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映画&小説感想「ふたつの『ハケンアニメ!』を堪能して」

5月に映画館にかかっていた「ハケンアニメ!」を観たあとで、そのすぐ近くの本屋さんでゲットした小説の「ハケンアニメ!」と、その世界観で描かれたスピンオフ作品「レジェンドアニメ!」を今日、読了致しました。

映画「ハケンアニメ!」は、アニメ制作の現場と、そこで仕事をする監督やプロデューサーを主軸に小説の「ハケンアニメ!」からリスペクトをもって再構築された作品。映画化するにあたり、リアル世界と、作中アニメを構成しなければならないことから、自分の作品の中で一番難易度が高いと、原作者の辻村深月さんも認めておられたのを、どこかの記事で知りました。

映画のキャスト&スタッフチームに加え、アニメシーンもちらっと出てくるシーンだけのために、本当のアニメを作る方法と同じだけの手間を担当するアニメ側のスタッフと、関わるひとたちも膨大なチームとなって作られた映画「ハケンアニメ!」は、同時期に映画館にかかっていた「シン・ウルトラマン」や「トップガン・マーヴェリック」に押された日本実写映画の悲哀に始まりました。

かなりのお金と労力をかけ丹精を込めて作られた内容なのに、地味なお仕事ものという表層と、ゴールデンウイークのあとの5月下旬というお休み需要のない公開のタイミング、宣伝方法がアニメ界や関わったクリエイター側からの地道な推しだったために、テレビから入るようなライトユーザーや一般人への伝播力が少なかった、などと推測されることから最初の観客動員数が少なかったようで(確かに私が観に行った時も、『いい映画がこの席数の空きはマジでもったいねぇ~』って思ってました……)。

あっという間に全国規模だった映画館数は、次々と規模縮小へ移ってしまいました。しかしながら、何かを作ったり表現したりするクリエイターや、お仕事ものとして強い共感と感動を覚えたひとたちによってツイッターなどでいい作品だよと広まっていき、映画館で全国にかかっていた時期は、特に地方の地域では非常に短くなってしまったものの、映画館での公開終了後もファンに推され、原作小説のGoogleユーザー評価は9割以上がGoodと言い、ネットの映画レビューサイトでもほぼ4つ星が付くという快挙。奇しくも映画の「ハケンアニメ!」で描かれていた、同時間帯に放映されるアニメで人気が出るのは何かという勝負のストーリーにも重なるような、スカッとする結果に現実世界もなりました。

だがしかし。私は映画から小説へと推しを拡大したほうですが、逆に昔から小説原作を推していたひとたちには、原作と映画との大きな乖離にとまどった場合もあったようなんですね。

個人的には、映画作品の「ハケンアニメ!」には原作への強いリスペクトが感じられて、映画ゆえのダイナミックさと分かりやすさを存分に使うためのストーリーラインの再構築、本当の現場をより魅せるためのフィクション性、それらを好ましく思っています。

が、原作の後半で展開する登場人物の神絵師「並澤和奈なみさわかずな」たんの大活躍が、ばっさり無くなってる! と小説のほうを読んで思ったので……映画ではメインキャラクターが4人にしぼられたために、小説では群像的な主人公として描かれていたうちのひとりだったのに、脇役化してしまった和奈たんカワイソス、と思っちゃった気持ちは非常に分かる気もしました。

なので今年の3月、映画公開のちょっと前に刊行された原作のスピンオフ作品「レジェンドアニメ!」で和奈たんのデートとか結婚式とかのお話を希望! と思っていたら、確かにちょろっと登場はしてくれたんですけど結婚したのは別のキャラクター。このキャラクターに関しては映画では登場すらしていなかった気がするので、小説「ハケンアニメ!」の推しで、彼女が映画におらんがね、と落胆しちゃった場合は「レジェンドアニメ!」はおすすめです。

アニメ界を描くアニメや漫画や映画などをこれからも作るとするなら、監督やプロデューサーといった花形のところはふたつの「ハケンアニメ!」で堪能できたので。スピンオフの「レジェンドアニメ!」で描かれていた、そうでないところからの視点がいくらでもあるスルメみたいな業界もの作品をときどきは見てみたいな、とも思います。

いや、和奈たんの甘~いお話が読んでみたいス、それだけス(笑)


※ 見出しの画像は、みんなのフォトギャラリーよりJoeさんの作品をお借りしました。ありがとうございます。

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