新書・文庫で入門する教育社会学ブックリスト
近年、教育社会学のテーマを扱う新書が非常に充実してきている。社会学や教育学の他領域と比べてもかなり多く、新書だけである程度主要なトピックを押さえられるようになっているとおもう。新書だけ読む入門ゼミなどもできそう。
新書だけでなく同じく安価で入手できる文庫も加えて、新書・文庫を通して教育社会学に入門するためのブックリストを作ってみた。たまに「新入生におすすめの入門書は?」「大学受験生に勧めるなら?」といった質問をされるので、自分が人に勧めるときのために一度整理しておきたかった。
また、教育についてよく言われることとして、「教育は誰でも経験しているので専門的な知識がなくても語れてしまう」というのがある。世に出ている書籍についても同様で、非専門家による教育論が溢れている。初学者には誰が信頼できる書き手なのかがわかりにくい。そうした状況であるから、ちゃんとした研究者による著作のみをまとめたリストにはそれなりの意義があるとおもう。もちろん非専門家やルポライターによるすぐれた著作も数多くあるけれど、ここでは研究者による著作に限定している。
新たに刊行されたり見つけたりおもい出したりするたびに追加していくつもり。狭義の教育社会学が専門ではない研究者の著作であっても、教育社会学的なテーマに関係するものであれば入れてある。絶版や品切れの(疑いがある)本についてはできるだけ避けたけれど、重要度やジャンル間のバランス次第では加えてある。また、加筆修正しているうちに冊数が増えてきたので、重要度や読みやすさを踏まえて初学者におすすめの本に★印をつけている。
第二弾として選書で広げる教育社会学ブックリストもつくってみたのでよかったらどうぞ。
1. 日本社会と教育
〈教育と社会〉
★苅谷剛彦(1995)『大衆教育社会のゆくえ』中公新書
本田由紀(2014)『もじれる社会』ちくま新書
★小熊英二(2019)『日本社会のしくみ』講談社現代新書
〈戦後日本の教育〉
★木村元(2015)『学校の戦後史』岩波新書
小国喜弘(2023)『戦後教育史』中公新書
貝塚茂樹(2024)『戦後日本教育史』扶桑社新書
〈戦前日本の教育〉
広田照幸(2021; 単行本1997)『陸軍将校の教育社会史(上・下)』ちくま学芸文庫
竹内洋(1999; 文庫版2011)『学歴貴族の栄光と挫折』講談社学術文庫
小野雅章(2023)『教育勅語と御真影』講談社現代新書
2. 教育と学校
〈制度としての学校教育〉
★苅谷剛彦(1998; 文庫版2005)『学校って何だろう』ちくま文庫
★中澤渉(2018)『日本の公教育』中公新書
中澤渉(2021)『学校の役割ってなんだろう』ちくまプリマー新書
広田照幸(2022)『学校はなぜ退屈でなぜ大切なのか』(ちくまプリマー新書)
今津孝次郎(2012)『教師が育つ条件』岩波新書
濱中淳子(2006)『「超」進学校 開成・灘の卒業生』ちくま新書
藤原辰史(2018)『給食の歴史』岩波新書
〈学校問題〉
★内田良(2015)『教育という病』光文社新書
内田良(2021)『学校ハラスメント』朝日新書
★森田洋司(2010)『いじめとは何か』中公新書
内藤朝雄(2009)『いじめの構造』講談社現代新書
土井隆義(2008)『友だち地獄』ちくま新書
〈高等教育〉
吉見俊哉(2011)『大学とは何か』岩波新書
★天野郁夫(2009)『大学の誕生〈上〉帝国大学の時代』中公新書
★天野郁夫(2009)『大学の誕生〈下〉大学への挑戦』中公新書
天野郁夫(2017)『帝国大学』中公新書
潮木守一(1986)『キャンパスの生態誌』中公新書
佐藤郁哉(2019)『大学改革の迷走』ちくま新書
〈教育政策〉
★青木栄一(2021)『文部科学省』中公新書
★松岡亮二編(2021)『教育論の新常識』中公新書ラクレ
苅谷剛彦(2002)『教育改革の幻想』ちくま新書
小針誠(2018)『アクティブラーニング』講談社現代新書
★高田一宏(2024)『新自由主義と教育改革』岩波新書
寺沢拓敬(2019)『小学校英語のジレンマ』岩波新書
3. 教育と社会的配分
〈教育とメリトクラシー〉
★天野郁夫(1982; 文庫版2006)『教育と選抜の社会史』ちくま学芸文庫
