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最も悲しかった撮影の記憶

 これまで私の好きな北海道の風景やその中に生きる野鳥・動物たちの姿など、私が綺麗、可愛いと感じる写真を中心にアップしてきました。今日はその正反対というべき写真とその時の記憶を書き記します。今日の写真のような姿はもう二度と見たくありません。今後、旅行などで海や川、山など自然豊かな場所に行かれる方もいると思いますが、本当にちょっとした人間の行動がこのような悲しい事態を引き起こすことを心に留めておいて欲しいと思います。

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「143」に出会った日

 上の写真は今から8年前の2012年1月の終わりに北海道で撮影したものです。この日は終日、他の場所で撮影をしていて、そこから宿に帰る途中で何気なくタンチョウの給餌場に立ち寄った時に撮影しました。普段の撮影ならカメラもレンズも三脚などの装備もフルに持って歩くのですが、この時は日も暮れてしまっていたし、あまり作品作りのできそうな光線状態でもなかったし、単に「タンチョウは何羽くらいいるかな?」と見に行くだけのつもりだったので、超望遠のレンズや三脚などは車に残し、カメラ1台に70-200mmのズームレンズを付けて持って行きました。その時に目に止まったのが写真の中央にいる「143」の足輪を付けたタンチョウです。
 肉眼では「何か食べてるか、咥えてるのかな?」といった感じに見えて、何を食べてるのか見てみようと思ってシャッターを切ったのが上の写真です。カメラのモニターを最大に拡大してみると、「何か」は判別不能でしたが、「咥えてる」のではなく「くちばしに何かが刺さってる」のは確認できました。
 慌てた私は一緒に撮影していた先輩カメラマンと一緒に近くのレンジャーさんのいる事務所に行ってみましたが、生憎その日は休みで時間も遅かったこともあってか不在でした。
 ただ、幸いなことにその日の宿のオーナーはカヌーなど自然の中のアクティビティやガイドをされている方で、レンジャーさんとも顔見知りだということで、その日私たちが見たことをお伝えし、レンジャーさんにも連絡をとってもらいました。その後、オーナーさんのパソコンで画像を拡大し、確認してみたのが下の写真です。これ以上拡大すると見づらくなってしまうので、ここではこのサイズでアップしますが、143のくちばしに刺さっていたものは、朽ちて錆びた甘酒の缶でした。そして、画像を見る限り、「143」は空き缶が邪魔になって口を開けることができない状態であることも予想できました。
 この「143」の話は、地元の北海道新聞だけでなく、テレビ各局で全国ニュースで扱われたので記憶されている方もいるかもしれません。それらを見た方の中には「早く助けてあげて!」と思った方も多いと思います。しかし、レンジャーさんの当時のブログにも書かれていましたが、野鳥や野生動物を保護するというのは決して簡単なことではありません。

https://yacho-hogoku.seesaa.net/article/252413354.html

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「これくらい」のことが野生動物に悲劇をもたらす

 この甘酒の缶を捨てた人がどんな気持ちで捨てたのかは私には解りません。普段から空き缶をポイ捨てしてる人なのかもしれないし、何かやむを得ない事情でもあって捨てたのかもしれません。それでもこの「143」の件は「これくらいなら…」という人間の軽はずみな気持ちが引き起こしたことは間違いないと言っていいでしょう。誰かが捨てた空き缶が川などのタンチョウの生息地に流れ着き、それをつついたタンチョウのくちばしに刺さるというのは絶対にあってはならないことです。もしかしたら私たちが気づかないだけで、同じような悲劇に遭った野生動物が他にもたくさんいるのかも知れません。
 私自身の想いとしては、二度とこんな悲しい写真は撮りたくありませんし、こんな光景を見たくもありません。そのために私たちが何をしなくてはいけないか?決して難しいことではありません。
・ゴミは自分で持ち帰る。ゴミ箱に捨てる
ただこれだけのことです。ほとんどの人が知っていて、おそらくほとんどの人がしていることです。何を今さら…と思う人もいるかもしれませんが、どうかこの当たり前のことを当たり前にして欲しいと願っています。

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