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「星から来たあなた」 - 食べたいものを全部並べてみたような満足感を

★★★★★

これは人からの勧めで観た一本。言わずと知れた名作です。キム・スヒョンの代表作になるのでしょうか。私はパク・ヘジンが気になって観たというのもありました。

事前に聞いたあらすじは「宇宙人と有名な女優がマンションの隣の部屋に住むことになって恋に落ちる」くらいの内容だったので、正直最初はかなり素っ頓狂なものを予想していました。

ですがこれまた韓国ドラマらしいと言うか、とにかくいろいろな要素を盛り沢山に巧みに撚り合わせ、上等な素材だけで仕上げた幕の内弁当のように一瞬も飽きさせない21話。ラブロマンスを軸にしつつもミステリー要素が物語を推進するスタイルは韓国ドラマの得意分野でしょうか。加えて、何せ主人公が宇宙人と女優なので宇宙人としての問題もあれば女優としての苦労もあり、当然住む世界(というか星)が違いすぎるので、ふたりの恋愛そのものが大きな壁を乗り越えなければならないわけです。

1609年の朝鮮に舞い降りた宇宙人のト・ミンジュンは400年以上もの間、正体を隠してこの地に生きてきました。しかし地球での暮らしも残すところあと数ヶ月なり、故郷の星に帰る準備を進めています。そんな中、マンションの隣にお騒がせで有名な女優のチョン・ソンイが引っ越してきて次々と面倒に巻き込まれることに。初めは迷惑極まりないという感じでソンイを突き放していたミンジュンですが、我儘に見えて実は情に厚いソンイの本質に触れてゆき次第に彼女に惹かれていきます。ソンイもまた、ミステリアスですがいろいろと助けてくれるミンジュンが気になって…。果たして彼は星に帰るのでしょうか。大まかなあらすじはこんなところ。

ジェットコースターのように楽しんで、泣いて笑ってときめいて…脚本家パク・ジウンの、「愛の不時着」に通じる華やかでダイナミックな構成を満喫できる作品です。

チョン・ジヒョンは、紛れもない美人なのにコメディエンヌのような振る舞いもできれば、共感を誘う可愛らしさも、女としての芯の強さも表現できる独特の女優なので、彼女が演じるチョン・ソンイは序盤こそなんだかつんけんしてイラっとすらさせられるヒロインなのに、観るほどに愛しい存在になっていきます。

対するキム・スヒョンのト・ミンジュンは、知的でとっつきづらいのですが、ソンイに絆されて振り回されて恋に落ちていき、でも一貫してシュッとしていて、ついでに宇宙人なので何をやってもスーパーで。これは間違いなくかっこいいわけです。「宇宙人ってどんな設定!」と思って観始めても、女子であれば絶対に心を掴まれてしまいそうなト・ミンジュン。これぞ韓国ドラマの醍醐味かもしれません。

個人的にはそんなト・ミンジュンのかっこよさは認めつつ、最後までソンイを一途に思い続けるパク・へジンのフィギョンがやはり好きです。育ちが良くてちょっと情けない御曹司といった感じですが、最終的には男気があって単純ゆえにとにかくブレない、いい男。パク・へジンのもとに初めはフィギョンの兄・ジェギョン(端的に言えば悪役)役でオファーが来ていたとのことでしたが、結果的にフィギョンでよかったなぁとファンとして思います。サイコパス的な役をよく消化するイメージがあるパク・へジンですが、こんな風に人間味と優しさが丸見えなシンプルなキャラクターのときは、同じ笑顔がまた違って見えます。役者さんはそれが本当に面白い。

とにもかくにも、そんな贅沢なキャスティングとともに、ロマンス・SF・ミステリーの素材をこれでもかと詰め込んで、もうぎゅうぎゅうなのに無駄がない。観終わってみれば「ああ、お腹いっぱい!」と言う満足感が訪れます。韓国ドラマがなぜこんなにも躍進するのか、その理由が見て取れる代表的作品のひとつが、この「星から来たあなた」なのではないでしょうか。


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