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うっかり罰金300万円 中国広告の要注意表記【最】

2003年のある日、中国現地にて取り引きしていた、日系企業のクライアントからクレームが入った。

「文章内にまずい表記があり、工商局から指摘され罰金20万元となった。紙面制作を担当した御社にも原因が無いわけではない。罰金の半額を負担してもらえないか」

中国の広告法には、使用を禁止されている表現方法が、予想以上に細かく定められている。中には日本では当然のように使用されている表記もあり、うっかりしていると罰金20〜100万元となる。場合によっては現地法人が吹っ飛んでしまう金額だ。

自社のパンフ、カタログ、広告、Webサイトは大丈夫ですか?今回はうっかり使ってしまいそうな、禁止表記についてお話しします。


当社オリジナルの最適な商品が大NG

先述のクレームは「独家」と「最適」の二箇所が、中国の広告法に抵触していたのが原因だった。だが今回の案件は先方支給の原稿で作成し、先方自身で校正を行い校了となったため、こちら側には責任が無い。そのため罰金の半額負担はお断りしたが、作成側の立場としてアドバイスできる程度の知識は身につけておかなくてはと実感した。

「独家」は「我が社だけ」という意味にあたり、日本では「当社オリジナル」や「他社では真似できない」のようなニュアンスで使用するが、これが独占的表現にあたるのでNGとなる。

「最適」は日本語と同じ「最適」の意味にあたる。安易に「最も適している」と表現してしまうと、調査や裏付けもなく他社製品より優れているという意味にもとられ、これもまたNGとなる。

このように独占的表現や最上級表現は特に注意が必要である。


最も注意が必要な【最】の字

問題表記で最もうっかりしやすいのが、まさにこの「最」の字である。八兵衛もびっくりするぐらい、みんなうっかり使ってしまう表記で、これにはご隠居も黙ってはいない。

以下が中国の広告法で使用が禁止されている表現である。

最、最佳、最具、最、最、最、最秀、最好、最大、最大程度、最高、最高、最高档、最奢侈、最低、最低、最低价、最底、最便宜、尚最低价、最流行、最受迎、最尚、最聚、最符合、最舒适、最先、最先、最先科学、最先加工工、最先享受、最后、最后一波、最新、最新科技、最新科学、など

「当社取り扱い製品の中で最低価格」
上記のように、範囲を自社内のみに限定した使い方であれば特に問題はないが、念のため「最」の使用はなるべく避けるようにしている。トラウマなのだ。

「最上川」
固有名詞はもちろんOK。


言い換えで危険回避

今回は便宜上日本語を用いて説明を行う。

手っ取り早い回避策としては、そのまま「最」を省くだけである。
最高級  → 高級な
最低価格 → 低価格
最優秀  → 優秀な
上記のように「最」を省くだけでは文章がおかしくなる場合は、言い換えが必要になる。
最適な → 適した
最新の → 先進的な
最大限 → 精一杯の

このように該当文字の削除や言い換えを行い、中国語文章作成者に修正依頼をかけ、上がってきた文章を紙面に反映させる。その際にはクライアントに文章変更許可をとるのだが、中にはなかなか首を縦にふらない方もいらっしゃる。そんな時は罰金20万元を唱えるのだ。イオナズンぐらいの破壊力がある。

この他にも「第一位」や「万能」など、さまざまな禁止表現のジャンルがあるので、また別の機会に掲載したいと思う。


冒頭の案件の罰金20万元、その後どうなったのか聞いてみたところ、工商局の担当者に接待を行ったら、罰金3万元にディスカウントされたとのこと。値引き方が最強最大で最優秀接待が最高に効きすぎである。

※内容は2019年時点での資料を元に掲載しています

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