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「恋するアプリ Love Alarm Season2」 - ただ愚直に"恋愛"を追求する物語

★★★★+

待ちに待っていた作品が公開されました。シーズン1であんなにも切ない痛みを残して途切れていたジョジョたちの物語がようやく結論にたどり着くシーズン2。話数が少ないのもありますが、配信開始日に一気観してしまいました。

舞台は半径10メートル以内に自分のことを好きな人が入るとアラームが鳴るラブアラームというアプリが大流行している世界。親が残した借金のせいで高校生にも関わらずバイトを掛け持ちしながら親戚の家で肩身の狭い生活を送るキム・ジョジョ(キム・ソヒョン)が、学校にやってきた議員の息子でモデルをやっているソノ(ソン・ガン)、その親友ヘヨン(チョン・ガラム)と織りなす三角関係を軸にシーズン1は展開しました。ジョジョとソノは想いが通じ合い互いにアラームを鳴らすようになりますが、ある事故をきっかけに引き裂かれ、耐えられなくなったジョジョは同級生でラブアラームの開発者であるドックによって自分のアラームが鳴らないようにしてもらいます。ソノのアラームを鳴らさなくなったジョジョと、それでもまだジョジョの気持ちを信じているソノ。そしてずっとジョジョを見つめてきたへヨンという切ない構図のままシーズン1は終了し、シーズン2はその数年後を舞台に始まります。

相変わらず設定の時点でだいぶ勝っているドラマです。好きという気持ちがアプリで分かってしまう。可視化されてしまう。それだけで、恋愛に対する価値観は随分と変わります。自分の気持ちを自分で考える必要がなくなるのです。一方で、つきあっている恋人が自分のアラームを鳴らしてくれない、そんな状況すらある世界。

アプリの仕組みなんて野暮なことは考えてはいけません。気持ちを伝えることは難しく、相手の気持ちを推し量ることはさらに厄介で、そんな中だからこそ自分自身の心を知って素直になれるとき、恋愛は素晴らしいのだと思います。けれどこのラブアラームのある世界では、誰もが自分の好きな相手をアプリで知り、相手の気持ちもアプリで受け取るのです。

アラームが鳴らなくても構わないと言うヘヨンに対して、高校時代と変わらず感情のまま突き進むソノは、「お前の目だけを信じる」とアラームを鳴らさないジョジョを真っ直ぐ見つめます。このふたりの気持ちが刺さっては苦しくて、ときめきというかもう胸が詰まるようにすら感じるのはシーズン1と同じ。独特の中毒性があります。

このドラマは実にシンプルに「恋愛」と「恋愛感情」を突き詰めているので、物語の骨子自体はごくごく普通の三角(ないし四角)関係なのですが、アラームの存在によって当たり前の恋愛すら成立しなくなり、そもそも曖昧である感情が生み出す残酷さが青春に滲み出していく様子はとても美しくすら思えるのです。

どのキャラクターも個性がありますが、中でもやはりソノの存在感は格別で。ジョジョがアラームを鳴らしてくれれば無邪気に喜びますが、それよりも何よりもジョジョと自分の心を純粋に信じ、周りが見えないこともしばしばなので振る舞いは自分勝手になりがちですが、すべてがジョジョへの想いを感じさせる。生まれたての恋愛感情そのもののような人。シーズン1を観たとき、ソン・ガンという役者の印象は本当に強烈に残りました。多くを内包してなお少年のようである姿に、これからもっと観てみたいと感じたのです。

シーズン1でそれぞれ傷を負ったあとの今作なので、みんなが少しだけ大人にもなっていて、感情はより複雑に入り組んでいきます。ジョジョの気持ちは、たぶんもうどちらが好きという整理ができるようなものではなくなっています。なのでこのシーズン2で重要になるのは「意志」。恋愛に限らず、人が人生を進んでいくには感情を踏まえた意志こそが必要なのだろうと思わされました。

なので結末はきっと人それぞれの感想を持つものだと思いますが、ラブアラームのある世界をきちんと完結させてくれる終わり方でした。この余韻は他の作品ではなかなか感じられない気がします。


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