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【短編ホラー小説】短夜怪談「プールサイド」

小学五年生くらいの頃。
プールの授業中、体操着姿の子が一人、バタバタとプールサイドを走り回っていた。足音がうるさく、しかも楽しげにゲラゲラ笑ってもいる。泳いでいる内は気にならないが、随分目立つし先生に怒られないのが不思議だった。
「今日見学してた子、ずっと笑いながらプールサイド走ってたけど何だろうね」
友達に聞いたら、首を傾げられた。
「今日、見学の子は一人もいなかったじゃん。走り回ってる子なんて見てないよ」
他の級友たちも同じ答え。確かにそうだった。点呼の時、先生が見学者無しと言っていたのを思い出す。それ以上何も言えず、その時は黙った。それからも、授業中、プールサイドを走り回る子は現れた。見学者が誰もいない時だけ。走る以外何も無かったが、とにかくやかましいので、水中にいる時間を増やしたのだ。
卒業後、先輩から高学年にしか見えないプールサイドの見学者の話をちらとされたが、答え合わせになるのが急に怖くて嫌になり、ちゃんと聞くことはしなかった。

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