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「太陽の末裔 Love Under The Sun」 - ラブストーリーの絶対正義

★★★★★+

かなりヒットした作品ということは知っていて、友人からもだいぶ勧められていたものの、観始めるタイミングがなかなかなかったこのドラマ。仕事でひと段落ついてのんびり気分が生まれたところで遂に観ました。見事に一気観です。寝不足を厭わなくなる、評判に違わぬ面白さ。

タイトルだけだとどことなくファンタジーな印象を持っていたのですが、まったくもってそんなことはなく、医師と軍人を主役に据え、純粋に愛や命を描いてゆく骨太ストーリー。外国の紛争地域が舞台に設定されている期間が長く、派手なアクションも山盛り。大河ドラマ並みに壮大なスケールで全話を走り抜ける世界観はキム・ウンスク作品の真骨頂に思えます。

人の死や名誉、信念と愛のバランスは多くの葛藤を生みますが、決してシリアスに寄ることもなく、時に軽妙なジョークを交えてメインとなる二組のカップルが手を取り合ってゆく物語はその涙と笑いの塩梅が巧みすぎてやみつきに。

何より、その二組のどちらもが本当に魅力的。優しさとユーモアを兼ね備えた優秀な軍人・ユ大尉と気が強くて出世欲もあるけれど責任感と慈愛ある女医・モヨンは、ジェットコースターのように事件や災害の荒波にさらされ続け何度も離れ離れになりますが、どう考えても惹かれ合わずにいられないぴったりなカップル。想いのブレないユ大尉はとにかく素敵(キム・ウンスクの作り出す男性キャラクターの中でも個人的に最強)ですし、危険に身を晒し続ける彼を受け止める自信がなかなか持てないモヨンは、なんだかんだと彼を拒んでしまったり、でも会えば惹かれてしまい、状況は特殊ですが恋愛のリアリティを感じさせてくれます。

このカップルの味わいをよく感じさせてくれるのは、大地震の現場で、とある人の生死とふたりで向き合うことになるシーン。愛し合う男女として以前に、軍人と医師であるふたりのやりとりは、ある意味とても辛いのですが、奥底に人として互いを尊敬する気持ちがあるからこそ成立するもので、それもここまでの波乱だらけの経緯あってこそなので、つくづく良い組合せだなと思わされました。

そもそもがこのふたり、結構な偶然の再会をするのですが、その際にユ大尉の同僚のソ上士やモヨンの友人医師が口にする「縁がある」「すごい縁」というセリフが地味に好きです。ドラマにはよくある運命の再会ですが、まわりがそれをすごい縁だと表現するのはなんだか新鮮でした。そしてそんなものすごい縁があるふたりだから、最後まで信じて観続けられる気がしました。

もう一組のカップルは、そんなソ上士と彼を追いかけ続ける元カノの女性軍医・ミョンジュ。朴訥としたソ上士に対して、ミョンジュは桁違いの美女(本当にかわいい)であり親も超大物の軍人。いわゆる身分違いみたいな障害にぶちあたり、一度は身を引いたソ上士ですが、一途に彼を想い続けるミョンジュと困難を乗り越えるうち、諦めきれない気持ちを再確認することになります。

このふたりはそれぞれが心底相手を想っていることが一貫して感じられて、でもすれ違い続けてとにかく切ないのです。ユ大尉とモヨンが現代的な恋愛を繰り広げるのに対して、こちらのふたりは古典のような美しい恋愛に翻弄され、そのコントラストがまたドラマ全体をよく引き締めているように思います。

とにかく事件が多いので、息つく暇も飽きる瞬間もなく、あっという間に最後まで。ですがそれだけのエピソードが積み重ねられているからこそ、登場人物たちの心の動きには実に説得力があります。

兵役のある韓国のドラマで描かれる軍人は日常のリアルにもよく馴染むのか、命懸けの厳しさと普通の若者の生活が違和感なく共存しているのも妙味でしょう。日本で言えば海猿的な、他にはない面白さを創り出していました。ユ大尉役のソン・ジュンギはこの役をやる数カ月前に除隊したばかりだったとのことで、そうした地盤の上でロマンスが実によく映えます。

このドラマが一番好きという人もよく見かけますが、確かにラブストーリーを心ゆくまで堪能したいとき、これ以上の作品はないかもしれません。何度も繰り返し観たくなる一作です。

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