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夜行バスで初めてのイタリアへ。28.06.2024〜30.06.2024 ミラノ〜フィレンツェ旅行記 1.

 先日、人生初のイタリア旅行に行った。目的は、フィレンツェでのツールドフランス開幕戦の観戦だ。私は、自分ではロードバイクには乗らない。7年前にテレビでツールドフランスの中継を観た際、フランスの美しい景色を自転車一つで走り抜ける、その旅のような情景に惹かれ、以来観戦のみを続けている。ツールドフランスは毎年コースが変わるが、基本的にフランスのどこかをスタート地点とし、3週間でゴールのパリへ向かうのが通例だ。しかし、今年は特殊なのだ。まず、開幕が史上初めてのイタリアスタート。しかも、パリで夏季オリンピックが開催されるので、ゴールも地中海沿岸のニースになっており、スペシャルなイヤーなのだ。昔からいつか現地でツールドフランスを観戦したいと夢見ていたが、ドイツに住むことになった今、それが現実になろうとしていた。
 レースは3週間、21日間も行われるので、どこでレースを観戦するか、その候補地は多くある。やはり、史上初のイタリアスタートに惹かれ、出発地であるフィレンツェに行くことにした。テュービンゲンからフィレンツェへの行き方を調べると、色々な手段がある。飛行機が簡単そうだが、陸続きであることを活かして、鉄道かバスで向かうのも面白そうだ。値段的には、バスが一番安い。移動であまりお金を使いたくないので、勝手は分からないが、バスを使うことにした。日本にいた時から、ライブ遠征や旅行で深夜バスはよく利用していたので、抵抗はあまりなかった。
 幸い、ヨーロッパほぼ全土をカバーするFlixBusのバス停が、テュービンゲンにもある。しかも、デュッセルドルフを始発とする、イタリアのジェノバへの直行便があるようだ。この路線でミラノに出て、そこから鉄道でフィレンツェを目指すことにした。FlixBusのチケットは、アプリ、もしくは公式サイトで簡単に購入できる。テュービンゲン〜ミラノは29.99 €, 座席を指定しても +2.5 €. 30 € ほどでイタリアに行けるのは驚きだ。思いっきりリクライニングできるように、最後尾の座席を予約した。iPhoneの場合、チケットはウォレットにも登録でき、とても便利である。
 6月27日木曜日、夜11時半に自宅を出発した。陽が出ている時間が長いとはいえ、流石にあたりはすっかり暗闇に包まれていた。テュービンゲンは安全な街ではあるが、この時間に外をほっつき歩くのは少し身が引き締まった。自宅の周辺はひっそりと静まり返っていたが、駅周辺に来るとパーティー後の大学生と思しき子達が楽しそうに談笑している姿を目にした。テュービンゲン駅前のベンチに座り、0時35分発のバスを待つ。駅前のロータリーには複数のバス停があるが、どのバス停にもFlixBusが停まると書かれていない。不安に思い、駅周辺を散策してみると、駅前ロータリーのさらに奥にバス停があるのを発見した。奥のバス停の電光掲示板には、大きくFlixBusと表示されていた。
 バス停には、大学生の集団とおばあさんの先客がいた。会話をこっそり聞いてみると、どうやらおばあさんはジェノバまで向かうようだ。なんて体力のあるおばあさんだろう。年齢的に、なるべく夜バスは避けたいと思っていた今日この頃だったが、気合が足りなかったようだ。時間になってもバスはなかなか来ない。FlixBus公式サイトでリアルタイムで運行状況がわかるので、調べてみた。到着は1時間ほど遅れそうだ。デュッセルドルフからの便なので、無理もない。眠気を堪えながらのんびりとバスの到着を待つことにした。
 一時半すぎに、ようやく黄緑色の2階建てバスがやって来た。添乗員が降りて来て、乗客のチケットと身分証明書を確認していく。遠慮なくイタリア語を使ってくるので、何を言ってるかはさっぱりわからなかった。乗客の列の最後尾に並び、他の人がやっていることを真似するしかなかった。乗車のチェックが終わり、リュックサックをバス後方の荷物入れに預け、中に乗り込んだ。
 座席は一階の最後尾であり、すぐ後ろにトイレがあった。予約画面の図では、座席とトイレの間にもう少しスペースがありそうだったが、実際はひと一人入れなさそうだった。ほんの少しだけ椅子を後ろに倒し、フットレストを上げてなんとか快適に過ごせるようにした。座席の幅は狭すぎるということはないが、決して広いとは言えない。幸い、隣が小柄な女性だったから良かったものの、大きな男性なんかが来たら、とても窮屈そうだ。座席の下部にあるコンセントに充電器を差し、発車を待った。発車直前に、添乗員が再び身分証のチェックに来た。預け入れ荷物の中にあり、すぐには出せないという乗客もいた。それは常に携帯しておかないとダメでしょう。その乗客も特に降ろされるということはなく、バスは1時間20分ほど遅れてテュービンゲンを出発した。
 発車すると、車内はすぐに消灯した。眠れないかもしれないと思っていたが、気温などは意外に快適で、あっという間に眠りについてしまった。3時半ごろ、急に車内が明るくなり、目を覚ますと警察が車内をうろうろしていた。地図を見ると、どうやらドイツとスイス間の国境ゲートにいるようだ。パスポートを提示した後、いくつか質問をされたのだが、ほとんど寝ぼけていて覚えていない。適当に英語で返したところ、問題ないと判断されたようだ。再び就寝。日本の夜バスのように、途中数ヶ所のサービスエリアで休憩することは一切ない。ドイツからスイスに抜けるのだから、おそらくアルプスを突っ切っているはずで、明るかったら壮大な景色が見れるのかもしれない。目を覚ますと外はすっかり明るくなっており、山間部の渋滞に巻き込まれていた。結局、ミラノには予定から2時間ほど遅れ、9時半頃に到着した。
 バス停は、Lampugnano という、中心街から5 km ほど西の場所にある。ここからメトロ1号線に乗り、ミラノ中心街を目指す。ミラノは雲ひとつない晴天で、久しぶりの強い日差しが突き刺さるように照りつける。ドイツから来た民としては、あまりに眩しすぎて順応に時間がかかりそうだ。最高気温も35℃まで上がるようで、一気に夏真っ盛り。トイレに行っておきたかったが、入場に50セントかかるらしい。小銭の持ち合わせがなかったので、小銭確保と腹ごなしのため、バスステーション併設のカフェでコーヒーとドーナツ一つを購入。これで 5.4 €なのでちょと高い。手に入れた50セントでトイレに入ると、ヨーロッパ公共トイレあるある、便座のないタイプであった。このタイプのトイレに出会うたび、男子は立ってすればよいが、女性はどうすればいいのかが気になって仕方がない。
 メトロの駅は、バス停と隣接していた。何度も切符を買うのは嫌なので、改札前の券売機で、一日券 7.6€を購入。英語も対応しており簡単。改札に入ろうとすると、ジプシーらしき女性に切符はいらないかと話しかけられた。ドイツではジプシーを見たことがなかったので、イタリアに来たなと少し興奮するも、もう持っているからと断る。メトロM1系統はモチーフカラーが赤で、丸の内線を想起させた。イタリアの地下鉄はスリがいるとの情報をネットでたくさん目にしたので、電車の乗降口付近には留まらないように気をつけつつ、一路、中心街を目指す。

FlixBusの座席は、身長170cmでこんな感じです


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