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「保健教師アン・ウニョン」 - ポップ・グロテスクで"深夜っぽい"秀作

★★★★

実に何気なく観始めたので、1話の終わりでぽかんとなりました。韓国ドラマではそれまであまり出逢ったことのない、なんというか、テレ東の深夜みたいな雰囲気の作品で、サブカル心に変な方向から刺さる感じの作品。

ヒロインのウニョンは、人の欲望が「ゼリー」のように見える特殊能力を持つ高校の保健教師で、おもちゃの剣や銃でゼリー退治をしながら周りの人々を救っています。そして同じ高校の創立者の孫であり、漢文教師のホン・インピョ(不思議な力に守られててゼリーが寄ってこない&手を繋ぐことでウニョンのエネルギーを充電してあげることもできる)とともに学校を狂わせる地下室の秘密や敵に立ち向かっていくというのが大まかなあらすじでしょうか。

ウニョンは能力のせいで幼いころから孤独に育ってきたのですが、インピョをはじめ、この高校では仲間のような存在を得ていきます。そうした登場人物のキャラクターがことごとく良い。基本的にはみんな強烈なのですが、根がいい子たち、という感じです(もちろん悪ガキもいます)。そんな彼らの青春を毒々しくデフォルメしたようなシーンが随所で鮮烈に心に残ります。

ゼリーの表現はポップかつグロテスク。絶対に「良いもの」ではない感じに溢れつつも、カラフルでなんだかちょっとかわいいので、観ているとゲームの世界にいるような気分になってゆきます。

はじめこそ、次々に出てくるゼリーたちを、その特性に応じて倒していく…みたいな展開なのかと思って漫然と眺めていたのですが、次第に生きている人間たちの思惑もあったり、意外な人物が敵だったり、複雑な様相に陥っていき、完全に狂気に飲まれてしまう学校(その辺の描写も面白い)を前に、ウニョンとインピョンの苦悩は深まるばかり。そして最後の闘いへ…

もはやミステリーですし、ファンタジーですし、相変わらずゼリーはグロテスクですし、でも最後の終わらせ方はなかなか豪快、どーん。いやほんとに、深夜ドラマのテンションです。「なんだったんだこれは…」と思わされつつ、世界観から抜け出せなくなってしまう絶妙な中毒性。全6話なので、とりあえず一旦走り抜けてみて、後から細部を振り返るのにも絶妙な長さです。これはハマる人はとことんハマりそうだなと思いました。

ウニョンのチョン・ユミはのどかなかわいらしい女優さんですし、インピョもナム・ジュヒョクなので穏やかさを全身から発している癒し系のイケメン教師に。このふたりが独特なテンポで紡ぐ掛け合いもまた、ひとつコンテンツとして楽しめる要素でしょう。

原作の小説は未読ですが、もともとがどんな文章で表現されている世界なのか、非常に気になるところです。


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