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雨の日、たった15分のプレゼント

心を揺さぶられた、たった15分の話です。



今日は朝から雨で、もう梅雨だねえと遠くの友人とやりとりしていた。

お昼すぎ、ふと雨がやんだ頃。
小柄なおばあちゃんがrootsの扉の前に立ち止まってくれた。

roots(京丹後市未来チャレンジ交流センター)
高校生と地域の方々が集い、新たなチャレンジができる居場所。
放課後になると帰宅途中の高校生が集うフリースペース。

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私が立ち上がると足早に去っていく人もいるけれど、今日のおばあちゃんは、じっと本棚を見つめていて。

扉を開けて「こんにちは」と声をかけた。

「高校生がここで自習したり本読んだり、地域の人と企画したりするんです」

「へえ。まあいっぱい本があるのねえ。わたしも高校時代は本が好きで。これは絵葉書・・・?」

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ポストカードにみんなの”やってみたい”ことを書いて貼っている壁も見てくれた。ぜひ中へ、と案内する。

おばあちゃんは「ほんとに、いいの?」と言いながら、でも嬉しそうに、ゆっくりとrootsに入ってきてくれた。


「お嫁に行く前は、着物一着より本10冊がいいって言ってね」

高校時代は今もある近くの本屋さんへ行って、本を読んでいたそうだ。
銀行員をしていたお姉さんのツケにして買ってもらっていたの、と照れくさそうな顔で教えてくれた。

「鴨長明の方丈記、あれは面白かっただわ」

ゆく河の流れは絶ずして、
しかももとの水にあらず。

「ほう、と思ってね。引き込まれただ」


表情がどんどんキラキラしてくる。口数が増える。まるで少女のようで、とってもキュートだった。

「この本棚を見たら、あれもこれも読んだ本を一気に思いだしちゃって。たまたま来たのに、ごめんなさいね。」

何をおっしゃいますか、とっても嬉しい。私はすっかり、壁一面の本棚に感謝していた。

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本を通して、心を通わせることができる。

私は中学生の頃、それこそ無心に行き帰りの電車で本を読んでいたから、おばあちゃんを友達のように思った。

きっと、あの頃に出会っていたら、本の話をたくさんして、面白かった本を交換したりもして、仲良くなっていただろう。


rootsの中をゆっくりと歩きながら、今年大学生になったという遠方のお孫さんの話(とってもすごい青年だった!)や、私の最近の暮らしの話をした。

”やってみたい”の壁の前では、顔をくしゃくしゃに笑いながら「このエネルギーを浴びるわあ」と。
高校生を想って考えた企画だけれど、実はパワーをもらっているのは私たちで、それは一人のおばあちゃんにも届いた。


「ぎくしゃくしている世の中だから、これはとっても素敵な企画ね」

帰り際、さらりとこう言ってくれたとき、ついにずっと堪えていた涙を溢してしまった。

これは、私なりのささやかな抵抗のつもりだった。
自由を諦めない、自分を表現する歓びを味わい続けるための。

「また、来させてね」
おばあちゃんは扉を出ると、振り返ることなく散歩の続きへ。私は一息ついて、あたたかな気持ちをかみしめる。心がぽかぽかしていた。


何のためにrootsをやっているか。

毎朝「おはようございます」と言いながらrootsに入るとき、かならず確かめる。

・主体的であること
・その人自身でいられること
・誰にとっても居場所であること

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人と人が出会うことで、関わりあうことで
信じられる自分を見つけ、希望をもって生きていける。
そう信じているから。

「いつでも私はここにいるので、遊びに来てくださいね」
何一つ迷うことなく、おばあちゃんにこう言えた。

そうだった、ちゃんと私はここにいる。
明日も明後日も、そのために。



キャッキャと笑いあって、心から楽しかった15分間。

雨の日に、とびきりのプレゼントをもらった。
私もいつか、こんなおばあちゃんになりたい。

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(おばあちゃんが懐かしいと言ってくれた赤瀬川原平さんの本)


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#BooktotheFuture
高校生の”わたし”に贈る一冊

rootsの壁一面の本棚には、
全国の皆さんから贈っていただいた
メッセージ付きの本が並んでいます📚
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