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【先輩インタビュー Vol.2】日本精工株式会社 野田 拓希さん(2021年卒)

「先輩インタビュー」シリーズの第2弾となる今回は、野田拓希さんにインタビューをさせていただきました。野田さんは2021年に埼玉大学大学院理工学研究科機械科学系専攻 制御工学研究室を卒業され、同年に日本精工株式会社技術開発本部に入社されました。現在は新領域開発センター技術開発第一部に所属しています。我々は野田さんに就活や学生時代について様々なことをお聞きしました!
 
野田さんが勤務している日本精工株式会社(NSK)は、機械の「回転するところ」に必要な「摩擦を減らす」重要部品である「ベアリング(軸受け)」を製作しています。日本に限らず、世界においてもトップクラスのシェアを持つBtoB(Business to Business)の会社です。創業105年の歴史を持ち、日本で初めてベアリングを量産しました。企業理念として、「MOTION&CONTOROL」を掲げ、様々なものを様々な形で動かし、世界とつながりつつ社会に貢献しています。

日本精工株式会社HP
https://www.nsk.com/jp/


プロフィール

野田 拓希さん Hiroki Noda | プロフィール
日本精工株式会社 新領域開発センター技術開発第一部
2021年3月、埼玉大学大学院 理工学研究科卒業

2019年3月、他大学工学部 機械システム工学科卒業。主に機械学習を用いた画像処理における自動車の検出についての研究を行った。大学院では、制御工学研究室に所属。主にジャミング現象を用いたポリイミドフィルムで構成される可変剛性要素の研究を行った。日本精工(株)に入社後、新領域商品開発センターにおいて研究・開発職につき、主力製品である軸受・自動車部品とは別の5~10年後の事業化を目指した製品開発を行っている。

将来を見据え、バイトをしていた学生時代

― 埼玉大学に来た理由を教えてください。
私は機械系を研究したいという気持ちがあって埼玉大学に入学しました。学部は違う大学で情報系(プログラミング)を専攻しており、機械学習に関係する研究をしていました。そこで機械を触ってみたい、ハードウェアの方に進んでみたいという想いが高まり、大学院から埼玉大学理工学研究科機械科学系専攻に入学しました。制御工学研究室を選んだ理由は、制御系というのはどんな機体にも必要なものであり、制御しないものは動かない。いくら良い機構があったり、いくら良い製品のセンサーがあったりしても制御できなければものは動かないというところで制御系に興味を持ったからです。モノづくりがしたい、機械を触りたいという気持ちが一番強かったですね。これが埼玉大学を選んだ理由です。

― バイトやサークル活動など、どのような学生生活を送られていましたか?
今振り返ると、入れば良かったかなと思うこともありますが、サークルや部活には入っていなかったですね。高校卒業から社会へ出る前に何がしたいかを考えた時、私はお金を稼ぎたいと思いました。お金を稼いでこそ社会人という考えがあったので、社会人になる前から色々なバイトを経験してみようと思いました。また、大学院に進学する考えもあったのでその授業料も貯めたいと思い、バイトを始めました。なので、結構バイト三昧だったと思います。大学院進学後もバイトを続けていて、特にその2年間は忙しかったですね。昼間は大学へ、夜はバイトへ行って、修士論文の期限近くになるとバイトが終わった後に大学に行ってデータをまとめたりしていました。サークルや部活に入っていなかったことで、同じ大学の人と接する機会を失ってしまったかなとも思うのですが、バイトを通して、他大学や、年上の人と関わることができたので、結果的には良かったと思っています。忙しいながらも楽しい学生生活を送っていました。


インタビューに答える野田さん

― バイトの経験が就活に役立ったことはありますか?
バイトで磨かれた対人スキルが役に立ちました。対人スキルは、人と喋ることが苦手な人でも、バイトを通してお客様、バイトの同僚、あるいは上司などの様々な人と接することで身につくスキルだと思いますね。あと、学生のうちにお金を稼ぐ大変さを知る経験も重要だと思います。その経験が、将来楽をしてほどよく稼ぐのか、一生懸命働いて家族を養える分のお金を稼ぐのか、など自分の将来をどうするのか、どうしたいのかを考えるきっかけにもなりました。