★中村高康(2018)『暴走する能力主義』ちくま新書
★本田由紀(2020)『教育は何を評価してきたのか』
〈教育と選抜〉
★竹内洋(1991; 文庫版2015) 『立志・苦学・出世』講談社学術文庫
斉藤利彦(1995;文庫版 2011)『試験と競争の学校史』講談社学術文庫
清水唯一朗(2013)『近代日本の官僚』中公新書
望月由起(2022)『小学校受験』(光文社新書)
〈教育と格差〉
★松岡亮二(2019)『教育格差』ちくま新書
★苅谷剛彦(2009)『教育と平等』中公新書
スティーヴン・エジェル(原著1993;翻訳文庫版2023)『階級とは何か』
吉川徹(2009)『学歴分断社会』ちくま新書
吉川徹(2018)『日本の分断』光文社新書
山田昌弘(2004; 文庫版2007)『希望格差社会』ちくま文庫
志水宏吉(2022)『ペアレントクラシー』朝日新書
松岡亮二・高橋史子・中村高康(2023)『東大生、教育格差を学ぶ』(光文社新書)
〈学力問題〉
苅谷剛彦(2008; 文庫版2012)『学力と階層』朝日新聞出版
志水宏吉(2020)『学力格差を克服する』
4.教育と交差する社会領域
〈教育と労働〉
★本田由紀(2009)『教育の職業的意義』ちくま新書
濱口桂一郎(2013)『若者と労働』中公新書ラクレ
本田由紀・内藤朝雄・後藤和智(2006)『「ニート」って言うな!』光文社新書
児美川孝一郎(2013)『キャリア教育のウソ』ちくまプリマー新書
難波功士(2014)『「就活」の社会史』祥伝社新書
岩田弘三(2021)『アルバイトの誕生』平凡社新書
〈教育と家族〉
★広田照幸(1999)『日本人のしつけは衰退したか』講談社現代新書
末冨芳・櫻井啓太(2021)『子育て罰』光文社新書
野沢慎司・菊地真理(2021)『ステップファミリー』角川新書
本多真隆(2023)『「家庭」の誕生』ちくま新書
赤川学(2017)『これが答えだ! 少子化問題』ちくま新書
筒井淳也(2023)『未婚と少子化』PHP新書
〈教育と福祉〉
★阿部彩(2008)『子どもの貧困』岩波新書
★阿部彩(2014)『子どもの貧困Ⅱ』岩波新書
三谷はるよ(2023)『ACEサバイバー』(ちくま新書)
澁谷智子(2018)『ヤングケアラー』中公新書
濱島淑惠(2021)『子ども介護者』角川新書
〈教育と犯罪・逸脱〉
鮎川潤(2022)『新版 少年犯罪』平凡社新書
石川良子(2021)『「ひきこもり」から考える』ちくま新書
宮台真司(1994; 文庫版2006)『制服少女たちの選択―After 10 Years』 朝日文庫)
〈教育と政治〉
桜井智恵子(2012)『子どもの声を社会へ』岩波新書
絓秀実(2006)『1968年』ちくま新書
竹内洋(2015, 単行本2011)『革新幻想の戦後史』中公文庫
佐藤卓己(2024, 旧版2004)『言論統制 増補版』中公新書
5. 教育とグローバリゼーション
〈教育と多文化社会〉
朴三石(2008)『外国人学校』中公新書
南川文里(2024)『アファーマティブ・アクション』中公新書
〈教育の国際比較〉
★小松光/ジェルミー・ラプリー(2021)『日本の教育はダメじゃない』ちくま新書
苅谷剛彦(2004; 文庫版2014)『増補 教育の世紀』
竹内洋(1993)『パブリック・スクール』講談社現代新書
恒吉僚子(1992)『人間形成の日米比較』
6. 教育と文化
〈教育とメディア〉
木村忠正(2012)『デジタルネイティブの時代』平凡社新書
佐藤卓己(2008; 文庫版2019)『テレビ的教養』岩波現代文庫
河原和枝(1998)『子ども観の近代』中公新書
〈教養〉
★竹内洋(2003)『教養主義の没落』中公新書
稲垣恭子(2007)『女学校と女学生』中公新書
福間良明(2020)『「勤労青年」の教養文化史』岩波新書
高田里惠子(2005)『グロテスクな教養』ちくま新書
〈読書〉
飯田一史(2023)『「若者の読書離れ」というウソ』平凡社新書
永嶺重敏(2023, 単行本2004)『読書国民の誕生』講談社学術文庫
長尾宗典(2023)『帝国図書館』中公新書
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