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ICEで宿泊(?) 30.05.2024〜02.06.2024 フランクフルト〜ヴィースバーデン〜デュッセルドルフ〜ケルン旅行記 4.

 6月2日日曜日、エッセンのユースホステルにて起床。2段ベッドが2つある4人部屋で、奥側の上段しか空いていなかった。下段でまだ寝ている宿泊客を起こさないように気をつけながら梯子を降りる。隣の2段ベッドの下段では、カップルが仲睦まじく寝ており、微笑ましい。今日はボン19:14発のIC2440に乗ってテュービンゲンに帰宅する以外、特に予定を決めていない。エッセン駅近くのツォルフェアアイン炭鉱業遺産群にでも寄ろうかとうっすら考えてはいたが、当日になってあまり気乗りしなかったので、どこか違う場所を訪れることにした。デュッセルドルフはとりあえず昨日で満足していたので、ケルンにあるケルナー動物園を目指す。
 荷物をまとめて部屋を後にし、キッチンで昨日の寿司の残りと、朝ごはん用に買ったチョコデニッシュ、ヨーグルトを食べる。10時のチェックアウトギリギリまで作業し、宿を後にする。今日もあいにくの天気。友人KとYはベルリンに到着したようだ。晴れやかな空とブランデンブルク門の写真が届く。RE1に乗ってエッセンからケルン中央駅へ向かう。昨日からよく見かけるRRXは、Rhein-Ruhr-Express というらしい。RRXに限らないが、ドイツの電車は座席のほとんどがクロスシートで、日本の電車のような横並びのロングシートは車両の前方、もしくは後方とトイレ脇に限られている。そのため、一車両にそれほど多くの人が乗り込めない。日本の電車は空間を広くすることで輸送効率を高めていると思われるが、ドイツの電車は快適さを重視することで、際限のない効率の増加に歯止めをかけているのかもしれない。列車は再びホーエンツォレルン橋を渡り、ケルン中央駅へと到着した。
 ケルン市鉄18系統に乗り換えて、 Breslauer Platz から3駅の Zoo/Flora駅に到着。ドイツの動物園は、上野動物園のように、都市の中心部から市電などですぐにアクセスできるものが多い。公式サイトで23€のチケットを購入していたので、待機列に並ばずにすぐに入場することができた。実家近くの多摩動物園は大人一人入園料が600円なので、それと比べるとずいぶん高い。貴重な動物を目にすることができる以上、本来はこのくらい支払うべきなのかもしれない。日本の動物園がどのように経営を維持しているのかが気になる。
 昨年、バーゼルの動物園に訪れた際にも感じたが、ヨーロッパの動物園は木をうまく活用している。都市中心部の動物園は、園内全体が平たいので、ともすれば入り口から園内の様子をなんとなく把握できてしまう。しかし、実際は木によって視界が上手く遮られており、先に何の動物がいるのかがパッと見ではわからないようになっている。慣れ親しんだ多摩動物園は、丘陵を活かしたつくりになっているので、自らの足で進まないと次の動物を見ることができない。ちょっとした所に都市部の動物園の工夫が感じられて面白い。
 ケルナー動物園の目玉は、園内の中心部に位置する、インドゾウ広場だ。ざっと数えただけでも10頭ほどのインドゾウが3,4頭ほどで構成されたグループを作っている。これほど多くのゾウが一堂に介しているのを見るのは初めてかもしれない。アフリカゾウであれば、一個体のスケールがより大きいので、多くの頭数を揃えるのは難しいだろう。大人だけでなく子ゾウもおり、母ゾウと思われる個体に付き添われながら木の破片で遊んだりしていた。色々な動物園でゾウを見てきたが、群れでの振る舞いを観察できる機会はそうそう無かったので、20分ほど足を止めて眺めていた。
 ネコ科の動物を多く見ることができたのも嬉しかった。ユキヒョウは多摩動物園でも見ることができるが、自分が行く時は暑さのためか元気に活動している姿をほとんど見たことがなかった。ケルナー動物園では岩山を模したかなり広大なスペースにおり、運が良かったのか元気に歩き回っている姿を見ることができた。改めて見てみると、夏が近付いているにもかかわらず、分厚い毛皮に覆われている。また、尻尾の長さにも目がいく。急峻な崖の上り下りを繰り返すためのバランス感覚が、あの尻尾によって支えられているのかもしれない。ユキヒョウにとって日本は暑すぎるかもしれず、ドイツの方が合っているのだろう。
