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中国を捨てたがる「中国人」たちに思う

興味深い記事を読みました。

ある報道で在日中国人のグループによる江戸川での清掃活動が取り上げられ、それは「中国人への悪いイメージを払しょくするため」に行われているとされていました。ですが、活動をしている当の本人たちに話を聞くとまったくそのような意識はなく、むしろ中国人だと思われることさえ迷惑だという話さえ飛び出したというのです。

彼らの発言を引用してみましょう。

「自分が中国人でいたくないんですよ。あんなひどい国の国民でいるくらいなら、無国籍の外国人でいたいです」

「日本みたいな民主主義の国の人たちは『中国政府と中国人は別だから、中国人とは仲良く』とか言いますよね。僕らはそう思わないです。ああいうクソみたいな体制に反抗しないで、むしろ喜んで選んで支持している時点で、そもそも中国人自体が根本的に救いがたい連中だと」

(活動の場に大使館職員などが来たらどうするかと問われて)「めちゃくちゃ罵倒します」「中指を立てます」

すべて上掲記事より

なんともまあ、激烈な中国へのヘイトっぷりです。

記事によると、彼らの中心は「支黑」と呼ばれる反体制的な活動をネットで行うグループで構成されているようです。彼らは清掃活動に関して「政治的な意味はない」「やりたいからやっているだけ」というスタンスのようですが、客観的にみていると、どうなのかな……という感じはします。

中国を嫌う中国人の激烈さ

ところで、「中国を嫌う中国人」のなかには、このように中国への極端な拒否反応を示す人が珍しくありません。中国という国、そしてそこに住む中国人に対してまでをも、強い言葉で批判する人も多いです。

有名なところでは、評論家の石平さんがいます。

日本における中国問題の評論家として知られる石平さんは、中国・四川省の出身です。若いころに中国の民主化運動に参加し、天安門事件をきっかけに中国という国に絶望するようになったといいます。その後は日本に活動拠点を移し、2007年には日本に帰化しました。

石平さんの活動を見ていればわかることですが、その内容は「反中」「嫌中」に属するといえるものです。すでに日本国籍を取得した人に対してこのような言い方が正しいのかはわからないのですが、その言動は普通に日本に生まれ育った日本人と比べてもある種「愛国的」であり、かつ中国のことを強い言葉で非難するようなものになっています。

僕自身にも、中国を嫌う中国人の友人が何人かいます。そうなってしまった理由は人によってさまざまなのですが、やはり共通しているのは中国という国に強く絶望し、自らが中国人であるというアイデンティティごと葬り去ってしまいたい、というマインドを持つ傾向があることです。

たとえば最近話をしたアメリカ在住の中国人は、これからの中国に絶望とやりきれなさを感じ、やはり日本への帰化を目指していました。

日本人の中にも日本を嫌う人や、日本のことを批判してやまない人は一定数いるかと思います。しかし、そのような人々であっても、そのアイデンティティはやはり「日本人」として保たれていることがほとんどでしょう。

苛烈に「祖国」を嫌い、ことさらに攻撃し、さらには他国のアイデンティティを求めるまでになる日本人には、あまり心当たりがありません。この違いは、どこから生まれるのでしょうか。

個人的には、中国ではもともと国家とアイデンティティが強く結びついている(統治機構がそれをもって国を取りまとめようとしてきた歴史がある)ぶん、それを喪失してしまったときのショックが強く、その後に起きる揺り戻しもまた大きなものになるのかな……とぼんやり分析していますが、それだけでは説明のつかないものもあるように思います。

このあたりは、これからも時間をかけて中国という国やそこに暮らす人々(あるいはそこを離れた人々)を見ていくなかで、言葉にしていこうと思います。

彼らをとりまく皮肉

もう一つ、中国を捨てたがる「中国人」たちを見ていて、思うことがあります。

それは彼ら自身にとっては決して喜ばしい分析ではないことが容易に想像できるので、以下を有料とします。

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