もう覚えていない、祖母の話。
小さい頃、よく祖父母の家に預けられた。小学生くらいまでは毎年お泊りに行っていた。いつも一緒にいるわけではないけれど、私にとって祖母は身近な存在だった。
そんな祖母からよく、戦争の話を聞いた。
それなのに、私はその話をあまりよく覚えていない。唯一覚えているのは、「平成になった今でも、救急車のサイレンで跳び起きて逃げようとしてしまう」というエピソード。あとは、妹を背負って逃げたとか、疎開先での暮らしが大変だったとか、そういう曖昧な、暗くて、ひもじくて、不安なイメージしか覚えて