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小説版『アヤカシバナシ』 22枚目

楽しかった修学旅行も終わり、中学生の私は写真を現像してもらおうと、

近所のカメラ屋さんに向かった。

いつもの顔なじみのおばちゃん店主は『じゃぁ2日後ね』と言って

受け付けてくれたのですが・・・・


控えを持って放課後にカメラ屋さんに向かい、

『おばちゃん!出来てるよね!』と声をかけると、

『え、ええ、でも1枚写真に出来なかったのよ・・・』と言った。


『え?写ってなかったとか?』


『いや・・・写ってるんだけど・・・』


『じゃぁなんで?』


『あの・・・写真に出来ないのよ・・・』


仮にエロいものが写っていたとしたら、中学生には渡せないとか、

そんな権利はないとは思うけど、なんとなくわからないでもないが、

修学旅行で仲間との思い出しか写していないのだ、そんなものあるわけがない。


『写ってるのに写真に出来ないって?意味がわからないんですけど』


『とにかくそういうことだから・・・・』


やたらと顔色が悪く、変な汗をかいているおばちゃんを見て、

これ以上言うのはやめた方が良いと察した。


家に帰ってネガを確認すると、24枚撮りのフィルムが妙に細切れになり、

付け合わせてみると22枚目のネガが切り取られていたことが分かった。


そうなると『なに勝手に抜き取ってんの?』って気持ちも湧きあがり、

翌日カメラ屋のおばちゃんのところに文句を言いに向かった。


『おばちゃん、現像出来ないのはいいけど、ネガ返してよ、

お客さんのネガ切り取るってダメだよね?』


『いや・・・その・・・あれは』


すると困っているおばちゃんの後ろから旦那さんが出てきた。


『はっきり言うよ、写ってはいけないものが写ってたんだよ』


『え?』


心霊写真?とは思ったがわざと詳しく言わせるためにこう言ってみた。

『裏組織的な人ですか?』


『そんなんじゃない・・・私も長い事現像の仕事してるけど・・・

あんな写真初めてでね・・・悪いんだけどお金かえすから、

あのネガはこっちで供養して処分させて欲しい、お願いします』


中学生の私に深々と頭を下げる中年の夫婦。

タダならぬものを感じ、私はその店を出た。


結局22枚目には何が写っていたのかはわからず仕舞いだけれど、

その夫婦の怯え方は異常だったのを今でも覚えています。


そして確かに旦那さんが言った

『供養』と言う言葉が心に刺さって暫く抜けなかった。

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