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【短編ホラー小説】短夜怪談「廃墟の二階」


ある晩。

暇だったAとBという友人合わせて三人で、廃墟に向かうことになった。普通の家だった場所で、斎廃墟と呼ばれている。行きたくなかったが、AとBに押されての肝試しだ。着いた敷地内も建物内も、荒れ放題。Aが、外階段から二階に行こうぜと、先頭で昇って行く。二階もやはり荒れていた。でも、一階より物が少なかったように思う。一通り見て回り、再び外階段で一階まで戻る。「特に何もなかったな」
「そんなもんでしょ。帰るか」
「あれ、Aは?」
Aは、にこやかな顔で降りて来た。ちょっと気味悪い。
「どしたの」
「なんか綺麗な字の紙見つけた!綺麗じゃね?」Aは、習字の半紙みたいな紙を持っている。今さっき書いたように綺麗な紙、達筆な字。『斎』と一字書かれている。見れば見るほど、説明は出来ないが、違和感を覚えた。結局その紙はAが持ったまま。それ以上は何も無く、皆で帰宅して終わった。

次の日。

昨日のメンバーとは違う友人に昨夜の話をすると、怪訝な顔をされた。
「それ、本当に斎廃墟?」
「そうだよ。何?」
「いや……そこ、平屋の一階建てで、廃墟になる前から二階なんてなかったじゃん。何処行って来たの」
「……」
Aはこの日、部屋中に『斎』の字の半紙を張りつけた後、そのまま行方不明になった。

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