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「ユミの細胞たち」 - 普通の恋愛を斬新に掘り返す、共感で癒されるドラマ

★★★★★

最初に観始めたときは至って平凡な女子の平凡な恋愛の物語っぽさにエンジンがかからず1話で落ちてしまっていたのですが、Amazonプライムビデオに入ったのを機に改めてチャレンジしてみたら、細胞たちの面白さと妙な説得力がググッとツボにハマりました。ユミの恋愛に対するリアルな感性が初めは重苦しく感じたりもしたのですが、それも裏返すと深い共感であり、当たり前のような恋愛模様もこんな紐解き方があるんだなぁと感心します。

同じ会社で働くウギ(チェ・ミンホ:SHINEE)が気になるユミ(キム・ゴウン)。「大韓ククス」と言う会社に勤める彼女は平凡な会社員ですが、7年付き合った彼氏に浮気されて別れた過去から恋愛はすっかりご無沙汰です。そんな彼女の中でてんやわんやしているのは彼女の細胞たち(ユミの中で活動する細胞たちがかわいいキャラクターとしてクオリティ高いCGで表現されます)!失恋のショックで恋愛の細胞は昏睡状態に陥っていますが、感性細胞や理性細胞、食欲細胞、ファッション細胞…様々な細胞たちが一生懸命にユミの新たな恋愛を後押しすべく頑張っているのです。

後輩のぶりっ子女子ルビ(イ・ユビ)が横槍を入れまくってくる中、ウギとふたりで休日に出かけることになるユミ。期待は膨らみますが、当日食事をしながらウギはユミに「自分の先輩を紹介したい」と言い出します。衝撃を受けるユミ。ユミの細胞たちは悲しみの大洪水に押し流されて散り散りになりますが、結局ウギの先輩を紹介してもらうことになり、その先輩・ウン(アン・ボヒョン)に出会うのです。

実に不思議な作品。ユミが展開する恋愛自体はドラマとしては普通すぎるほど普通なくらいで、ライバルが現れたり価値観の相違に苦しむことはあっても必要以上に難しい話にはなりません。ユミやウギに複雑な背景があるわけでもないので想定外のどんでん返しがあるわけでもなく、人物の場面だけだったら本当にシンプルなのですが、このドラマではそれを人の内面の方向に斬新に掘り下げていくわけです。最初に設定を聞いたときは日本の「脳内ポイズンベリー」がよぎったりもしましたが、この「ユミの細胞たち」はとにかく細胞たちの愛らしさが際立っていて、しかも実写とCGを違和感なく組み合わせた完成度の高さが秀逸。

表面だけでは分からないような人物たちの心の動きを巧みに教えてくれる細胞たち。それも多種多様な細胞がいることで複雑に入り組んで、まさにそれこそが人間が恋愛で取ってしまう厄介な行動だったり不可解な反応の由来だと思わされます。途中からはウンの細胞たちも登場するので、普通のドラマだと分からなくてやきもきする相手の胸のうちまでもつまびらかに。なんでもないような些細な行動もそこに至る経緯や裏にある下心が見えたりするのでなんとも言えない味わいが生まれます。

そして細胞たちの活躍はもちろんなのですが、キム・ゴウンとアン・ボヒョン演じるユミとウンというふたりのキャラクターが素朴でとても温かいことで、物語全体がのんびりしたかわいらしい世界に。最近では「マイネーム」の印象が強かったアン・ボヒョンですが、ハードボイルドのかけらもない彼もまた魅力的です。ユミ一筋のとことん優しい彼氏でありながら無意識に自己中なところもあり、人間らしい弱さもたくさん持ち合わせた実際にいそうな男。キム・ゴウンも、いい子だけどヤキモチを焼いたり時にワガママを言うようなごくごく普通の女の子をとてもナチュラルに演じていて、日常を感じさせるとても良いカップルだなあと感じました。

また中盤から登場するマーケティング部のイケメン、バビ(ジニョン:GOT7)の存在も欠かせません。彼女持ちで登場するのでユミとどうこうという立ち位置でもないのですが、ユミがというより、視聴者的にめちゃめちゃ気になります(とにかく顔も言動もイケメン)。制作が発表されているシーズン2にもちゃんと登場するようなので期待感が高まるばかり。

早く続きが観たい終わり方をしているシーズン1ですが、恋愛のひとつのサイクルと、それにまつわる心の行き来を普通のドラマの何倍も深く掘り下げていく濃密な出来上がりで、終始共感の嵐。誰の言動にも単純ではない理由があるのだと思わされ、恋に傷ついた経験を癒してくれるような力があります。愛されるのが分かる、そんな作品でした。

なにせ細胞たちがかわいいのでグッズ展開も充実してます。まさかのヴィレヴァンで買える!

原作コミックはLINEマンガで日本語版が配信されているのであわせてチェックしても面白いかもしれません。


追記:2022年に放送されたシーズン2についてはこちらに。

「ユミの細胞たち2」 - 酸いも甘いも!分かりみが深すぎて沼な恋愛可視化ドラマ



▼その他、ドラマの観賞録まとめはこちら。

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