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中国で浴衣の女性が連行された件。これは自由の終わりではなく、自由の終わりの始まり

こんな事件がいま、中国で話題です。

8月10日、浙江省・蘇州市の准海街という場所で、日本の浴衣を着た女性が友達と写真を撮っていたところ、突然警察官に声をかけられました。話をするうちに警察官は「中国人のくせに漢服を着ず、和服(注:和服と浴衣の区別がついていないものと思われる)を着るとは何事だ!」と女性を怒鳴りつけました。

「なぜそんな大声を出すのか」と抵抗する女性に対して、警察官は「尋衅滋事」(公序良俗に反する行為)を理由に、女性の服を破れんばかりの勢いで掴み、警察署に連行しました。そして、5時間に及ぶ取り調べを行ったといいます。

今日の記事では、この事件について考えたことを書いていきます。

本質はアレな愛国おじさんの暴走

なんとも怖い話というか、こんなことが起こるんだなあというのが率直な感想ですが、これをもって「浴衣を着る自由もないなんて中国は怖い国だ」とか、「反日感情もここまできたか」というのも、少し違うのかなと思っています。

日本がらみとなると急激に治安が悪くなる中国のネット空間ですが、僕が観察してみた限り、今回はさすがに警察官のほうがおかしいんじゃないかという空気の方が強かったように思います。警察の横暴だ、職権濫用ではないかという声のほうが多数であるように思いました。

普通に考えれば、「中国人なのに和服を着るとは何事だ」というロジックが成り立つのなら、中国人がジーンズを履くのもダメだし、パスタを食べるのもアウトだということになります。少し冷静な人なら、その程度の破綻にはすぐに思い当たるでしょう。いくら反日感情高まる中国とはいえ、ほとんどの人はこれを擁護するほど偏狭ではありません。

そもそも、この准海街というところは日本人街として整備された場所であり、浴衣の人がいることになんら不思議はありません。件の女性も、日本のアニメ作品(「サマータイムレンダ」らしい)のコスプレとして浴衣を着ていたことがわかっています。

なぜそんな場所で、警察官は「日本の服を着るな」などと言い始めたのでしょうか。事件の発生は8月10日ですから、ひょっとしたら終戦記念日が近いということがあってピリピリしていたのかもしれませんが、切り取られた映像からだけではよくわかりません。ともかく不可解です。

たぶん、警察官のほうもよく考えずに言い争いの末にイチャモンをつけただけ、というのがな本当のところという気がします(映像を見ると、警察官のほうに引っ込みがつかなくなっているような様子が見られるように思います)。

ちょっと「愛国心」の行きすぎたアレな人の、末端における暴走というのがこの事件の本質でしょう。突然怒鳴られ、拘束されてしまった女性が気の毒だということはありますが、やはりこれをもって中国における自由がどうとか、反日感情が高まって云々……とかいう話にはあまりならないのではないか、というのが個人的な意見です。

過剰な反応とタブー化

ただ、少し気になる点もあります。

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