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小説版『アヤカシバナシ』ウェイトレス

よくある話ですが、心霊スポットへ行った時の体験談をお話します。

学生の頃だったと思うのですが、地元では最恐(さいきょう)と言われている心霊スポットへ行く事になりました。

私はそんなにはっきり見えたりする人ではないのですが、いわゆる『感じる事がある』体質。

基本的には耳鳴りがセンサーとなって私に気づかせてくれる。

この日の夜も深い山道に入るとセンサーが感知していた。

空気は壊したくないけれど、危険は知らせなくてはいけないので、車内で3人に『何かが監視しているかも、決して遠くはない場所から見てるような気がする』と話した。


『おお!いいねいいね盛り上がって来たね!』


そう、要するにこういう体質の私が感知することで、危険はもちろんだが、場が盛り上がるって事で呼ばれるのだ。当然だが私も危険を感じたらその場所には行かない事を約束している。

着いた心霊スポットと言うのは・・・

どう説明したら良いのだろう・・・

墓地なんです、普通ではない墓地。

いわゆる異教徒とか、そんな呼ばれ方をした方々の墓地。

詳細は敢えて伏せますのでお察し下さい。

山奥なので木々が延び、空を遮っているので、その暗さはひときわだった。

街灯なんか当然ないし、バッテリーが上がったら帰られないので、エンジンも切り、懐中電灯で探索することになった。記憶だと・・・そうですね、テニスコートくらいの墓地、映画ペットセメタリーのような雰囲気の墓地で、整備されているとは言い難いが、特にひどく汚いわけでもない。

懐中電灯が時折墓に備え付けられた花挿しの金属に反射し、その度に何度もドキッとさせられる。雨上がりなので足元もヌルヌルした泥で歩きにくい。


ウォーン・・・ウォーン・・・


犬だろうかそれとも別の・・・何かの鳴き声の様な唸り声のような、そんな声を一斉に聴いて、ギャー!!!となって車に全員駆け込んだ。

よくある集団心理みたいなアレですよね。

人の話が聴き取りにくいほど耳鳴りが強くなった私は、早く山を下りるように運転手に伝えた。

墓地を出てから振り向くと、私には人影がたくさん見えた。

お墓の影かもしれない、でも暗闇の中に見える影って?

不思議だったけど、恐ろしいって気持ちも特になかった。


午前4時か5時くらいまで営業しているレストランで、ご飯を食べて帰ることにした、現在の時刻は午前2時過ぎ。恋しかった明るさがこれでもかと注ぐ駐車場へ到着し、車を降りてゾッとした・・・。

車が手型でいっぱいだったのだ、泥の手形で。。。


『うわ!!!なにこれ!!!』


嫌な気持ちになったけれど、それでもお腹は空く。

店内はガラガラに空いていたので4人で8人掛けのテーブルに座った。

少々めんどくさそうにおばちゃんウェイトレスがやってきて、水を置き始めた。


コト・・・コト・・・コト・・・コト・・・


コト・・・・


『ちょ!え?』


『いらっしゃいませ、お決まりですか?』


『ラーメンセット』

『私も』

『俺、ハンバークセット』

『ギョウザ定食』


『・・・・・・』


『あなたは?』


居ないはずの席に水を置き、まるで誰かが居るように

注文を聞くウェイトレス・・・。


『うっ・・・』私の耳鳴りが始まった・・・

居るな・・・居る・・・ウェイトレスさんの能力の方が上のようだ。


私はとっさに『この人は体調悪いんで』と言うと『はい、わかりました』と注文を繰り返して去って行った。

全員が無言で食事を済ませてお会計して店を出ようとすると、

『あ、ちょっと、あの人は?』と5人目を指さした。

4人は合わせたかのように走って車に飛び乗り、その場を去った・・・。

申し訳ない事をした気持ちでいっぱいだったが、恐らく自分の存在に気づいてくれた、ウェイトレスさんに乗り換えたのでしょう、仮に行くよと声をかけたところで来るかどうかもわかないわけで、私たちにはどうしようもありませんでした。

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