― 学部生の時から大学院へ行くためにバイトをされていたというお話でしたが、大学1年生から大学院を目指されていたのですか?
具体的には1年の学年末ぐらいから、将来を見据えて大学院進学を考え始めました。元々理系の大学院進学率が高いことから、大学院進学を意識しており、また姉が理系で既に大学院に進学していたことも影響しました。
このまま学部を卒業して就職したらどうするのか、それとも大学院に行くならどうするのかという考えを1、2年生のうちから持っておき、そのためにはどのような行動が必要かを考えることが重要だと思います。

野田さん流自己分析 「自分のこれまでの人生を振り返ってみてほしい」

―  まず就活の第一歩として自己分析が挙げられますが、自己分析のやり方について教えていただけますか?
自己分析ツールを使うなど、人によって様々な方法があると思いますが、私が1つやって欲しいと思うのはツールなどに頼らずに、過去の自分を一回見つめ返すことです。例えば中学校ぐらいから思い出して「あの時学級委員やってたな」とか、「あの時受験したけど、どうやって学校選んだかな」などと振り返ってみてください。その中で「あんなことチャレンジしたな」とか、逆に「あそこは全然何もやってないや」などと、自分はどういう人間なのかを思い返してみるんです。そして「あまり積極性はなかったけど、客観的に物事を見て、自分なりに考えを持って、行動してたかな」というように、自己分析してみるのは重要だと思います。そこで注意してほしいのは、悪いように捉えないことです。「自分は全然何もやってないや、ただ単に遊びほうけてたわ」などと、マイナスに捉えるのではなくて、遊びほうけていたとしても、「自分でちゃんと計画を作ってやっていた」とか、「色々やりたいことをやって、挑戦していた」とか、前向きに捉えて欲しいんですよね。自分の悪い面は知っておいた方がいいですが、マイナスで捉えてしまうと、就活が嫌になりかねないので、プラス思考で自己分析することが大切だと思います。
就職する上で、会社が知りたいのは「あなたはどのような人物なのか」ということです。それを伝える場が就活の試験だったり面接だったりします。でもその場面で、自分が自分自身のことを知らないと意味がないし、伝えられないですよね。例えば、バイトの経験をアピールする時は、どのようにバイトをしたのか、どのような考えを持ってバイトをしてたかを考えることが大切です。私だったら、「大学院2年間のお金を稼ぐためにバイトをしましたが、ただ単にバイトをするのではなくて、自分が興味のある仕事を選んでバイトして、そこでこういうものが得られました」というように伝えます。
 
― コロナ禍での「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」について、どのように工夫されましたか?
最近コロナの影響で、「ガクチカが書けないです」という学生をテレビなどでよく目にするのですが、自分の人生は大学の4年間だけではないですし、コロナ前の人生もあったわけですよね。確かに思考がしっかりと確立してきた大学生の時にやったことはすごく重要ではありますが、その前から自分がどのように行動してきたのかを振り返れば、ガクチカって書けないわけではないんです。むしろコロナ禍でも、大学4年間で力を入れてきたことは十分書けると思います。例えば、家でゲーム三昧だったら、ゲーム三昧でいいですし、何か興味を持ってやってきたものの中からピックアップして、それをマイナスではなく、プラスに捉えて、ガクチカを書くという方法があります。


ガクチカの工夫について質問する嶋田

― 何か就活に向けて取得した資格はありますか?また、資格は就活においてどのくらい重要だと思われますか?
私の場合、就活のために取った資格はないです。強いて言うのならTOEICぐらいですね。資格はあればあっただけアピールポイントにはなります。企業側からも頑張ったねって言われます。しかし、それだけで終わってしまいます。就活に向けての資格は、企業によりけりですが個人的にはあまり必要ないと思います。弁護士などの例外はありますが、資格がいっぱいあったからといって、就活に役立つかどうかと言われたら、全然そうではありません。それよりも、資格をどういう目的で取ったのか、この資格はどの会社のどういうところに活かせるのかの方が重要です。
とは言え、大学は4年間ありますから、興味を持ったら積極的に勉強して資格も取ってほしいなと思います。資格取得に向けて行った努力は、何かしら役に立ちます。なので資格を取りたければ、自分の好きなように興味のある資格を取ってもらいたいです。就活のためだけに資格を取るのではなく、それよりも先の将来を見据えて資格を取る方がいいと思います。

