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 前述した通り、エジプトの交通機関は日本人からみると全くもって無秩序に見え、初めて来た人が使いこなすのは非常に難しい。しかしこれらの交通機関は、日本とは別の秩序に基づいて動いており、それを理解しさえすれば使いこなせ、移動を安く行うことができるようになる。
 以下の交通機関に関する記述は、基本的にカイロ市内についてだが、おおよそ、他都市にも適応できる内容である。


① バス

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一番ポピュラーな形のバス。オンボロで、黒煙を吐きながら走っている。

 カイロ市内を走る大型バス、中型バス。料金は路線によって異なるが、空港からタハリール広場までの大型バスは5ポンド、ショブラー・ヘイマからスフィンクス前までの長距離路線は7ポンドなどである。中型バスは大体の場合、5ポンドである。大型バスの場合は車掌に、中型バスの場合は、車掌が乗っている場合もあるが、後述のマイクロバスと同様に直接運転手に渡す場合もある。
 なお、路線数は非常に多く、エジプト人も自分が使う路線以外は覚えていないであろう。よく使われる路線については、まとめた路線図があったので、こちらを参照してほしい。

 また、お勧めの路線としては、2001・2002番があげられる。2001・2002は両方ともピラミッドへ向かう路線。2001番はスフィンクス前から、ギザ広場、地下鉄ドッキ駅、インバーバを経由してショブラー・ヘイマまで向かう路線である。2002番はピラミッド・サイト側の入り口始発で、ギザ広場から、ナイル川を渡り、川沿いに北上するルートをとる。この二つの路線は、運賃は7ポンドと高いものの、比較的空いており、冷房付きの新造車なので快適に移動できるので安くピラミッドへ行きたい人におすすめ。中型バスでは、オラービー駅・ナセル駅・タハリール広場を経由して、ザマーレク・モハンディスィーン方面に行くルートのものが便利。

 最近グーグルマップでルート検索する際に、バスのルートも一部表示されるようになったが、これは最新のバスを用いた路線となっている。この路線のバスは、フルカラーLEDの方向幕を搭載しておりすぐに見分けがつく。筆者自身は乗車したことはないものの、運賃は大型15ポンド、中型10ポンドだそうである。

 基本的にバスターミナル以外にはバス停はないので、どこでもバスを停めて、降りることができる。ただ、交差点付近などで人だかりができているところは、バスが停まるポイントになっている可能性が高い。自分が行きたいところのバスを停める、見つける方法としては、
①バスターミナル・バスの停まるポイントで行きたい場所を運転手に伝える、②ハンドサインで行き先を伝えるor止めて直接聞く、の2つがある。降りる際には、運転手にその旨を伝えると、減速してくれるので、注意しつつ飛び降りる。

② ミニバス

 カイロ市の中型バスとほぼ同じ大きさのバス。後述のマイクロバスと料金はほぼ同じだが、行き先表示はない。また車掌が乗っている場合が多く、移動距離も長い。「Hashim Bus」と書かれているものが多い。
 代表的な路線としては、モハンディスィーン・ドッキ橋・大学通り・カイロ大学正門・ギザ広場・地下鉄ギザ駅・ギザ通り・ルマイヤ広場(ピラミッド)を経由する路線である。運賃は距離別だが、基本的に3.5から4ポンド。


③ マイクロバス(都市内交通)

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 大型・中型バスに比して、短距離を結ぶ。また、スピードも早く、乗り降りも融通がきき、本数も多い。ただ、急加速・急減速が多く、車内は狭いので乗り心地は悪い。車両は、トヨタのハイエースがほとんど。路線によっては、さらに小さなスズキのミニバンが使われていることもある(こちらはタクシーである可能性もあるので注意)。
 行き先は書かれていない場合が多いので、ハンドサインで行きたい場所を伝える。ハンドサインが分からなければ、手首を胸の前で上下させて乗る意思を伝えれば、止まってくれる。

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「ドッキ」のハンドサイン。これらのサインの一部について、こちらの記事がまとめている。


