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ルール上可能なスーパーユーティリティ選手とは?〜ラグビー見る専が読むラグビー規則〜

前回予告したネタです。正直鮮度も何もないけど気が済まないので書きました。サッカーだとキーパー以外は自由にポジション変えて何の問題もないですが、ラグビーではどんな制約があるのか?わざわざポジションごとに背番号あるのに?といったあたりの話。

初めての人が試合を楽しむことに特化した過去記事では元々

ポジションはそんな覚えなくていいよ!
どうせどこに誰がいるかわかんないから
スクラム組む人とその外の人でいいよ!

ということは書いてましたし、ポジションと役割…というのは正直今の時代流動的になっており、スクラム最前列で組む人も猛烈にラン/華麗にパスしたり、体の小さい人が務めることが多いスクラムハーフでも果敢にタックルにいきます。

ただ、テレビですと進化したカメラワークでいろんな角度からうつるし解像度はいいしで、どんな陣形とってるかとか見えるわけです。
そこに慣習的に背番号と対応するポジションが決まってるもので、会話するにも実況するにもポジションと背番号を一緒くたにして話すのは日常的光景。そこは見続けていくならいつかは理解すべきポイントでしょうね。

複数ポジションこなせる選手の扱いってどうなってるんだろう?

サッカーでリアルタイムに入れ替えが効かない場所といえばキーパーですが、そういうポジションあるのか…という前に。番号とポジションの結びつきの話をば。9番といえばスクラムハーフであり、3番はタイトヘッドプロップ/右プロップ。控え選手の16-18はフォワード1列=フッカーとプロップ、1920はFW2列3列、21-23はバックス…というのがよくあるパターンです。ただ試合によっては21番までFW、なんてこともあったり。

選手に番号が紐付いているわけではないところに、そこに他の競技同様当然

○○というポジションは、××である!

という「べきだ論」も乗りますし、フィールド上の立ち位置も、○○のポジションはこの辺に立つ!なんてイメージはわりとあったりします。プロップはスクラム押しとけ!スタンドオフはユニフォーム汚すな!なんてのもその一例。挙句の果てに番号とポジションがごちゃごちゃになって実況される。イメージも乗っかる。

これ、見慣れてない人からすればいきなり専門用語が降ってくるし、ポジションごとのイメージとか10番が司令塔くらいしかわからない ってな状況が出来上がりそうですよね。そういうこと気にせず楽しめればそれでいいんですけれど、訳も分からずポジションや番号を連呼されたりテロップが出てくると辟易しそうじゃないですかね。

しかも選手個人に背番号が紐付いていませんから、ポジションが変わったら背番号も変わります。アイルランド戦で6番(ブラインドサイドフランカー)だった姫野選手は、サモア戦スコットランド戦では8番(No.8)を背負っています。ロシア戦で15番(フルバック)だったトゥポウ選手は、アイルランド戦は11番(ブラインドサイドウイング)で出場予定でしたし、代表での元々のポジションは13番(アウトサイドセンター)でした。トライゲッター松島選手は今14番(オープンサイドウイング)ですが、元々15番でエディJでは11と13。
なおここまで書いて分かると思いますが、番号でポジションを呼ぶ理由の一端はポジション名が書いたり喋ったりするのに長いからってのもあると思います。…何が何だか。


中 島 イ シ レ リ

で、トップの問いに戻りますと、実はラグビーには3つ特別なポジションがあります。正確に言えば、変わってもいいけれど…というやつで、スクラムの最前列=フロントローの選手、ここだけはルール上も特別扱いされています。スクラムの最前列は特殊な訓練が必要とされ、例えばケガ人が多発してフロントローの選手に空きが出てしまうとスクラムを組むときに「アンコンテストスクラム」、つまり競り合わないスクラム扱いになります。…そりゃ訓練していない選手が組んだらケガするわな。当然超キツいポジションでもあります。

ラグビー規則3条の8において、フロントローの選手は23人という選手層で行う試合にあっては最前列の選手は最低6人必要で、ルースヘッドプロップ・フッカー・タイトヘッドプロップ全員について代わりがいる必要があります。先日南アフリカがナミビア戦にてフッカーの選手をNO8のポジションで起用し、控えにフロントローの選手が2人しかいない状況ができていましたが、この時でも一応23人の中に6人フロントローの選手がいる形です。