アンテナ高く行動し、情報を蓄積していた就職活動

― 現在の企業に入社しようと思ったきっかけは何ですか?
私は自動車に興味があったので、就活前から自動車メーカーや自動車部品メーカーでの就職を想像していました。その際にもNSKを知っていましたが、実際就活で受けてみようと思ったのは、修士の1年生の時ですね。東京大学で精密工学会主催の就活生向けの会社説明会がありました。そこで「あっそういえば、NSKって自動車部品メーカーだったな」と再認識し、説明を聞いて、「面白いな」と思い、採用試験を受けたという流れです。加えて、その時のプレゼンテーションがすごく上手だったことも入社の決め手の一つです。
 
― 就活する際には他の企業の候補はありましたか?
初めから自動車関係企業に限らず、鉄道業界や重工業系、自動車部品メーカー、完成車メーカーのセミナーや合同説明会に参加していました。
私は、修士1年生になってから就活するんだから、大学3年生の時に少しでも体験しておこうかと思って、今後の情報収集のために、セミナーや企業の合同説明会へ行き、面白そうな会社がないかなと様々な業界で探しました。大学3、4年生のセミナーで興味を持った企業を、修士になってから振り返ることができたので、それから色々な企業をエントリーしました。また、修士1年の時にはインターンシップの話も来るので、そこで社名を知らなかったら調べて興味を持った企業もありました。
大学院へ進学する人は、就活しない学部生の時でも、3月になると、いや応でも就職関連の話は先輩やニュースから聞くので、その時から合同説明会などに参加してみるのもアリだと思います。そこで情報収集して、会社を知ってみたり、業界を知ってみたりするのもおすすめです。
 
― 修士の専攻が機械系ということで、機械系の企業に絞って就活をされましたか?
元々機械に興味があり、機械系専攻から機械系の企業に進んだのですが、就活時は視野を広げて活動していました。専攻が機械系だから就活も機械系で、と絞ってしまうのはもったいないと思いますね。私は機械メーカー以外にも、医療機械メーカー、土木系、鉄道や高速道路を作っている会社などいろいろな企業を調べました。理系だと理系に縛られがちだとは思いますが、就活では一旦そのような枠は取っ払って、広い視野で就活をすることによって、自分がどういう仕事に就きたいのか定まってきます。
最近は転職を良しとする風潮にはなっていますが、やはり一回勤めると、定年退職するまで勤めるのが日本企業の昔からの文化ですから、一生に一度きりの就活だと思って広い視野で就活をしました。
 
― コロナ禍での就職活動について教えてください。
私の頃は会社説明会がなくなったこともありましたが、学部時代から就職を念頭に置きながら行動していたので、困ることはあまりなかったです。しかし、いきなり就活を始めようにも「合同説明会がなくなった」と、嘆いてる研究室の同期もいたので、そういう面でも学部の頃からアンテナを張って、緊急時でも動じない情報を蓄えておけば困ることは少ないと思います。ぜひ、学部の時から自分の将来設計を立ててもらえればなと思います。
 
― 実際に企業に入社してから感じたギャップはありますか?
NSKと言うと軸受けが代表的な製品です。あとは自動車部品ですね。しかし、私の配属先は新領域商品開発センターでは、軸受けや自動車部品の製品開発ではないという点に一番ギャップを感じました。でもそこでマイナスではなくプラスに捉えると、経営状況が良くない企業は新領域の商品にお金をかけることすらできないので、この会社は新領域の商品にお金をかけられる会社なんだと思いました。商品開発に投資して、会社を持続させていこう、そして社会に貢献していこうという意思が感じ取れて、納得して働き始めることができましたね。
社会人と学生とのギャップとするならば、お金の話です。この研究機械は何千万円、この製品は何億といったお金の桁に驚きます。大学の研究室レベルだと50万円や100万円の顕微鏡でも高いと感じてしまうのですが、会社だとここの研究開発費が数億だとか、君のプロジェクトは何億円のお金を投入してるからと言われ、桁が数桁違うことに一番驚きましたね。大学と企業では、こんなにお金のかけ方が違うんだなと思いました。
また、社会人になると、利益も重要になります。失敗しても良いのですが、何かしらの成果をもって、会社・社会の利益にならないといけないので、そういうシビアなところにもギャップを感じました。


