語使わなくてももう…」

そこまで言うと亮子はカッターナイフをチキチキと鳴らすと「は、ヒィ!」という悲鳴をあげユウは身体をはね起こした。

「ね?ほらぁ…キチンとできるじゃない。」

「…」

「さぁ教室に帰りましょ?」

「は、はい…。」

・・・

放課後、校門の前に亮子、ユウ、哲哉、美沙、敬人が集合していた。いや、期せずして集合してしまっていた。

「なんだ?なんか集まっちゃったけど?」

哲哉が鼻を擦りながら照れくさそうに第一声を放つ。

「ね、なんか本当、なんの偶然?ん?敬人…待ってたの?」

美沙が哲哉の顔を覗きながらやはり照れくさそうに話す。

「わかんないけど、なんか集まっちゃったね。帰ら…ないの?みんな。」

亮子は伏し目がちになり呟く。
敬人は下を向き黙っている。

「とりあえずまぁ…今日はうん、その…早く帰らないといけねんだ俺。だ、だ、だからその亮子さ…り、亮子さ…亮子を早く送んないと。」

「なに噛んでんだよ。ユウ。ハハッ。」

哲哉は突っ込みを入れると美沙の手を引き歩いていこうとした。

「美沙行こうぜ、後は若い2人にお任せしてっとねハハ!敬人!お前も彼女作れよ!モテるんだし。」

哲哉は手をブンブン振りながら美沙と歩いて行ってしまった。

「るせえよ。テツ…。」

敬人は哲哉がその場から居なくなると殺気に満ちた顔で悪態をついた。

「しょうがないんじゃない?有田くん。藤田くんは知らないんだし。うちに来る?有田くん。」

亮子はニヤリと冷たい微笑を浮かべると、ユウの胸の先端をつねった。

「あ!あぅ!」

ユウは自分で両肩を抱き、身をよじらせた。

「阿高!てめえ…!」

敬人は亮子に詰め寄り胸ぐらを掴もうと手を伸ばすが亮子はまるで動じていない。敬人の手が亮子の襟に届く寸前のところで、亮子はブルルと痙攣の様なものを起こすと上目使いで敬人に迫る。

「楽しもうよ。有田くん。ね?ユウで、遊ぼ?一緒に。」

「あ、あぁ。」

敬人は大人しく手を下げて、ユウの顔を見た。
ユウは胸の先端という淫靡な呼び鈴を鳴らされた為にすでに「女」の顔に「奴隷」の顔がプラスされたなんとも毒々しい笑みを浮かべていた。
ユウは敬人と目が合うと、上唇を舌で舐めずるといういつものセックスアピールをすると両肩を自分で抱いたまま敬人と亮子の2人に頭を下げとろけた目つきで懇願した。

「亮子さま、タカちゃん、たくさん可愛がってくださいね。」

「ユウ…」

敬人は小首を傾げたユウの頬に手を添えて見つめた。
こんなにも毒々しい顔に仕立て上げたの間違いなく敬人だ。そしてその毒に侵された敬人はユウを性欲処理のおもちゃから恋愛対象へと昇格させてしまった。それは諦めることは中々できないほどに感情は加速してしまっている。
自分自身で作り上げた複雑な矛盾が自分自身を苦しめるていることにすら敬人は気がついていない。

「どうしたの?タカちゃん。何も考えなくていいんだよ?」

ユウは静止してしまった敬人の手を握った。
見つめ合う2人を亮子は色欲に溺れた目つきで見守っている。

「タカちゃんは何も考えなくていいんだ。したい様に…いいんだ。壊しても。そう、壊しても。いや、もう、壊して?」

ユウは握った敬人の手を自分の胸に当てる。

「さあ、有田くん?言うこと聞いて?うちにおいでよ。」

亮子は口の端に溜まった涎をすすると我慢できない様子で2人に行動を促した。

壊されることを望んだユウと壊す決心がついた敬人の2人は、最低の行為を以て、最高の満足を亮子に与えた。


※いつもありがとうございます。
次回更新は本日から3日以内です。

今シリーズの扉画像は
yuu_intuition 氏に作成していただきました。熱く御礼申し上げます。
yuu_intuition 氏はInstagramに素晴らしい画像を投稿されております。
Instagramで@yuu_intuitionを検索して是非一度ご覧になってみてください。

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