さて、日本代表にこんな選手がいます。

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誰が呼んだか松本人志最終形態こと中島イシレリ選手。猛烈な突破とタックルで大活躍しております。後半の足が止まり始めるシチュエーションや相手がFW戦仕掛けてきたとき、中島選手がいることがどれだけ心強いか。

髪の毛を金髪に代えてすさまじく雰囲気が変わっているうえ、今の日本代表の中で眺めてみるとなんか日本ネイティブの雰囲気さえ漂ってますが帰化選手です。中島の名前は奥さんの姓です。私の過去記事を書いた時点では中島選手はFW2列・3列を兼ねる選手だったのですが、もともと1番(ルースヘッドフォワード)だったのが大学で2列・3列に転向していたというパターンです。それがまた1番にもどってきた。なんと、本大会9か月前のことでありまして、トップリーグで1番で出たと思ったら代表でもJJにはプロップ専念を命じられたという。(※)
経験が効いてくるポジションで大胆な転向ですが、見事に本職を押しのけてチャンスをつかんだ挙句本大会でも大活躍しています。
なお同郷のヴァルアサエリ愛選手は逆パターンで、NO8だったのが所属チームのロビーディーンズHCにすすめられて3番(タイトヘッドプロップ)に転向しました。やっぱり経験値の問題かスクラムが弱点だったのですが、パシフィックネーションズカップ辺りから改善し始め、今では中島選手と並んで「ものすごく頼れる」控えであります。

彼は2列・3列もいざとなったらできるわけですが…ここで疑問が。
1番の選手というと今のワールドカップ代表では中島・稲垣、実は具もできますが、例えば控えの選手番号でいうところの2列3列、だいたい19番・20番として中島を登録しておいて、1番の選手が全員ケガしたとき彼が代わりを務められるのか?
これもダイレクトではないものの、一応答えが書かれております。先ほど書いた通り、「最低人数が6名」なことと、
3条の10に

試合前、各チームは適切なマッチオフィシャルに自チームのフロントロー、および、フロントローの交替要員、そして、それぞれがフロントローのどのポジションをプレーできるかを申告しなければならない。それらのプレーヤーのみがコンテストスクラムを行う際にフロントロープレーヤーとしてプレーすることができ、プレーできるのはあらかじめ指定されたポジションのみとなる。

とあります。ということは、申告しておきさえすればスクラム組ませてもらえるわけです。で、別の条文には『フロントローの選手は別のポジションをやってもよい』とあるので、

中島イシレリ選手は、申告しておけばフッカーとタイトヘッドプロップ以外の全てのポジションを担うことが許されます。

BK?2列3列もできるから大丈夫でしょ!!!
ちなみにフッカーの堀江選手、3列でもプレーでき、多分日本国内レベルだと普通にBKやれます蹴ってよし投げてよし当たってよしスクラムよしという恐ろしい選手がいるという。

与太話

この辺の話はググっても出て来ないもので、でもルールを読んでみると面白い。面白いから書いてみようという動機なんですが

この話題というのは2019年頭に中島イシレリ選手がPR再開した!となった時うちのTLで話題になった話なんですな。

フロントローで複数ポジションできる選手を探っていったとき、堀越=1番2番、具とWYK=1番3番、伊藤=2番3番できるというのがあって

このネタ思いついてから気づいたらW杯始まってました。
もっと早くやれよ。

なお次回のネタも決まっておりますが、書けるとはいっていない。

※代表の1番PRについて

JJの見立てでは、1番は稲垣選手以外誰がいるのか?というのが元々あって、サンウルブズではミラー選手がいたのですが、彼は日本代表に間に合わない。ここの層が薄いから呼ばれたミラー選手がサンウルブズで大活躍。二番手は石原選手だったんでしょうけれど怪我で出られなくなり。
そんな中「スーパーユーティリティ」として中島選手の計算が立つなら…!という感じでした。


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