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車いすテニスを激変させたプレーヤー

2020年1月20日付け ITF世界ランキングで国枝慎吾選手が再び1位に返り咲いた。2019年は1位でスタートしたものの、ランキング2位でシーズンを終了していた。ただ、昨シーズンは、グランドスラムでタイトルを手にできなかったものの、本人のキャリアの中で、実は最多勝を記録していた。まだまだその進化は止まることがないようだ。

国枝選手は、パラアスリートとしては有名すぎるくらい有名だ。では、彼のどこがそれほどすごいのか。ここに書くのは、あくまでも私の個人的な考えにすぎないのだけど。すごいところはたくさんありすぎるのだけど、でも、「本当にすごいところってここでしょ!!」と声を大にして言いたいことがある。

国枝選手といえば、アテネパラリンピックのダブルスで金メダル、北京ではシングルス金メダル、ダブルス銅メダル、ロンドンはシングルス金メダル、リオはダブルスで銅メダルと、出場した全てのパラリンピックでメダルを獲得している。グランドスラムでは26度の優勝(車いすテニスのグランドスラムは少し複雑なので、いずれ詳しく解説しようと思う)、車いすテニスの国別対抗戦では2003年、2007年、2018年で優勝。さらに、107連勝という前人未到の記録を打ち立てている。

数々の記録は、もちろんどれもすごいものだ。来月には36歳になろうとしている現在でも、まだテニスの技術を極めようと日々努力を重ねている姿ももちろん素晴らしい。だが、国枝選手が本当にすごいのは、「車いすテニスを変えた」ことにある。

よく、国枝選手がテレビなどで紹介されるときに、その代名詞として取り上げられるのが「バックハンドのダウン・ザ・ライン」だ。以前某局でコメントを頼まれたときも「バックハンドのダウン・ザ・ライン」についてだった。だが、その武器と言われるバックハンドのショットを車いすテニスに取り入れたということが、今のハイレベルな車いすテニスを作ったといっても過言ではないのだ。

テニスの技術的な話になってしまうが、車いすテニスのバックハンドは「スライス」というアンダースピンをかけたショットを打つことが一般的だった。スピードはないが滞空時間が長い、あまり弾まないために相手が返球しにくいという特徴があるため、どちらかというと守備的な場面で使われることが多い。国枝選手はその主流だったスライスではなくトップスピンを取り入れたのだ。トップスピンは順回転をかけることで、ボールにスピードが生まれ、さらにバウンド後に伸びる特徴があるため、より攻撃的な展開に持ち込める。

今では、車いすテニスでバックハンドのトップスピンを打つのは当たり前になったが、そのきっかけを作ったのが国枝選手だった。そして、バックハンドのトップスピンが当たり前になったことで、車いすテニスそのもののレベルが飛躍的に向上したのだ。

ということを、私はもっと声を大にして言いたい!! 某テレビ局でコメントを求められたときに、こうしたことを説明したのだけど「視聴者の方は、そういう説明をしても分からないので」と流されてしまった。放送の時間にも限りがあるから仕方ないとは思ったけど。

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