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ご近所のクレイジークレーマーと闘った話。最終回。みんなクレイジー。

管理会社をたずねてから数日後、突然のピンポン。
我が家はインターホンがなく、宅配やら来客の予定のないピンポンには急に出ないことにしている。

それでも諦めないピンポンだったので、出ると大家さんだった。

「管理会社の人に少し聞いたけど、あれからどお?」
「いやー、カクカクシカジカで、隣の部屋とつぜんドンドンされて…話を聞いたら、20Aのうちに苦情を出してたくせに、20Bの人だって言うんですよ。玄関の泥除けマットを見て、その犬飼ってる人と同じやつだったから、20Bに住んでるんだろと」

「ええ〜それって完全にここに上がってきてるってことでしょ!近所の敷地内ぜんぶ入ってるのかな?」
「もしかしたら20Bの人に個人的ななにかがあるのかもしれないですし、あの日はたまたま20Bの人居なかったから良かったですが、また来ていきなりドンドンされたら、隣も女性の一人暮らしだし怖いですよ。このアパートに関しては犬なんて言いがかりですし。でっち上げてなにか嫌がらせしたいのかもですし」

「そうだよね〜、とにかく近くの交番に今回の件は伝えておく。あとでその人の家も見に行ってみるよ。20Bの人にも伝えておくから。
そもそも二軒も隣の家に犬の鳴き声が聞こえてるはずないんだから、管理会社には放っておきなさいよって伝えたんだけどね」

「その放っておくってタイミングが悪すぎて直接来ちゃったんだと思います。犬が居ないなら居ないと伝えてもらわないと…うちだけに電話されてもなんの解決にもなりませんよ」
「そうだね〜」

とにかくまた来られたら困るし、不法侵入だから、と我が家からすぐ近くの交番に大家さんが直接相談に行かれました。

数日後、ポストに黄色い紙が。ピーポくんのイラストが描かれている。

「マナミさま。○時ごろ見回りいたしました」

一応周辺の見回りはしてくれているようだ。
さらに数日後にまた一枚、同じメモが入っていた。

変質者出た時はこんなパトロールの紙入れてくれんやったけど、まあとりあえず大家さんに言われて見回りしてるよというアピールなんでしょう。

ピーポくんの、一見笑っているようで、何を考えているのかわからない虚ろな目があさっての方向を見ていた。

そんなこんなで、あれから今のところクレイジークレーマーは来ておりません。
納得したのか、諦めたのか。

その後大家さんと電話をする機会があり、その時にたまたま聞いたのだが、管理会社を通して今度は大家さんにクレーマーから電話があり、直接お話したとのこと。
20Bの人とは会っていないものの、「あのマットは自分が置いたものだ」「あのアパートの2階に夫婦はいない」と大家さんから直接話を聞いたことで一応は納得し、クレーマーも犬の被害にはほとほと困っており、警察にも相談済みだと話したという。

クレイジークレーマーは少々神経質すぎるものの、いちばん悪いのは他人の敷地内に入っておしっこをさせるクレイジー飼い主である。

しかしクレイジークレーマーもまた他人の敷地内に勝手に入り込み、確証もなくとつぜん玄関のドアを叩き始めるのだから、同じレベルではなかろうか。

そしてここまで大事に発展したのは、初期段階でクレイジークレーマーに対して聞き込みや返答をしっかり行わなかった管理会社のせいだろう。
私にだけ「犬飼ってませんか」と謎の留守電メッセージを残し、なんのことやらこちらを数日不安にさせた挙句、相手のクレームに対して真摯に向き合わず、返事もしていないのだからこういうことになる。

更新の時期だかなんだかしらないが、きちんと仕事もできないのなら正直更新料も払いたくない。
アポをとっても誰が来たか分からず、やってほしい、あるいはやるべきことを放棄した管理会社になんのために払わねばならない。
管理会社の動きようによっては未然に防げたことをやりもせず、更新料だけはしっかり取るのだからまったくいいご身分である。
しかしもっと悲しいのは、金を払ってでも屋根のついた家がなければ困るのは己であるということである。

クレイジーなのはクレーマーだけではない。

クレーマーをクレイジーと決めつける私たちも皆狂っている。
私たちは己の正当性を過信している。
傍から見ればあなたもクレイジーかもしれない。
私たちは皆自己の正しさを盲信した狂人である。
まずそこに気づかねばならない。
私はご近所のクレイジークレーマーにたまたま出くわした、いちクレイジーフィメールなのである。管理会社はクレイジー無能。大家さんも呼ばれなきゃ来ない事なかれ主義クレイジー。それ以上でも以下でもない。

この世はだれも皆狂っている。
それに目を瞑ってしまえば、この世は馬鹿と阿呆の集まりである。

私たちは認知しなければならない。自己のことを。

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