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カイロ大学(カイロ/エジプト)留学体験記(2019年秋-2020年春)、エジプト国立大学交換留学の現状

  今回はエジプト留学時代の筆者の同期に、カイロ大学への交換留学について書いていただいきました。大変ありがとうございます。また、エジプトの国立大学(カイロ大学とアインシャムス大学)における交換留学の現状について、特に同期の方々の伝聞を基にして、そのメリット・デメリットについてまとめました。

留学の契機・目的

アラビア語の学習とアラブでの長期生活
 エジプトの選択は派遣の中からの消去法ですが金銭的には休学して奨学金をもらうのが一番賢いかと思います。フランス語が出来ないのでモロッコは除外、シリアは当然除外、パレスチナは政治的問題があるので除外とすると消去法でエジプトになります。休学なら選択肢も多いでしょう。

留学の体系

 交換留学一年ですが紙切れのみの交換留学で実態は私費での語学学校留学と何も変わりません。大学には留学生向けの授業はなく単位も認定されませんし聴講身分で受講したところで方言の理解が必要になります。

留学でかかった費用と工面方法

 ジャッソの給付金はエジプトだと6万円の支給です。生活費は安いのでこのような値段なのですが何しろ大学が役に立たず語学学校へ通う必要があるために物価が安いと雖も高額になり、おまけにカイロでは物価の割に家賃がとても高くある程度の質を求めるなら複数人で住む必要があるでしょう。給付金では足りないので貯金を使いました。
 派遣留学及び給付金の手続きに関しては大学が細かく書面で教えてくれるのでそれに従えば問題ありません。給付金は派遣留学の場合普通以上の成績を維持していればまず支給されないことはないでしょう。往復の渡航支援金は所得制限が厳しいです。

エジプトでしたこと

語学学校での正則アラビア語の学習(方言は少しのみ)
放課後のカイロ散歩と週末の日帰り郊外探索


普段の1週間のスケジュール

日曜日 10-13時 正則アラビア語
月曜日 8-10時 方言 10-13時 正則アラビア語
火曜日 8-11時 正則アラビア語
水曜日 8-10時 方言 10-13時 正則アラビア語
週16時間

留学してみて良かった経験、嫌だった経験

 アフリカであることを考えると質さえ問わなければ何でも手に入り、またアラブ諸国の中でも見所は極めて多い方であり退屈するまでの期間は長いでしょう。しかしあまりに民度が低くごく一部のエリートと金持ちを除いて人間の質と人間関係には期待できません。東アジア顔でありイスラム教徒でもない場合は人によっては嫌になるでしょう。あと環境と衛生面にも期待できません。正則アラビア語の学習には向かず何度言っても方言でしか返ってきません。諦めてエジプト方言に切り替えるかそれとも方言は最低限にして語学学校で正則アラビア語を鍛えてエリートのみと接するのが良いでしょう。とはいえ刺激には溢れていて生きる力を身に着けるのには良い場所でしょう。

後輩にメッセージ

 アラビア語圏への留学は環境の質や民度や飽きを考慮すると短期間の生活を二か国以上でするのが良いでしょう。また折角中東にいるのでビザ期限などのタイミングで周辺国へ旅行するのがお勧めです。日本では取得困難なアルジェリアの観光ビザも滞在資格があれば取得可能です。

出費に関して

語学学校ヌーン
1時間120ポンドを週16時間
 イスラム的であったり休憩時間の長さや休講の多さが気にはなりますがエジプトであることを考慮すればかなり良いでしょう。教科書は一冊150ポンドのコピー本か新聞やネットから印刷した文献等です
 教科書は接続詞とメディアアラビア語に関するもの、また方言では「アラビア語で話そう」という有名な冊子を初級から中級まで進めました。


家賃
 月5000ポンドに200-400ポンドの管理費。電気代は高く先払いで月100ポンドほどします。ガス代はタダ同然です。道の状態が悪く野犬が異常に多くまた断水が異常なほど多いために値段を考えてもオススメできない物件です。面倒かもしれませんが家探しには時間をかけたほうが良いでしょう。語学学校を頼るのが一番です。

管理者追記・エジプト国立大学交換留学の現状

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カイロ大学正門近くの大ホール

 カイロ大学・アインシャムス大学への交換留学協定を使っての留学は、東京外国語大学、大阪大学において1ヶ月の短期留学プログラムが行われていることもあって、選択肢として考えている人は多いと思われる。ただ、管理者が伝聞で聞いた情報をまとめると以下のようなメリット・デメリットが存在する。

メリット:エジプト人の友達が出来やすい。他授業の聴講ができる。

デメリット:留学生へのサポートがほぼ無い。授業が少ない。

 交換留学生は、日本語学科の授業に出ることが多いので、必然的に日本語・日本文化に興味を持つ学生と繋がりやすい。エジプト人は積極的なので遊びに誘ってもらえる機会も私費留学生よりも多くなるであろう。エジプト人の学生は、よく学科内での日帰り旅行を企画しており、交換留学生もそれらに参加していて、とても楽しんでいるように見えた。

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カイロ大学文学部日本語学科。管理者も一度だけ授業に出席したことがあった。

 また、2011年の革命以降、エジプトの大学への入構は厳しく制限されるようになった。そのため、交換留学生でないと、大学に入る機会はほぼ無い。特にカイロ大学は各界に優秀な人材を供給してきた、アラブ世界を代表する大学であるので、(筆者の同時期にはそういう人はいらっしゃらなかったが、)興味のある授業を潜って受けてみたり、大学付属施設(図書館など)を活用したりということができるのがメリットとしてあげられる。

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カイロ大学中央図書館

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エジプトの文系最難関、カイロ大学政治経済学部

 しかしその一方で、交換留学生への対応はあまりにも貧弱である。伝聞の情報ではあるが一例をあげると、学生証をすぐに発行してもらえない、窓口対応は英語はおろか、正則アラビア語ですらなく、エジプト方言であるといったものがある。ビザの優遇措置なども特には無い。
 また、留学生向けのアラビア語の授業がない、またはあっても習熟度別にされていないためグダグダになっているようだ。そのため同時期にいた交換留学生は全員、体験記にあるように語学学校に通う、もしくは家庭教師を雇っていた。その他の授業に関しても、エジプト人の先生だと1コマ(2時間)のうち半分遅刻してきたり、適当な授業をされてしまうといった不満の声を聞いた。また、受講している授業は2-4コマ程度であった。交換留学という形態上、学費は所属大学に納めなくてはならず、その学費に見合うかどうかと考えると疑念を抱いてもしかたがないであろう。

 よって、以上のメリット・デメリットを勘案すると、友達を多く作りたい、エジプト方言をメインで勉強したいという学生には、カイロ大学・アインシャムス大学への交換留学は推奨できる。その一方で、正則アラビア語をメインで勉強したい、もしくは大学でしっかりと受けたい学生には、大学を休学しての私費留学や協定がないエジプトの他大学や他国への留学を検討した方が良いのではと考える。

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