【創作小説】佐和商店怪異集め「守り刀」
榊晃次郎は、どことも知れない真っ暗な道を駆けていた。
何かが背後から追いかけてくる。
捕まってはいけない。それしか分からない。
ひたすらに足を動かす。
真っ暗なせいで、前進しているのか自信がなかった。
やがて、行き止まりの壁にぶつかり、榊は仕方なく立ち止まる。他に進める場所がない。
振り向くと、暗闇よりも真っ黒な何かがいる。
人型のコールタールのような。
ねちゃねちゃ、と、嫌な音がする。思わず後退るが、背が壁に付いてしまった。
顔にあたる部分には、細く裂けた口のようなものが、