初めてバイトをやり遂げた話。【すずの日記】
「明けましておめでとうございます。」
この言葉を、今までにないほど口にした年始だった。
年始の短期間、私は神社で巫女のバイトをした。
正確にいうと、「バイト」ではなく「臨時奉仕者」というらしい。
友達に誘われてやってみたのだが、とてもよい経験になったと思う。
今日はそのことについて書いていく。
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特性に合った仕事内容
今回、一度も休むことなく勤務を終えられたのは、仕事内容が特性に合っていたからだと思う。
まず、短期間だという点。
職員さんも、短期間しか働かない私たちに厳しく指導するということは一切しない。
手の空いた時間があれば楽しく雑談を交わすし、神社に合った言葉遣いや最低限のマナーができていれば何も言われない。
巫女同士でも、みんなで楽しく話すことはしたけど、お互いに踏み込みすぎずに、あくまでも「短期間の関わり合い」という雰囲気が良かった。
次に仕事の内容だが、目の前のことに集中できるのが良かった。
主にお守りやお札をお譲りすることをしていたのだが、参拝者の方が選ばれたものの合計を計算してお金を納めていただく。
お守りやお札の初穂料(値段)は全てカンペがあるので覚える必要は一切なかった。
また、全て100円単位なので計算しやすく、割引等もなく細かい計算は必要なかったし、現金のみなので、バーコード決済やクレジットカードの緊張する操作も必要なかった。
何よりも急ぐ必要のない、ゆっくりとやればいいというのが良かった。
「絶対に焦らなくていいです。間違いのないように、とにかくゆっくりとやってください。挨拶はしっかりと行ってください。急いでやらないといけないようなことではありません。」
事前に何回もそう念押しされていたので、笑顔でゆっくりと慌てることなくできるのが嬉しかった。
あとこれは神社という場所がらもあってか、クレーマーのような人はほとんどいなかった。怒鳴られることのない環境は当たり前に働きやすかった。
嬉しかったこと
嬉しかったことがあった。
ある日の忙しい時間帯も終わり、参拝者の方もまばらになったとき。
年配の男性がお守りをお受けになりにやってきた。
その時私は、窓口の後ろで補充の担当をしていた。
他の巫女さん「お札ですか?お札でしたら、こちらが〇〇神社で、こちらが〇〇神社で
👴(困惑した表情)
巫女さん「お札ですよね?どちらにされ…
👴(耳が聞こえない…と手話)
巫女さん「…?えぇっと…お札は…
耳が聞こえないという手話に気が付いていない巫女さん。
その手話に気が付いた私。
どうしよう…どうしよう…。
筆談すれば…でも紙がない…。
手話…は簡単なのしかできないから、巫女さんと代わったところで私に対応できるかな。
どうしよう…自信がない。
迷った。
自分の手話が相手に伝わるかわからなかったし、何よりも自信がなかった。でも、「耳が聞こえない」という手話を読み取れたのは私だけ。
指文字(50音に対応した手話表現)は全てできるから何とかなるはず。
私「(対応していた巫女)さん、代わります。
『』←手話
私『これが、伊勢神宮。これが、〇〇神社
👴(?!)
『もう1回やって
私『これ、伊勢神宮。これ、〇〇神社
👴『これが、伊勢神宮。これが、〇〇神社ね
私『そうです
👴『一つずつ
私『わかりました
👴『このお守りは同じ?
私『違います。これは、健康。これは、運転。
👴『なるほど。じゃあ、運転
私『わかりました。何色にしますか?
👴『これ
私『青ですか?
👴『青
私『わかりました。
👴『手話できるの?少しだけ?
私『知り合いが難聴で少しだけ
👴『なるほど。
私『3千円です
👴『3千?
私『はい。ちょうどですね。
『こちらお守りとお札です。
👴『あなたと手話でコミュニケーションがとれてすごく嬉しい。本当にありがとう。
私『私もです。ありがとうございます。
👴『ここは何時までやっているの?
私『7時までです
👴『去年は8時までやっていたから。今年は早く来てよかった。
私『なるほど!そうだったんですね…!
👴『本当にありがとう!
私『良い年をお過ごしください!
「あなたと手話でコミュニケーションをとれてすごく嬉しい」
この一言が涙が出るほど嬉しかった。
私の単語しかできないわかりにくい手話を一生懸命に読み取ってもらえたし、私が分かるようにゆっくりはっきり簡単な手話をしてくださった。
「このお守りとこのお守りは同じ?」「何時までやっているの?」と聞いてもらえた。
普段なら、気になっても聞けなかったかもしれないことを、気軽に聞いてもらえたのが嬉しかった。
こんな私でも誰かに「ありがとう」と言ってもらえた。
使う機会も分からずに、純粋な興味で学んでいたことが役に立った。
興味を持ったこと、好きなことを周りに何と言われようとことんしていこう。
意味の無いように思えることも役立つときは必ず来る。
大事なこと
「愚痴を言える」ということはとても大事なことだと思った。
今回、友達に誘ってもらったということもあり、勤務日がかぶっている日に帰りにカフェに行ったりした。
そこで、その日あった「嫌だな」と思った出来事を話したり、逆に友だちが「嫌だな」と思った出来事を聞いたり。
お互いの失敗を話したりして、かなり心が楽になった。
私は何か起きると、
「全部自分が悪い」
「こんな失敗をするのは自分だけだ。ダメな人間だ。」
と思ってしまう。
でも、友達と話したことで、
「そういうことが起きたら嫌だと思うよね~」
「失敗してるのは自分だけじゃないんだ」
そう思うことが出来た。
私がうつ病になったきっかけでもある大学生活。
コロナの影響で入学したのにいつ始まるのか分からない授業。
突如始まったオンライン授業。
不安でいっぱいで、オンライン授業で課題に追われているのは自分だけだと思っていた。
人と会うこともできなくて、孤独だった。
もしあの時、友達に何か愚痴を言っていたら…
「いつ授始まるのか分からなくて不安だね~」
「オンライン授業って課題めちゃくちゃ多いね…」
その一言を話して共有しあえていたら…
愚痴を言うのが苦手だった私は、感情を一人で抱え込んで、倒れてしまった。
愚痴を言えること。
愚痴を言える相手がいることは大切だ。
そして、そんな風に愚痴を言える相手になりうるのは、同期や同世代の人だろう。
これもこの短期バイトで学んだことだが、同世代の人とコミュニケーションをとると、私の対人関係上の問題が露呈する。
コミュニケーション能力の改善もしていかないといけない。
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色々と学べて、課題も見つかった短期バイトだった。
何よりも最終日まで休むことなくやり遂げられたことが嬉しかった。
今回学べたことを次へのステップアップへと繋げていきたい。
心をぽかぽかさせるために使わせていただきます☺️