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嫁の田舎に来ましたが、なんというかアレです

10月初旬、中国は建国記念のお祭りである国慶節です。多くの人が休みを利用して、旅行や里帰りに出かけます。特に今年は春節(旧正月)の休みの時に新型コロナウィルスのせいで思うように身動きが取れなかったため、この国慶節にはなんとしても実家に帰りたい! という人も多く、それなりに人の移動が活発だった印象です。

僕と中国人の嫁も、嫁の実家である湖南省のとある田舎街に行き、数日滞在しました。僕の住む広東省からは高速鉄道で約3時間の、それほど遠くない場所です。

しかしなんというかその、中国の田舎町ならびにそこに住む人々の習慣というのは僕のような外国人にとってはそれなりに刺激が強いといいますか、困難が伴いがちといいますか、アレだなと思わされるようなことにたくさん出会います(日本的婉曲表現)。

このnoteは、そんなアレな出来事を紹介しながら、中国の地方都市の実態を描く社会派noteに見せかけた愚痴です。

会話は基本的に方言

義実家での会話は基本的に普通話=標準語ではなく、地方話=方言で行われます。

方言というと訛り程度のものを想像される人もいるかもしれませんが、中国における方言は標準語との差異が激しく、地方が違えば中国人同士でも全く通じなくなるレベルのものです。標準中国語を数年学んだ程度の僕には、もちろん理解できるわけがありません。

結果として飛び交う方言の中で、まわりの言ってることが何一つわからないという疎外感を味わうことになります。親戚一同の団欒の中、僕だけ黙々と飯を食ってなんとかその場をやり過ごすようなことが続きます。

みんな大きな声で食ってかかるような口調で話すので、ケンカしてるんじゃないかとビクビクすることもあります(後から内容を聞くとケンカでもなんでもなく、「明日の飯は何にすべきか」というレベルの雑談だったりすることがほとんどですが)。

方言が幅を利かせているのは家庭内だけでなく、家の外でも同様です。スーパーの店員もメシ屋のおばちゃんも、とりあえず方言で話しかけてきます。「説普通話吧 」(標準語で喋ってくれ)と言えば基本的には対応してくれますが、たまに標準語自体があまり話せない人もいて、悩ましいことになります。

今回の滞在でも電話をかけてきた滴滴(カーシェアリングサービス)のドライバーがほとんど標準語を解さず、所定の場所に来てもらうまで大変な苦労をしました。それで困らないのかね? とも思いますが、普段のお客もほとんどが現地の人なので、たぶんそれほど困らないのでしょう。

僕の普段住んでいる東莞市もたいがい田舎ですが、店員やサービスマンが最初から方言で話しかけてくることはほとんどありません。外地からの流入人口が多い=たくさん仕事がある土地では、普通話での交流が基本となります。その土地での普段遣いの言葉が標準語か方言かというのは、そこの発展度のようなものの基準なのかもしれません。

誰一人マスクしてない

ご存知の通り、中国はいま世界を覆う新型コロナウィルス禍に最初に見舞われた国です。今でもウィルスに対する警戒心は強く、徹底した防疫体制が続いています。

続いている…はずなのですが、僕が滞在した町では、本当に、誇張ではなく、誰一人としてマスクをしていませんでした。ノーマスクがあまりに普通の風景になりすぎていて、逆にその違和感にしばらく気づかなかったレベルです。

いちおう交通機関や商業施設など、人が集まる場所ではマスクをつけましょうというアナウンスは各所に出ているのですが、みんなどこ吹く風です。それどころか無数のタバコがポイ捨てされ、オッサンオバハンは容赦無く道端にツバや痰を吐き、三密状態で麻雀やポーカーに興じ、それにギャラリーが集まってさらなる密を形成していました。食べ物のゴミもそこかしこに転がっています。

