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20年以上親友だと思っていた幼なじみの不倫、子どもはシッターに育ててもらう宣言、不払いの千円に「もう終えよう」とピリオドを打った話。

読者のみなさんには親友と呼べる存在はいるだろうか。

私はもともと友だちが少なく、狭く深くタイプである。
そもそも心の部分で深く交われる親友が居れば、友人などただ寂しいときや時間が空いたとき、親友が対応不可のときに代打をしてくれる上辺の存在でしかないのではなかろうか。

私が中学生のときに不登校になり、だれとの面会も拒否し、そのうち離れていった同級生たちの中で、ひとりだけ粘り強く私と交流を絶たなかった人物がいた。
社交不安障害のため人と会うことが難しいと説明すると、手紙をくれたのは彼女だけだった。

症状が寛解し、外の世界へ出られるようになったとき遊びに誘ってくれたのも彼女だった。
やがて県外で大学生になった彼女は「マナミがいなかったら帰省する意味ないよ」と言ってくれて嬉しかったのを覚えている。

一足先に就職で私が上京した。
同級生はおろか、家族でさえも私が上京して一人暮らしをするなど考えなかっただろう。
私も考えたことがなかったというのだから。
そして彼女も就職で東京へやってきた。

就活のあいだは私の借りているマンスリーマンションで生活をともにし、趣味であるパチンコで勝ったから〜とジェラピケのパジャマを買ってきてくれたこともある。
私は彼女のために美味しいごはんを用意し、彼女の茶碗から米がなくなった瞬間に「おかわりいる?」と母親のように世話を焼いた。

毎日連絡をとるわけではないが、行きたいところがあったり、互いの誕生日、年末年始は一緒に会って過ごした。

なにより価値観が合う。話をわかってもらえる。それが心地よかった。
家庭の事情と、それで自分がカウンセリングに通っていることもすべて話した。

彼女は理解できる人間だと思っていたのだ。

しかしその中でちょこちょこと嫌な部分が顔を出すこともしばしばあった。

夏に一緒に旅行し、川下りを楽しんでいる最中に突然川へ突き落とされたことがある。私が泳げず、また繊細な気質で突然の環境の変化、つまり”冷たい水の中にいきなり投げ出されることは苦手”と知りながら突き落としたのだ。
初めて落ちた冷たい水の中で私は時間の感覚を失い、気づいたら浮上していた。
しばらく動悸がしてその場に浮かんだまま声が出ず、救助のために泳いでくる彼女が心底恐怖の対象でしかなかった。

また彼女には遅刻癖があった。
どうせ約束の時間に間に合わないだろうと思い、こちらは10分遅れて到着したのだが、彼女はさらに遅れてきた。
これは何回か繰り返され、彼女はそれが面白いと思っているらしかったので「次あったらもうなにも約束しないから」と言い放つと、やっと時間通りに待ち合わせできるようになった。
時間を守れない人間は、他人も守れない。世界は自分の時間しか流れておらず他者の時間などどうでもいい、自分以外に大切なものがないのだ。人を愛せない、かなしい生き物である。

恒例の年末年始では「桃太郎電鉄がやりたい」と言い、Switchで購入した。ゲーム自体は盛り上がったのだが、ゲーム内に詳しい説明がないときがあり、彼女はちょこちょこネットで調べていた。
私は”やっていったらそのうちわかるだろう”派なので、あ、一緒にプレイしている人の許可なく調べる感じなのね、と思っていたが、私もわからないところに直面したので、ネットで調べようとスマホを手に取ると「それは調べたら駄目じゃない?!」と突っ込まれた。

え、そしたらあなたがさっきまで調べてたのも私は許容してたんだけど、と言うと、「なら今からは調べるの禁止にしよう」と言う。
憤るのは勝手だが、なにもルールを決めていないところに突然ルールがあるかのように声を上げられるのは不愉快であった。

そして私はその”桃鉄”の中でなんだかとてもラッキーなカードを手に入れた。
すると彼女は「ゲームバランスを崩すよねこういうの」と言って私がカードを使いにくくするという作戦に出たのである。
気にせず私はカードを使いまくってゴールしまくった。
うんこもめちゃくちゃ落としてやった。

そんななかで私には彼女の理解できない最大の部分があった。

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