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「アゲイン・マイ・ライフ」 - 人々が望むヒーローを体現する熱血検事物語

★★★★+

イ・ジュンギは本当に演技のちょっとした細部がものすごく好きで、平凡な役でも突拍子ないキャラクターでも、行き届いた感じの仕草にグッとくることが多いです。そんな彼の最新作ということで楽しみだったこの「アゲイン・マイ・ライフ」、人としても男としてもカッコいいイ・ジュンギをしっかり堪能できる良作でした。

キム・ヒウ(イ・ジュンギ)は不遇な環境にも負けずに努力で這い上がって大学に入学、司法試験にまで合格し正義に燃える検事となりますますが、追っていた汚職事件の捜査過程で、とある政治家を調べてしまったことによりヒウは謎の男に襲われ殺されてしまうのです。

ところが不思議なことにヒウは意識を取り戻します。奇跡的に自分が生きていることに気づくヒウ…。なんと彼は生き返って大学受験の頃に戻り、再び司法の道を目指すことになります。それと同時に自分に起こったことの真相を突き詰めようと考えるヒウですが、実は予想外のところから彼の人生に結びついていた陰謀。そして最初の人生での記憶、新たな人生での新たな出会いによって紡がれ直されていく物語が導く未来は…。

ウェブ小説が原作で、コンセプトが「生まれ変わって人生をやり直す」だと言われると思いっきりSFなイメージが湧きますが、ドラマ全体のトーンは非常に正統派な勧善懲悪のリベンジ劇(印象はどことなく「梨泰院クラス」に近い感じもありました)。頭脳戦でも殴り合いでもキレッキレなヒウが次々とターゲットを定めて敵を追い込んで行くストーリーがとにかく痛快です。

ヒウは最初の人生で自分や家族を死に追いやった敵と二度目の人生で対峙していくわけですが、ぶっちゃけ生き返って人生をやり直せているのでいわゆる「復讐」がしたいというより、もっと純粋に「弱きを助け悪い奴は倒す!」という気概で挑んでいる感じがミソかもしれません。観ててとても気持ちがいいです。熱血検事という基本設定も相まってヒーローみ増し増しなヒウ。

イ・ジュンギの情に厚い演技がキャラクターの引力を強固なものにしていると思いました。「悪の花」でのサイコパスっぽさ溢れる演技もハマりにハマっていましたが、人間味ある役柄でも充分以上に消化してしまうあたりがやはりやみつきになってしまう役者です。そしてアクションにも定評のあるイ・ジュンギだけに立ち回りシーンも見応えが抜群。チンピラを叩きのめす流れがちょいちょい挟まれるのですが、静と動のバランスが絶妙でテンポよく観られる作品になっています。

敵側の人間関係も複雑で登場人物が多いので気を抜くと誰が誰だか分からなくなりかねないのですが(それで最初脱落しかけました)、悪役キャスト陣は総じて重厚ですし、ヒウの大学同期のギュリ(ホン・ビラ)や不良上がりでヒウに助けられ記者になったハンミ(キム・ジェギョン)といった女性陣もそれぞれ違う逞しさ美しさがある魅力的なラインナップ。財閥の娘であるヒアを演じるキム・ジウンはとてもかわいかったです(だんだん松岡茉優っぽく見えてきました)。

ともすれば続編もできそうな残り香の中で終わっていく物語ですが、全編通して際立つのはやはりヒウの賢さと優しさ。軸がぶれない彼の存在感と、彼によって救われる人々、彼を慕う人々が集まっていく展開に、やはりこれは(変身こそしませんが)ヒーローものと言うべきなのだろうと感じました。しっかり面白く観せてくれる全16話です。


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