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「When You Reach Me」by Rebecca Stead / レビュー

When You Reach Me


by Rebecca Stead

【作品情報】

ジャンル:Middle Grade(8~12歳)以上、
#成長物語 #サイエンスフィクション
出版:2009年(Wendy Lamb Books)
受賞:ニューベリー賞、他

【あらすじ】

母娘でニューヨークに暮らす12歳の少女Mirandaの元に、数か月前から送り主不明の謎のメモが現れるようになっていた。「手紙を書いて。ある人の命を救いたい。このことは誰にも話さないで」と。同じ頃、Mirandaの周りでは不思議なことが起きていた。自宅の鍵がなくなり、玄関から靴が消え、突然親友に無視され始め、図書館で借りた本の間やパンを入れる紙袋の中からメモが現れる。しかしMirandaは手紙の不可解な要求にどうすればいいのかさっぱり分からない。Mirandaの友人関係や周りの大人を交えた日常を描きながら、手紙の真相を探っていく物語。


【感想】

Mirandaの視点で、途中まで(というか3分の2くらいまで)読み手は何が起きているのか分からないので、ただMirandaの日々を一緒に追っていくような感覚で展開がスローに感じました。でも、実はそんな日常のあちらこちらに伏線がちりばめられているので頑張って読むことをおすすめします。真相までたどり着いたら、きっと前半を読み返したくなりますよ!読後感は不思議な感覚。驚きながらもほっこりと心温まる物語です。

ミドルグレード向けで、英語も読みやすいと思います。大人向けの大作とは異なり、200ページ以下の短いページ数で、ここまで驚かせるなんてすごいなと思いました。何度も再読してじっくりと味わいたい作品でした。

【心に残った言葉】

"It's simple to love someone, but it's hard to know when you need to say it out loud." (p. 149)

愛情を抱くことは簡単だけど、それをどんなタイミングで伝えるのかって重要ですよね。いつでも言えばいいってもんじゃないし、言わなくても伝わると思ってるのは自分のエゴだし。普段、子どもたちに「ママ、僕のこと好き?」って聞かれて「大好きだよ~」って答えてますが、本当に子どもに愛情が伝わるのってそういう時じゃないんだと思います。そんなことを考えさせてくれたひと言でした。

もう1つはちょっとネタバレですので避けたい方は飛ばしてください。

”When you see it in the light, it’s really more of a caramel.” (P.156)

これは考察になりますが、Mirandaは自分の髪にコンプレックスを抱いていて、母親のきれいな巻き毛のレッドヘア(赤毛)とは対照的に自分の髪はストレートで茶色で、ただそこ(頭)に生えてるだけの(つまり何の美も引き出さない)、会ったこともない父親に似てしまった髪、と表現していました。それを終盤、Juliaに「あなたの髪は光が当たるとキャラメル色っぽい」と言われます。この部分、Mirandaは単に「Caramel.」とかみしめるだけなのですが、彼女がどういう心境だったかよく考えてみると楽しいです。私の考察は、キャラメル色というのは赤みがかった茶ですから、母親の髪の特徴を受け継いでいることになるので、彼女にとっては「お母さんに似てる」と言われてるのと同じことだと思いました。母の遺伝子も自分に引き継がれているんだということを再確認できて、母子の絆みたいなものをかみしめたのではないでしょうか。

もう1つの可能性として、どこかに私の読み飛ばしてしまった「キャラメル色の髪」をした男性が出てきていて、「父親の正体が分かった!」なんてことかなとも思いましたが、残念ながらそういう描写は見当たりませんでした。それこそタイムトラベルができれば誰でも父親になり得るんじゃ…と考えるとそれはそれで楽しかったりします。


【訳書情報】

邦題:きみに出会うとき
著者:レベッカ・ステッド
翻訳:ないとうふみこ
出版:2011/4/21 東京創元社

#洋書
#児童書

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