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読書感想文 アガサ・クリスティ「ABC殺人事件」

ある日ポアロの元にABCと名乗る人物からアンドーバーで何かが起こるという内容の奇妙な手紙が届いた。ポアロは一応警察に届けたものの、ただの悪戯だと一蹴される。

しかし、ポアロは嫌な予感がしていた。そして予感は的中する。例の手紙で予告されていた日にアンドーバーでアリス・アッシャーという老婦人が殺害されたのだ。

当初はアリスと険悪だった彼女の夫が疑われたが、どうも彼は犯人ではないらしい。

しばらくして、ABCから次の手紙がポアロの元に届く。そして予告通りにベクスヒルでベティ・バーナードが、チャーストンでカーマイケル・クラーク卿が殺害される。

そしていずれの現場にもABC鉄道時刻表が置かれていた。どうやら犯人はAで始まる土地でイニシャルがAの人物を、Bで始まる土地でイニシャルがBの人物を、という具合にアルファベット順に事件を起こすことに拘っているらしい。

被害者間に繋がりはなく、犯人の目星もつかない。そんな中、3件目の事件の被害者の弟であるフランクリン・クラークによって、警察の捜査とは別に、事件の被害者の遺族や関係者で集まって、次の事件に備えようという提案がされる。

ポアロはその提案を受け入れ、各人の事件当時の記憶を辿ってもらった結果、一人の怪しい人物が浮上する。その矢先、第四の事件を予告する手紙が届く。

ポアロは次の殺人を防げるのか?

犯人はなぜアルファベット順に殺人を犯すことにこだわっているのか?

なぜ、警察ではなくポアロに挑戦状を送りつけるのか?

本作を初めて読んだのは小学校高学年の時、青い鳥文庫版でだった。事件の謎やポアロと犯人の対決や明らかになった驚きの真相に心が躍ったことを今でも覚えている。

けれども、同時に私はこの作品を見る度に思い出す苦い記憶がある。当時、友達にABC殺人事件の内容を聞かれた私は、犯人やトリックを話してしまったのだ。

20年近く経った今でも後悔している。どうして私はあの時聞かれるがまま答えてしまったのか。ネタバレはその本を読む楽しみを奪う、本好きとしてあるまじき行為ではないか、と。

この経験から、私は「人に本を紹介する時はなるべくネタバレを避けよう」と心に決めた。noteで本を紹介する時も可能な限りネタバレをしないようにしているのだけど、自分にとって心を動かされたり、琴線に触れた部分を語る上で避けられないと思った時はやむなくネタバレしている。

勿論、ネタバレしても面白さを損なわない本もあるだろうし、ネタバレの仕方によってはその本に対する興味をかきたてることもあるだろう。

ミステリーは意外な犯人や思いもよらないトリックなどが面白さの肝であることが多いと思う。小学生だった私はそれを話してしまった。だから今も悔やまれるのだ。

そんなわけで、ABC殺人事件は私にとって、読んで楽しかったという記憶と苦い記憶が同時に思い起こされる作品である。

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