ウィルス禍を経て中国での衛生意識もかなり向上しましたが、それは主に都市部の話であって地方はまだまだこんなもんです。中国では特に「面倒くさい、邪魔だ」と敬遠される傾向が強いマスクも、ウィルスの最盛期はまだしも感染状況が落ちつた今ではわざわざつけたいという人は少ないのでしょう。マスクがなければ行動の自由がきかない都市部はいざ知らず、地方では誰も気にしていないのが現状です。

とりあえずウィルスとか関係なく衛生には気を配った方がよさそうな気がしますが、未曾有のウィルス禍を経てもこういう感じなのを見るに、ヒトの習慣の恒常性というのはかくも強力なものであるなあと感心する次第です(嫌味か)。

公的機関の対応のひどさ

嫁の戸籍関係でいくつか所用があったので、この帰省を利用して地元の公安(警察署)関係の役所に行って手続きをしてきたのですが、そこでの対応が頭を抱えたくなるようなひどさでした。

まず最初に行った派出所のロビーで、3人のオヤジが全力でタバコを吸っています。誰も注意しないのかよと思って職員を探したのですが、よく見るとその3人のうち2人が職員でした。目も当てられません。

手続きの列に並ぶ人は次々に列に割り込み自分の都合ばかり口にし(ているのだと思う。なんせ方言なので内容がわからない)、職員のほうも普通に割り込んだ人間に対応するのでいつまでたっても僕ら夫婦の番が回ってきません。何度か「請排隊」(並んでください)と注意したのですが、嫁に諌められました。いわく、列をすっ飛ばすような人は何を考えているかわからないから刺激しないほうがいいとのことです。ここは199 X年核戦争後の世界か。

ようやく自分たちの番が回ってきたと思ったら、今度は「この書類はうちの管轄じゃないから〇〇に行け」などと言われます。いやアンタのところに電話かけて事前に確認したから間違いないと思うんだけど? と反論してみるものの聞く耳を持ってもらえず、結局指定された別の役所に行くことに。

その後も2ヵ所ほどたらい回しにされた挙句、結局最初に行った派出所の誰々さんに聞きなさい、などと言われる始末。すでに2時間以上浪費しました。ここまでで僕ら夫婦の怒りはMAXです。

憤りを抱えたまま最初の派出所に戻りその誰々さん(所長っぽいジジイ)をたずねるものの、ここでも一悶着。書類印刷のためにパソコンで入力フォームのようなものを打ち込んでもらうのですが、その所長が操作自体に疎いらしく「アイヤー、印刷できないヨ。このパソコンは有問題」などとぬかしやがるのです。

いいから俺にやらせろとキーボードをひったくろうとしましたが、ここでも嫁に制止されます。「この手の老人はプライドが高いから、怒らせない方がいい。もし機嫌を損ねて「じゃあ書類は出さない」とか言いだしたら面倒だから、ここは堪えましょう」とのこと。核戦争後の世界よりひでえな。

結局アイヤーアイヤーとまごつくうちにお昼を回ってしまい、「午後は会議があるからしばらくこの作業はできん。4時ごろにまた来い」などと言われました。紙ペラ一枚出してもらうのに一日仕事です。もう怒りも湧いてきません。

手続きが始まる前に嫁が「絶対にスムーズにいかないし理不尽なことばっかり起きると思うから、キレないでね」と言ってくれていなかったら、椅子の一つや二つぶん投げて破壊していたことでしょう。

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発展著しい中国、マナーや衛生、サービスなどはずいぶん改善されてきていますが、内陸貧困省に代表される地方と、沿岸省に代表される都市部の落差はいまだに厳然と存在し、しかも両者のギャップは年々広がっているように見えます。

嫁も故郷の現状を「こんなんじゃ、若くて能力のある人はここに残ろうなんて思わない。みんな外に行っちゃう」と憂いています。

先日のnoteでも書いたのですが、このような構造はこの先も保存されるような気がしており、日本の東京一極集中にも似た都市偏重はより強くなっていくのではないかと思っています。

いかんともしがたい話ですが、自分にどうこできる訳もなく、これからも義実家に帰るたびにアレな思いをするのだろうな、とただ思うばかりです。


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