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これまでの家づくりのメリット・デメリットと アフターコロナの注文住宅の考え方(9)

第四章 資産価値を高める家づくり

第三章で紹介した、躯体と内装を分けるという新しい家づくり。
実はこれは、資産価値を高める家づくりの方法でもあるのです。
どういうことでしょうか?
 
そもそも、マンションと戸建てでは「資産価値」という点で大きな違いがあります。
昨今の不動産価格の上昇は、主に首都圏を中心としたマンションの値段が高騰していることに起因しています。

これは国土交通省の作成した、不動産価格の推移を表したグラフです。
この図にあるように、戸建住宅の値段は2010年とくらべてほとんど変わっていませんが(ここ1~2年はウッドショックの影響で上昇傾向が見られます)、マンション価格は右肩上がりが続いている様子がよく分かります。
 
国土交通省が発表した不動産価格指数によると、2010年の不動産価格平均を100とした時の不動産価格は、2021年時点で次のようになっています。
 
●   戸建住宅:114.7
●   マンション:159.6(いずれも東京都の場合)
 
このように、戸建住宅の値段は2010年とくらべてほとんど変わっていないにも関わらず(ここ1~2年はウッドショックの影響で上昇傾向が見られます)、マンション価格は60ポイント近くも価格が上昇しているのです。

どうして、ここまで戸建てとマンションで値段に大きな差が出てしまったのでしょうか?
それは、資産価値に大きな違いがあるからです。

この図にあるように、戸建住宅はマンションよりも急激にその資産価値が下がってしまいます。その理由は、不動産の資産価値評価は新築時からの耐用年数で決まってしまうから。
木造住宅は、税法上の耐用年数が22年と定められています。これはもちろんその時点でその家に住めなくなるとか、性能が大きく下がるというわけではありません。あくまでも減価償却資産として、法定耐用年数が22年になっているということです。
そのため、戸建住宅の建物評価額はおよそ20年でゼロになってしまう。上の図でそれでも資産価値がゼロになっていないのは、土地の値段があるから。戸建住宅の資産価値は建物と土地代の合算で、22年を過ぎても土地代は保たれているわけです。

一方で鉄筋コンクリートのマンションの場合は、建物と土地が一体で評価されます。戸建住宅よりも耐用年数が長いと評価されており、減価償却の期間は47年。つまり100%を47で割るため、価格下落は年間で2%強となります。住宅ローンの10年後の元本の減少率が約25%に対して、マンションの資産減少率は約20%のため、含み益が出やすいのです。
実際、マンションを投資目的で購入する人が増えています。
東京都内では10年前に購入した新築マンションの値段が今でも変わらないどころか、上昇しているケースも決して珍しくありません。10年住んで売却した場合、その間の家賃は無料で、逆に貯金ができているのと同じことというわけ。そのためマンションを購入する人が増え、さらにマンションの価格を押し上げる結果となっています。

では、戸建住宅はマンションよりも劣っているのでしょうか?
決してそんなことはありません。
戸建住宅の資産価値を測る物差しとして、22年を減価償却とするのが「法定耐用年数」。一方で、「経済的残存耐用年数」というものもあります。これは、物理的要因や機能的要因によってその建物の価値を判断するものです。
建物の価値を測る際にはこの経済的残存耐用年数を用いるのがより実際的で、不動産価格を査定する「不動産鑑定評価基準」にも、「経過年数よりも経済的残存耐用年数に重点をおいて判断すべき」としっかり記されています。
ですから一概に経過年数で建物の価値がなくなるのではなく、しっかりとした性能の家にはそれ相応の価値が残っている。つまり、戸建てでも値段が下がりにくい、資産価値を高める家づくりは可能なのです。そして私が提唱する「躯体と内装を分ける」という新しい家づくりは、資産価値を高めるためにも最適なのです。

そもそも、どうして家の値段は下がるのか?

 躯体と内装を分ける家づくりが、どうして資産価値を高めるのか?
そのことを考える前に、そもそもどうして家の値段が下がるのかを考えてみましょう(法定耐用年数については法律で定められているので、ここでは考えるのは家そのものの価値についてです)。
 
家の構造を躯体と内装で分けて考えるときに、家の値段を下げる最大の理由は内装の劣化にあると私は考えています。

これは上の住宅の価格査定からは木造住宅の値段推移のみを抽出したものですが、これでは家のどの部分の価値が下がっているのかという点は分かりません。
そこで家の値段の割合を、躯体と内装に分けて見てみます。

ローコストな家づくりの場合、基礎や躯体などのA工事が全体予算の60%程を占めます。第四章で考えたように最適な躯体はその土地によって決まってしまいますから、内装関連のB工事にお金をかけるほど、総予算は膨らんでいくわけです。
では、B工事にお金をかけると、家の価値も上がるのか?
実は、全く逆なのです。
築20年の時点で考えると、しっかりとし躯体を作れば、その劣化はほとんどありません。屋根や外壁などの価値は15年から20年でほぼゼロになりますが、性能の良い部材を使うことによってこの部分の価格減少も緩やかな曲線になります。

値段が下がるのは、主に内装部分。躯体と違って内装部分は劣化するのが早いですし、人によって好みも全く異なるので値段も下がりやすいのです。
つまり、B工事にお金をかければかけるほど家の値段は上がりますが、逆にその家の資産価値は下がってしまうのです。
例えば2,000万円の家の場合、A工事とB工事のコストを通常の6:4で考えると、躯体部分が1,200万円、内装部分が800万円ということになります。しかし内装にこだわって、B工事の予算が1,800万円まで膨らんだらどうなるでしょうか?総予算は3,000万円になりますが、内装部分の価値は15年も経つとほぼゼロに近くなってしまう。お金をかけたのに、資産価値という点では1,200万円で建てた家と変わらなくなってしまうのです。

さらにもっと悪いのが、ローコストだからといってA工事にかける分の予算をB工事に回してしまうことです。そうすると当然その家の基本的性能も下がってしまいますから、資産価値もグッと下がってしまう結果となります。
内装にお金をかければかけるだけ家の値段は上がり、売るときに値段が下がるのは仕方のないことです。自分と趣味の合う人がその家を買うのであれば別ですが、日本では自分のこだわりが強い家はどんなにお金をかけても評価されません。むしろこだわりが強い内装の家はそれを取り替えるコストがかかってしまうので、その分のリフォーム代金が請求されてしまうくらいです。
 
家の値段が下がる主な要因は躯体ではなく、内装。まずこの点をしっかり理解しておいてください。

資産価値を高める家づくりとは?

次回につづく

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