見出し画像

ニュースメディアさん、中国政府とか共産党をモンスターみたいに扱うのはやめませんか

何気なくYouTubeを見ていると、こんな動画が出てきました。

なんとも厳めしいタイトルとサムネイルです。

せっかくなので見てみました。すると、冒頭からなかなかのパンチラインが飛び込んできました。以下に書き起こします。

中国の習近平政権は教育や文化、経済などあらゆる分野で思想統制を強めていて、中国社会は戦々恐々としています。

うーん。ちょっと引っかかります。

いま中国で様々な面での規制が強まっていることは事実ですが、それをすなわち「思想統制」といっていいのかは微妙な気がするのです。

動画の最初には小学校に習近平思想が導入されたことを取り上げていましたが、別にそれに人民のみなさんが危機感を抱いているというような話は少なくとも個人的には聞いたことがありません。逆に喜んで受け入れているということもなく、良くも悪くも無関心です。

その後動画は教育関係への規制、スマホゲームへの規制、「共同富裕」などの話題に展開していきますが、これらは少子化対策や子供の健康対策、格差解消を目指した再分配についての具体的な施策の話です。もちろんそのやり方や内容に対してさまざまな意見はあるでしょうが、これらは前述の教育内容のような「思想」の話ですらありません。

またこれらの施策に対して、国民が「厳しく理不尽な統制」という評価をしているかというと、必ずしもそうではありません。特に学習塾やゲームに対する規制などは、「やり方は極端だけど、あいつら儲けすぎてたし問題もあるから仕方ないよね」という意見も少なからず聞かれます。

やっぱり、これらが「思想統制」であり、それに対して「社会が戦々恐々としている」というのは少し不適切ではないのかな、と率直に思います。

そのサムネはどうにかならんのか

まあそのへんは解釈の違いで、この動画を出しているFNNは独自に「中国社会が戦々恐々としている」と思えるような事実を拾っているのかもしれません。また後半部分についても、さまざまな規制を「思想統制」ということでまとめてしまったほうが視聴者に伝わりやすいという判断したのだ、と見ることもできます。そのあたりはいったん気にしないことにしましょう。

ただ、そういう諸々を気にしないことにしたとしても、僕がどうしても引っかかってしまうのは動画のサムネイルです。以下はスクショです。

あくまで個人的にですが、このサムネイルに書かれた「14億人を脅かす」という文言や無駄にイカツいフォントなどは、中国政府ないしは中国共産党、さらには習近平国家主席自身を「野蛮な抑圧者」「人民を恐怖で統制するモンスター」のように印象づける意図があるように見えます。

もちろん、中国政府の政策や共産党のやり方にはさまざまな意見があってしかるべきです。それらが日本から見て違和感が強いものを多く含んでおり、得体の知れないものに見えてしまうことも、現実としてあると思います。しかしこのように、最初から何か「自明の悪者」のように扱ってしまうことは、かえって中国政府や中国共産党を見る目を曇らせてしまうのではないかと思うのです。

相手を「よくわからないが、ひどいことをしている奴」として見ることは、それ自体が対象への敬意を欠くことであるというだけでなく、その対象の実態へのフラットな評価を難しくします。それはつまり、中国のやっていることの中にあるかもしれない学ぶべき部分や、逆に本当に脅威に感じなければならない部分がわからなくなってしまう、ということにつながります。

何も、「いいところも積極的に取り上げよう」とか言いたいんじゃないんです(むしろ、何かに媚びるみたいに「中国のいいところをもっと伝えよう」と繰り返す手合いは、僕自身好きではありません)。

ただサムネイルでの煽りみたいなことをやらないだけでも、ずいぶん印象は違ってくるはずです。

商売だし仕方ないよね

まあ、このようなサムネになってしまう理由もなんとなくは理解できます。つまり「煽り」のようなオドロオドロしい文言やイメージを入れ込んだほうが、動画を見てもらいやすいということなのでしょう。実際、件の動画は僕が見た時点(2021/09/19)で、36万回も再生されていました。公開から4日しかたっていないにもかかわらず、です。「バズらせ」としては、まんまと成功しているのです。

視聴者が望んでいる以上はこうなってしまうというのも、致し方ないことかもしれません。FNNもボランティアでやっているわけではないし、おそらくそこには「見られてナンボ」の世界が広がっているのでしょう。商売なんだから甘いことは言ってられないというのもあるのだと思います。

ただFNNといえば、フジテレビ系列のニュースネットワークです。天下のフジテレビが、こんな安っぽい「煽り」みたいなことをする必要が本当にあるのかな?視聴者を「こうしてやらなきゃどうせ見ないだろう」と馬鹿にするのではなく、もうちょっと信用してみてはどうかと、一視聴者として率直に思いました。

関係者に届きますように

FNNのチャンネルといえば今年の4月、こんな動画を出しています。

中国の風景の中に存在する「あるある」を切り取ったもので、Twitterのハッシュタグが元になったものです。僕としては非常に面白く興味深い動画ですが、一般的にはやはり伝わらなかったのか7000回ぐらいしか再生されていません。

実は、この元になったハッシュタグを考えて最初に投稿したのは僕です。

もちろんFNN自体は大きな組織ですから、この動画を作った人と、上で取り上げた「中国14億人を脅かす〜」の動画を作った人はまったく別のチームであろうことはわかります。

ただ、FNNに関係している人の中に、僕のTwitterなりnoteをチラッとでも見てくれた人がいるんじゃないか……? という淡い期待をもとに、誰か一人にでも伝わればいいなと思ってこのnoteを書いてみた次第です。

もしこのnoteが関係者に届いたら幸いです。

いただいたサポートは貴重な日本円収入として、日本経済に還元する所存です。