 運賃は距離別で、2ポンドから3.5ポンドくらいが多い。運転手に直接渡すか、後ろに乗った場合には、前の乗客に人数・行きたい場所(ワーヘド・ギーザ/ギザ広場まで1人など)を伝えると、その人が運転手に渡してくれる。
降りる際には、横によって!(アラ・ガンブ)を言うか、場所の名前(ムスタシュファー/病院、マフカマ/裁判所など)を言うとその前に止まってくれる。ちなみにマイクロバスの運転手は、エジプト方言でヤスター(フスハーだとライースに相当。男の友人同士の呼びかけにも使う)と言われているので、運転手に呼びかける際にはヤスターを使おう。

 便利な路線としては下記のものがあげられる。

・ギザ広場⇄キットカット・インバーバ(コルニーシュ通り経由)
運賃:ギザ広場からキットカットは3ポンド。ガラー広場からキットカットだと2.5ポンド。
 途中、ドッキ地区のガラー広場(正確には、トンネルを潜るので、この辺りで乗る)も経由するので、ドッキ地区東部の人が、ギザ広場に行く際、もしくはドッキ地区の人がザマーレクに行く際に多く用いられる。ザマーレクに行きたい時には「コブリー・ザマーレク(ザマーレク橋。ちなみにコブリーはトルコ語のキョプリュköprüに由来しているそうである)」、もしくは「スィッリム・アウワル(ザマーレク南部に行きたい時)/ターニー(同北部に行きたい時)」と伝えれば大丈夫。帰りは、ガラー広場の下をくぐるトンネルのところで、「アウワル・ナファク」と言えば、トンネルの入り口のところで降りられる。
 また、ザマーレク橋始発のギザ広場行き、ガラー広場始発のインバーバ行きも存在する。

・地下鉄アタバ駅⇄ホセイン(フサイン)
地下鉄2号線・3号線のアタバ駅から、有名な観光地ハーン・アル=ハリーリやアズハル・モスクなどがあるホセイン地区までを結ぶ。アタバ駅前のオペラ広場から出ている、スズキのワンボックスタイプ。3.5ポンド。

・ドッキ⇄タハリール広場(タハリール通り)
タハリール通りを直進するマイクロバス。ドッキ駅から遠い、ドッキ東部に住んでいる人がタハリール広場に行く時に便利。


④ 地下鉄(メトロ)

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画像出典:TFC Maps
現在アタバで止まっている緑の路線が、左側へと延伸する予定。

 ニューマルグ・ヘルワーン間の1号線、ショブラーハイマ・ムニーブ間の2号線、アタバ・エル=シャムス・クラブ間の3号線がある。なお、3号線は2020年末にザマーレク、キットカット方面に延伸予定。
 運賃は、初乗り3ポンドで、通過する駅数により、5ポンド・7ポンドと高くなる。また、3号線は初乗り5ポンドで、最高10ポンドとなっている。また、1・2号線と3号線の切符は同じ金額の切符でも別扱いとなっているので、例えば1・2号線の駅で3号線への往復分の切符を買ってしまうと、復路で使えないといった問題が起こるので注意。

 切符は窓口で購入する。係員には(枚数・チケットの金額or行き先)の順に言う(例えば、2枚の3ポンド(サダト駅まで)の切符の場合、「イトゥニーン・タラータ(orサダト)」となる)。窓口は、時間帯によってはかなり混雑するので、よく使うチケットのまとめ買いがお勧め(例えば3ポンドの切符を10枚など)
 また、GOカードというプリペイド式のICカードも購入できる(50ポンド)。ただ、販売・再チャージは大きな駅でしかやっておらず、混雑していると断られることもある。そこでお勧めなのが、前述のまとめ買いとの併用である。使用頻度の高い3ポンドの切符はまとめ買いを行い、それ以外の金額の時のみカードを使う。こうすると、混雑時の切符購入のイライラを軽減できるであろう。

⑤ 高速バス

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 都市間の移動の際に用いられる。本数は国鉄よりも多いが、やや高く、渋滞に巻き込まれると遅い。後述するマイクロバスより遅く、基本的にターミナルでしか乗り降りが出来ない。値段はほぼ変わらないが、居住性・安全性は上回っている。マイクロバスには無い夜行長距離路線(西武砂漠のオアシス、マルサ・マトルーフ、シナイ半島)がある。
 カイロのターミナルは、地下鉄オラービー駅近くのトルゴマーンと、タハリール広場のものが代表的。またギザ広場にもオフィスがあるそうである。これらの停留所では、事前にチケットを購入することも可能。特に、大人気のシナイ半島路線や本数の少ない西部砂漠路線を使う場合には、1週間前には購入した方が良いだろう。


