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「君を憶えてる」 - ひとかけらの人間味を残したサイコパスの表現

★★★+

ビジュアルと設定を見た印象では、天才が難解な事件を続々と解決していくポアロっぽい感じ?と思いチェックしていた作品。実際に観てみるとちょっと不思議な感覚になる独特なドラマでした。

アメリカで刑事司法学部の准教授を務めている天才プロファイラーのイ・ヒョン(ソ・イングク)は、ある日、ソウルで起きた殺人事件に関する匿名のメールを受けとります。そこに気になることがあったヒョンは韓国へ帰国。事件現場へ向かい、チャ・ジアン(チャン・ナラ)が所属する特殊犯罪捜査チームと遭遇します。顔を合わせたジアンはどうもイ・ヒョンのことを知っている様子。ヒョンは流れから捜査顧問を渋々引き受けることになり、ジアンと事件を追うことに。そんな中で連続殺人事件が発生し、捜査とともに新たな登場人物たちが増え、次第に明らかになっていくヒョンの過去、そしてジアンの秘密…。

基本的にはこの「ヒョンの過去」が太い軸となっている物語です。彼は幼い頃にサイコパスのイ・ジュニョン(ド・ギョンス / EXO - D.O.)に父親を殺されています。そしてその際に弟の弟のミンは行方不明に。自分の事件の真相こそがヒョンを動かす原動力なのです。ジアンの言動も明らかにそんなヒョンの過去と結びついており、思った以上に込み入った重量感のある展開に。

一方で捜査や危機を通じて徐々に信頼を深めていくヒョンとジアンのラブストーリーも存在しているものの、これについては若干がんばって入れ込んでいる感もあって必ずしもなくてもよかったかなぁと思わなくもないのですが、ソ・イングクのカッコよさは活かされているので◎。

弁護士役で出てくるパク・ボゴムと法医学者役のチェ・ウォニョンは回が進むほどに重要な役割を担っていくのですが、それぞれに異なるキャラクターでバランスが良く、厚みがありました。

しかしイチオシはD.O.によるイ・ジュニョン!少ない表情の奥に独自の思考回路でものすごく多くの意識が存在しているような、そしてどこかに失ったはずの人間味のかけらも残っているような絶妙な演技でドラマのあり方の指針となっています。惜しむらくは、彼が基本的に過去のシーンにしか出てこないこと。D.O.が全面的に登場する役柄だったらまたもっと違う面白さが生まれていたように思いました。

ドラマの中盤過ぎくらいには概ね真相は見えているのですが、平和を装ってテーブルを囲むシーンがある意味でこのドラマの個性をよくあらわしている気がします。あまり善悪の線引きを明確にしないというか、それ以上に「家族」の概念を重視するというか、とにかく独特です。

キレイに整頓された結末になるわけではないものの、きちんと物語は収束して「観終わった!」と感じられる一本。若手俳優たちの競演も見応えアリです。


▼その他、ドラマの観賞録まとめはこちら。

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