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【創作小説】佐和商店怪異集め「深夜のコール」

ど深夜。
内容は忘れたが、私は悪夢を見て飛び起きた。
目覚めた時に叫んだから、相当嫌な夢だったんだろう。
で。枕元に置いていたスマホに触れてしまい、あろうことか電話をかけてしまったのだ。
榊さんに。何で??
「ちょっと待って!」
寝起きと悪夢の疲れで働かぬ頭と手を必死に動かし、何とかキャンセルする。
でも、コールしてしまったので、かけたことになってしまった。
「あー……」
寝てると思うけど、明日起きたら間違い電話ってメッセージ送ろ……。と、思ったら電話が掛かって来た。榊さんから。え、怖っ……。
深夜だし、悪夢を見た後だから、私の頭はオカルトモードになっている。榊さんじゃないかもしれない。でも、最初掛けたのは私だ。覚悟を決めて電話に出る。
「も、もしもし……」
“すみちゃんか?”
起き抜けみたいな声だが、警戒の色もある。多分榊さんも、私が私であるか疑っているんだろう。当たり前だ。こんな時間に電話とか、軽く怪談みたいなもんだし。
「そうです。すみません。間違えて掛けました……本当にすみません」
夢と現実で精神ダメージが半端ないし、恥ずかしい。動悸もまだ治まってないから、息を変な風に吸って咳き込んだ。最悪。
“本当に間違えただけか?”
咳の合間に聞こえた声は、すっかりいつも通りになっている。やばいやばい。完全に起こした。
「ええ。大丈夫ですから。寝てください。お騒がせしました」
“すみちゃん、”
私は返事を待たずぶち切る。
勘弁してくれ自分……。スマホを放って深呼吸する。だけど、スマホが鳴った。メッセージが届いている。榊さんから。
『気になって眠れねぇんだけど。本当に大丈夫か?』
……ああ、本当に……この人は。
私はもう一度深呼吸して呼吸を整える。
メッセージを返した。
『悪い夢を見て飛び起きた時に、スマホに手が当たったんです。それで掛けてしまったみたいで……キャンセルしたんですけど間に合いませんでした。すみません。本当に大丈夫ですから』
ちゃんと通じる文章だろうか?
夜中に打つ自分のメッセージは、あまり信用出来ない。
少しの後、返信が来る。
『分かった。一人暮らしなんだし無理するな』
改めて恥ずかしい。悪夢見て飛び起きた挙げ句、間違えて電話を掛けてしまった事実が。
『ありがとうございます。忘れてください』
送りながら、涙目になる。
『んな落ち込むなよ。厄払い出来たと思えばいいじゃん。悪夢は人に話すといいらしいし』
それもそうだけど。そうなんだけど……。
というか、内容忘れてるし話してないし意味が無いような。
……いや、今こんなことを考えても不毛だ。
『気をつけます。おやすみなさい』
『おやすみ。次は良い夢見ろよ』
榊さんからの返信を見て、息を吐き出す。
ようやく呼吸も落ち着いて来た。
明日出勤したら絶対からかわれるな、と思いつつ、榊さんが笑ってるのを想像して少しホッとする。正直まだ心細い。またやらかす可能性はある。けど。さっきまでのメッセージのやり取りを開いたまま、私はもう一度眠りについた。

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