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インタビュー調査の「適宜確認」②~より深いインサイトを得るための理論・技法編4:「感情分析」

3つの曼荼羅の話の中に何度か「感情」について触れる機会がありましたが「感情」の観点にも分析を深め潜在ニーズをあぶり出す切り口があります。

喜怒哀楽と言いますが、感情には様々なものがあるでしょう。しかし私は基本的に「Happy」(以下“H”)なのか?「Not Happy」(以下“NH”)なのか?という単純化した見方をしています。

「Not Happy」には当然「Unhappy」は含まれますが、その他に「Not very Happy」も含めて考えています。「幸せではあるが満たされないこともある」という状態です。この時の意識は「満たされないこと」に向いていると考えられるからです。

また感情が「今はどちらでもない」(Neutral)場合にはナラティブの中で「その状態の始まり」の刹那、場面にはどうであったのかを問題にします。それがHであったのなら「満足疲労」(満足の潜在化)が発生しているとしてH判定とします。逆にNHだったのなら「あきらめ」(不満の潜在化)が発生しているとしてNH判定とします。また、やり続けていること、やり続けたいことは基本的にHですし、やめたいこと、避けたいこと、いやいやにやっていること、避けていることなどは基本的にNHと判断します。行動にこそホンネが現れるからです。

満足していないわけでは無いが「飽きている」ことが自覚されている場合はNot very HappyですからNHです。

それが「満足」という意識ではなかったとしてもHの状態では何らかのニーズが満たされていると考えます。同様に「不満」ではなかったとしてもNHの状態では満たされないニーズがあると考えます。それが具体的に何なのかは、それをHやNHと感じるに至ったナラティブの中に現れるはずです。

HやNHの感情は生活の中ではごく一瞬の刹那にしか現れないことが多々あるので、「ナラティブ曼荼羅」の「入れ子モデル」のように細やかなナラティブ把握をしないと潜在化しやすいものです。その為に「発言促進」が必要なのですが、例えば「ニヤッ」と含み笑いをしたり、「チッ」と舌打ちをしているような場面と前後のナラティブがナラティブ曼荼羅における発言促進をしているうちに現れてくるものです。

このような細やかなHとNHの判別の中に潜在ニーズ発見のための感情分析の1つ目の切り口があります。正に「神は細部に宿る」のです。


「ビンチの裏にチャンスあり」とか、「人生万事塞翁が馬」などという、物事には必ず裏表があるという観点を持つと、この分析はさらに深められます。それはHにもNHにもそれぞれに「Gain」(得たもの)と「Pain」(失ったもの)があると考えることです。これが潜在ニーズを発見する感情分析の2つ目の切り口です。(※広義には感情分析の一部ですが、特にこの部分を取り上げる場合には「状態分析」と呼んでいます。)

一般化すると「H」の状態では「ニーズの達成・充足」が「Gain」です。「Pain」は「ニーズの達成・充足の裏で失ったこと、費やされたこと」(トレード・オフ)です。例えば「大盛りの焼肉定食を食べられてうれしい(H-Gain)が、中性脂肪が気になる(Pain)」といったことになります。Painについては、ニーズの達成・充足の裏で、これから失われるであろうこと、費やされるであろうことも含みます。この「先を読む」観点は特に未来予測が目的の場合には重要となります。しかしHにおけるPainはGainの裏に潜在し意識に上らないことが多々あります。故に潜在ニーズ発見の切り口となり得るわけです。Hの場合には「そのPainがなくGainが達成されること」が将来に満たされるべき未充足ニーズであると判断できます。これはCAS理論の通りです。

一方「NH」の状態では「ニーズの未達成・未充足」が「Pain」となります。「Gain」は「ニーズの未達成・未充足の裏で得ていること・回避されていること」となります。例えば、「会社で社長に言いたいことを言わずに辛抱している(NH-Pain)が、そのおかげでクビになる不安はない(Gain)」といったことです。Hの場合とは逆にNHにおけるGainはPainの裏に潜在し意識に上らないことが多々あるわけです。この状況では「クビになりたくない」というのは「言いたいことを言いたい」という主たるニーズの裏に隠れている潜在ニーズなのですが、実はそのニーズを達成するために「言いたいことを言わない」というPainをトレードオフとして負担しているという見方もできます。いずれにせよこれまた潜在ニーズ発見の切り口になります。NHの場合には「そのGainを維持しながらPainを解消すること(Painとなっているニーズの未達成・未充足状態を解消すること)」が将来に満たされるべき未充足ニーズになるからです。これもCAS理論の通りです。

このようにHかNHかの感情と、その中でのGainとPainを把握すれば潜在ニーズが発見できるわけですが、上記の判定ができない場合に適宜確認が必要であるということになります。


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