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インタビュアーの選び方~「人となり」を見る

過去の記事のインタビューの方法論のところで「呼吸法」について触れたことがありました。吐く息は相手の発言を止めさせ、吸う息は相手の発言を引き出す効果が有ります。ついでに言うと息を詰めると息の詰まった雰囲気になります。

インタビュアーの方と面談をしていて、このどちらを感じるのか?ということは重要なことです。「吐く」即ち「話す」量が多いわけです。そこからは「圧」を感じます。特に自己主張の強い方にその傾向があると思いますが、私はインタビュアーには不向きだと思います。その人に対してはリラックスして話せなくなるからです。このタイプの人は対象者をアスキングで追い込む傾向があるように思います。また「自己主張」が強いということはすなわち「エゴが強い」ということでありメタ認知やセルフコントロールの能力に懸念がもたれるからです。むしろ、「空気」や「水」のように場の雰囲気に溶け込み、「気配を消せる」ような人の方が望ましいのではないかと思います。

一方、「吸う」タイプの人は落ち着いた、おっとりとした印象を与えます。黙っていてもこちらが自然に話せる印象を持ちます。選ぶのならこちらのタイプだと思います。

偏見かもしれませんが、前者はいかにも「マーケティングやってます!」という感じの方が多いように思います。どちらかと言うといわば「バリキャリ」や「エリート」あるいは「意識高い系」のタイプに近くなるように思います。丁々発止のビジネスパーソン同士の場面ではそれは武器になると思いますが、一般の生活者に対しては、その雰囲気は不要な緊張感や「構え」を生じさせてしまうと思います。「マーケティングやってます」のオーラは対象者に「マーケティング」の答えを話さなければならないと思わせます。しかし、意識マトリクスで明らかにしたように、インタビュー調査において本当の価値を生むこと、話してほしいことは”マーケティングドシロート”のマーケティング評論ではなく”生活のプロ”の日々徒然の生活体験です。

後者はどちらかと言うと「のんびり・ほんわか」した感じで、つい助けてあげたくなるような感じや笑顔にさせられてしまう雰囲気をまとっています。こういう人だと対象者はリラックスして話しやすいと思います。日常の生活体験を聴かせて欲しいと言われれば対象者にとって素直にそれが話せるタイプです。インタビュー調査とは一般生活者の本人たちが「あたりまえ」とか「あえて話すほどのことではない」と思っているような生活の体験談を話してもらうものですから、それが最重要な要素であるわけです。

こういう人は漫才でいうとツッコミタイプよりもボケタイプです。ボケることで対象者の話を引き出していくわけです。しかし実のところ「ボケ」には「間」や「タイミング」が重要で、ツッコミよりもよほど器用さを要求されるものではないかと思います。

その器用さを生かし、臨機応変にツッコミにも変われる変幻自在さがある人は鬼に金棒です。話していて打てば響くような反応を見せる人はこの素質があると思います。また、意見や説明を求められれば積極的かつロジカルに言いたいことをハッキリと語れる、という変貌を見せられるということは重要なポイントです。インタビュアーは生活者から生活体験談を引き出すばかりではなく、それをマーケティング課題解決のインサイト情報に「ホンヤク」するのも仕事なので、その両面を備えている必要があるわけです。この使い分けができるというのも「自我の分裂」に他なりません。場に応じて使う自分を使い分けられるのです。

落ち着いた雰囲気に加え、常に柔らかい表情や笑顔を絶やさないということも重要な判断ポイントです。このような受容的な態度は対象者に話している内容が求められている内容だという安心感や自信を与え、発言を促進することになります。また落ち着いた雰囲気は対象者に発言を急がせず、ゆっくりと普段の生活のことを思い出す余裕を与えますし、発言を短めに切り上げないとまだまだ何か聞かれることがあるのではないかという懸念を抱かせません。すなわちじっくりと具体的かつ構造的なナラティブを引き出すことにつながっていきます。

一方で「バリキャリ」タイプの人はあたかも「尋問」のようなツッコミ方をしたりするものですが、すると、対象者は構えてしまいタテマエや評論的、あるいは抽象的、概念的な話をしがちになります。また、短い発言になってしまいがちでナラティブではなくとぎれとぎれバラバラの具体的でも構造的でもない情報になってしまうことになります。

相手の話にうなづきや相槌などのノンバーバルな反応をこまめに見せる人はリズムをつくって自発的発言を引き出すことに長けています。また、相手の話に興味関心を示している様子がありありとわかる人の方が、仏頂面で話を聞いている人よりもやはり発言を引き出す力を持っています。

この「関心を示す」ということでいうと「インタビュー」そのものの内容(すなわちクライアントが求める質問内容)や仕様、運営にしか興味を示さない人は望ましくなく、それよりも、調査の課題となっている商品・サービスや、クライアントがおかれている状況にむしろ興味・関心を示すインタビュアーの方が望ましいという話は前回もいたしました。

「インタビューについての思いやポリシー」をロジカルかつ情熱的に語れるということや、インタビューに関する自慢話や苦労話、失敗談、あるいは自らのインタビュアーとしての長所・短所などを具体的に語れるか?ということもチェックポイントです。これらが語れるということは、インタビュー調査についてクライアントから言われた通りではなく、プロとして「スジ」の通ったものを持っているということであり、また、毎回のインタビュー調査の結果を自省して次回にフィードバックするということを行っているということになります。

当然ですが人の立場に配慮・気配りができる人はメタ認知の観点からも望ましいと言えます。また礼儀正しく若い人にも敬語で接するといった謙虚な態度の方も同様です。

以上、あくまでも「個人の感想」(笑)であり、バランスの問題でもあるのですが、私が今までの経験の中で持つに至っているインタビュアー選定の際の人となりに関しての観点です。







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