⑥ マイクロバス(都市間)

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バンハーのマイクロバスターミナル

 都市間の中・長距離の輸送を担う。高速バスより早く、頻度も多く、やや安い。しかし、スピードの出し過ぎゆえの交通事故も多発している。固定料金制で、目的地到着前に車内の乗客が全員で精算を行う。カイロの複数箇所にターミナル(アブード・ムニーブ・ラムセス駅前など)があり、それぞれ多い方面がある。例えば、アレキサンドリアに行く場合にはラムセス駅前から多発している。

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アレキサンドリア砂漠ロードの休憩所。2時間以上かかる都市間バスの場合、このような休憩所で30分ほど休憩する。


⑦ 国鉄

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 車両は古く、遅延・事故も多い。ただ、他の物価が上昇を続ける中、価格は上昇しておらず、相対的に安くなっている(たとえばカイロ-アスワーン間は1等でも200ポンドほど)。また、特急列車に関しては、車両はそこそこには綺麗で、住空間は悪く無い。アレキサンドリア-カイロ間、カイロ-ルクソール・アスワーン間(夜行もある)が主に使われる。
 カイロ-ルクソール・アスワーン間では、一般の座席車とは別に寝台車もある。ドル払いで、70ドルと物価に比して高額ではあるが、サービスは良く、日本ではほぼ消滅してしまった寝台車の体験ができるのでおすすめ。
 特に週末のカイロ・アレキサンドリア間はほぼ売り切れるので、事前に購入した方が良い。切符は、ラムセス駅をはじめとする国鉄駅にても購入できるが、ジプト国鉄のホームページから買う方が、早くて便利。アカウントを作り、乗りたい列車を選択、人数・名前などの個人情報を入力(色々求められるが、そこまで厳密に書かなくてもOK)、クレジットカード(2段階認証あり)で決済して終了。検札時には、決済終了後に送られてくる切符の画面のスクリーンショットを見せれば大丈夫。ただ、1つのアカウントで購入できるのは4枚までという制限や、1日に2回以上購入できないという制限があるので注意。
 国鉄についてもっと知りたい方は、こちらのYouTubeチャンネルでより詳しく紹介している。


⑧ タクシー

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手前の白い車が代表的なカイロのタクシー。一方、奥の黒い車は旧式のタクシー。メーターが付いていない。

 エジプトで最も厄介な交通機関。カイロの一般的なタクシーは白いセダンタイプのもので、これにはメーターがついている。ただ、言わなければ動かさない場合もあり、異常に高くなる設定をされている場合もある。またしっかり動かしていても、道を遠回りされる場合(普通に迷っている場合もあるが…)、最後にこの価格は安いからもっとよこせなどと言われる場合もある。最初にこの値段でしか行かないと言ってくる場合もある。カイロの道がわからないうちは、後述のウーバー・カリームを使った方が無難で安心であろう。ただ、自身が道を知っている場合や、運転手が分かりやすい場所に行く際には、ウーバーよりも運賃が安くなる場合が多いのでエジプト生活に慣れてきたら使ってもよいだろう。


⑨ ウーバー・カリーム


 空港到着編でも紹介した。ウーバーは世界で最も有名な配車アプリで、カリームはそのエジプト版で、現在はウーバーの子会社になっている。ウーバーは、Googleマップを使って客のところまで来て、目的地まで行ってくれるので、わかりにくい場所に行くときなどは大変便利。また運転手が故意に、もしくは過失で遠回りして、過大請求をされたときには、ウーバーに連絡すると(これもアプリの指示に従えば良いだけなので楽)一瞬で返金される

 ここまで交通機関について紹介してきたが、最後に挙げたタクシーやウーバーも日本と比べれば非常に安価なので、ストレスや体力消耗を避けるために、公共交通機関を使わないというのも一つの選択肢であろう。ケチって体調を崩してしまったら元も子もない。留学の主目的達成のためには、ある程度の贅沢をするのもエジプト留学生活を乗り切るコツであると思う。


(謝辞)

 本記事の情報の一部については、留学同期の方から情報提供をいただいた。この場を借りてお礼を申し上げたい。

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