 ジョフロイネコという、見た目といいサイズといいネコそのものな南米の種も初めて見た。あまりの可愛さに、しばらくガラスの前で立ち止まって眺めていた。ぱっと見でオセロットに似ていると思ったが、やはりオセロット属のようだ。南米に生息している点も同じなので、かなり近い種なのだろう。とにかく目が大きく、顔の半分ほどあるように見える。細い木の上を器用に歩いており、熱帯雨林に適応しているのがひしひしと感じられる。
 水族館や爬虫類・両生類館、昆虫館が併設されているのも良かった。四方を海に囲まれた日本では、水族館はありふれているが、北にのみ海があるドイツでは、単体の水族館は珍しいのかもしれない。ドイツで見られる身近な淡水魚から、南方の海水魚まで幅広く展示されていた。昆虫館ではマダガスカルゴキブリが狭いケースの中に大量に展示されており、壮観だった。ドイツの人々は、あまり毛嫌いした様子もなく観察しているようだった。ドイツにはゴキブリは生息しているのだろうか。北海道民にゴキブリを見せても、興味津々で嫌がらないというテレビ番組を思い出した。2時間程度時間を潰せればいいと思っていたが、想像以上のボリュームと展示内容にすっかり時間を忘れてしまい、4時間ほども滞在していた。動物園は楽しい。これからドイツ各地の動物園も回ってみようと思う。
 再び18系統の市電でケルン中央駅に戻り、ボンへ向かおうとする。乗り換え案内によると、中央駅から向かうよりも Köln Süd からの方が早いようなので、市電で移動し、そこからRE5でボン中央駅に向かう。この時点で、ボン発の帰りの電車が既に1時間ほど遅延していると通知が来る。ボンへ向かうRE5も、途中でDB名物謎停車をかましていたが、気長に運転再開を待つ。帰りの電車はじりじりと遅延時間を延ばし、ボンに到着する頃には2時間ほどの遅延になっていた。夕飯はテイクアウトのサンドイッチでもIC車内で食べようかと思っていたが、たっぷり時間があるようだ。以前も利用したボン中央駅内のマクドナルドで、チーズバーガーセット5.99€を注文。前回と同じように、またバーガーが2つついてきたので、得した気分になる。
 遅延時間を考えると、既にシュトゥットガルトからテュービンゲンへの終電に乗るのは絶望的だ。こういう場合、DBのアプリが代替手段を教えてくれることもあるようだが、今回は代案はなかった。とりあえず、これ以上遅延することがないように祈りつつ、シュトゥットガルトに出るしかない。2時間強の遅れを持って、ようやくIC2440が到着。かっ飛ばしてくれよ、と願いながら、一路シュトゥットガルトを目指す。
 祈りは虚しく、遅延はどんどん重なっていく。もはや今日中にテュービンゲンに帰る望みは薄く、これから予約できるホテルも無さそうだ。もはや焦りもない。列車内で日付が変わり、0時半頃、シュトゥットガルトに到着。帰る術を失った乗客たちが、DB窓口に一斉に列をなす。宿泊先やタクシーの手配がもしかしたらあるかもしれない。とりあえず、列に並んでみる。コワモテのDB職員2人が対応している。自分の番になり、テュービンゲンに帰りたいが、代替交通手段の手配があるか、もしくは、宿泊先を紹介してくれないかと尋ねるも、どちらもないとのこと。始発が走るまで待ってくれ。では、夜を明かす場所はどこかにあるか。ああ、それならホームに停まっているICEを使ってくれ。
 という流れで、ICE内で宿泊(?)することになった。ICEの中に入ると、既にちらほらと先客がいた。宿泊用なら、普段利用しない1等車で過ごしたい。1等車に入ると、同じことを思っている人が多いのか、そこそこ座席が埋まっていた。空調が効いており、外は肌寒かったが、車内は快適な気温に保たれている。座席もソファのような座り心地で、後ろの乗客を気にしてリクライニングの角度を気にする必要もない。コンセントもあり、充電も可能だ。ICEは思っていた以上に快適な宿なのかもしれない。安心するとすぐに眠りにつき、目が覚めると空は既に明るみ始めていた。ドイツで終電を逃しても、まぁなんとかなるもんだと分かった。同時に、終電ギリギリの電車はドイツでは利用しない方が無難という教訓も得た。

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