社会人と学生とのギャップに驚く矢作

学生へメッセージ 「たくさん遊び、様々なことを経験してほしい」

― 英語の重要性については、どのようにお考えですか?
英語は学生のうちに、もうちょっとやっておけば良かったなと、今思っています。社会人になってからやろうとしても基本的には土日しか自由時間はありません。NSKはグローバル企業ですから英語は絶対必要です。自分が入りたい会社がグローバル企業であるならばTOEIC は必須です。
一方で、TOEIC と英会話は若干違うんですよね。TOEICの勉強を通して、文法的な解釈だったり、聞いたり読んだりすることはできるようになったとしても、喋ろうとすると出てこなかったりして、そういう難しさがあります。埼玉大学は英語教育開発センターやサークルで、英語を話す場所はあると思うので そのような機会を活かして、英会話を練習してみるのも必要かなと思います。
とは言え、就活では、どの会社でもほぼTOEICの点数を記入するので、まずはTOEICですね。また、就活の試験にも英語は出てきます。英語で面接をする企業もあります。社会人になると時間がないですから、学生のうちにやっといた方が良かったかなと思います。
 
埼玉大学で無料で英会話の練習をしてみたい方はこちら↓(埼玉大学学生向け)
http://www.saitama-u.ac.jp/ceed/erc.htm
 
― 最後に、学生へのアドバイスをお願いします。
学生のうちは遊んでおいてほしいですね。社会人はお金が入りますから、学生ではできない遊びもできるようになりますが、学生は時間がある分たくさん遊んでもらいたいです。そして、ただ遊ぶだけではなく、そこでいろんな経験をしてほしいです。ただ遊んでるように見えてもつながってきますから。例えば、海外旅行が好きなら、英会話が得意になったり、海外ならではの経験をしたりしますよね。車が好きなら、こういうドライブによく行きます、こういう車の機構を知っていますとか、そういう知識やスキルが遊ぶことによって得られると思います。なので学生のうちにたくさん遊んでもらって、色々な経験をしてもらいたいかなと思います。
あとは遊ぶだけでは就活で困りますので、アンテナを高く持って欲しいと思います。何事にも興味を持つことは大切ですが、まずはニュースを見て、今はこういう社会情勢なんだな、だからこんな事件が起きたんだなと、社会の流れを知れると良いと思います。遊んで、経験して、かつ情報はちゃんと収集して欲しいです。学生だからこそできるんじゃないですかね。社会人になれば社会情勢などはいや応でも知ることになりますが、学生からその癖をつけておくのもアリかなと思います。会社では授業で学ばない情報が当たり前として社内に広がっています。なので何も知らないと本当についていけません。でも、ちょっとでもニュースを見ておけば、ちょっとでも新聞を読んでおけば分かるような情報ばかりです。そんなに難しい情報ではないです。自分の進みたい道にもつながると思うので、学生時代から色々な情報を集めていただきたいと思います。自分の興味のある情報で十分です。車が好きなら車関係の知識だったり、医療機器が好きだったら、医療系情報だったりとか、なんなら遊びでもいいんですよね。ゲームが好きだから、あのグラフィックボードが良いとかそういう情報、知識です。
繰り返しになりますが、まずは、遊んでください。そして、一番は社会情勢に関連した情報ですが、それ以外にもアンテナを高くして色々な情報を蓄積して、就活に臨んでいただければなと思います。

―ありがとうございました!

インタビュー日:2022年3月30日
 
執筆:工学部 2年 嶋田圭悟
           矢作大河  
編集:キャリアセンター


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