見出し画像

このまちの大人図鑑 Vol.7 ◀「出会い」と「転機」〜自分の中の「好き」が今の自分をつくる〜

「otte」(オーテ) マツガノミホさん

こんにちは。高尾野中学校ボランティアクラブ「×a」プラスアルファ)です。

「このまちの大人図鑑」の活動として、今回は高尾野で週に一回不定期でこだわりの美味しい食事をお届けしているotte(オーテ)のマツガノミホさんにインタビューさせていただきました!

◀仕事のこと▶
質問…otte(オーテ)というお店の名前の由来を教えてください。

回答…otteっていう名前は、スウェーデン語で数字の8というところから来ていて。実は息子が8日の生まれで、ちょっと安易なんですけど、その8(笑)あと「食」って生きていくなかで永遠に切り離すことができない、無限にずっと私たちと繋がってるっていうイメージで、8を横にしたら∞に見えるというので、otteっていう名前にしました。 

質問スウェーデン語なんですね。ちなみに、なぜ、スウェーデンの言葉だったんですか?
回答…元々北欧が好きだったんですよ。そして新婚旅行でスウェーデンに行った縁がスウェーデンの言葉を使うきっかけかなぁ(笑)

質問今のお仕事を選ばれた理由を教えてください。
回答…実は、ここに来るまで道のりが長いんですよね。この仕事をやりたいと思ったきっかけとしては、小さいころ私の家は共働きだったんです。両親がふたりとも働いていて、お腹が空いたら自分で何か作って食べないといけない環境だったりとか。あと父親がすごく料理が好きだったのも影響しているかもしれません。よく料理を作ってくれていたんですよ。そんな小さな頃の思い出があって、今につながっているんじゃないかなって思っています。

質問先ほど、「ここに来るまでの道のりが長い」って話された言葉が気になったのですが、もう少し具体的にきかせてもらえますか? 
回答…はい。さっき話したように、食べることとか作ることがずっと好きだったんですね。ただ、高校は普通科を選んで、大学を選ぶ3年生の時に、本当に自分の好きなこと何かなって考えたんです。その時の私は雑誌をよく見ていて、特に雑誌のレイアウトを見るのがとても好きで楽しかったんです。そんな理由からエディトリアルデザインの道に進みたいなって思い、デザイン系の東京の大学に進学したんです。
学生時代は一人暮らしをしていて、周りにも同じように一人暮らしをしている友達が多くて、その人達や大学の教授に、自分で作った料理をけっこう振る舞っていたんです。そうしたら、その大学の教授が料理の道に進むのもありなんじゃないかって言ってくれたんです。それがきっかけで「料理っていう道もある」「自分の料理がやりたい」っていう気持ちに改めて出会ったんです。でも、やっぱり就職はしないといけないって気持ちも大きくて、デザイン系の専門学校の先生として就職することにしたんです。そこで2年半くらい働いたのですが、やはり料理が捨てられなくて、もう一回東京に料理を学ぶために行ったんです。その時に一緒に住んでた友達が、フードスタイリストって仕事があるよって紹介してくれたんです。

質問途中ですみません。フードスタイリストってどんな職業ですか?
回答…フードスタイリストって、雑誌とかCMとかでみんながよく見る料理があるでしょう。その料理をきれいに見せる専門の人がいるんですよ。そういう仕事をする人をそう呼ぶんです。

質問そんな職業もあるんですね。続きをお願いします。
回答…そう、それもまたなんか違うなと思って。やっぱり自分は「作っていきたい」「作って人に提供したい」って気持ちに気付いて、ケータリングを専門にしている人のアシスタントについて3年ほど勉強したんです。その人が作ってた料理はすごいんだけど、それだけでなくて生産者と食べる人を繋ぐ架け橋のような取り組みをしている人だったんです。それで、自分もなんかそういうのしたいなと思ったんです。

質問色んな人との出会いから、多くの経験をされてるんですね。
回答…そうなんです。すごい紆余曲折(笑)まぁ、結婚がきっかけで出水に帰ってきて、子育ても少し一段落したので、今ここでこのお店を開いて、地域の人たちにちょっと珍しいなっていうか、よろこんでもらえる料理を提供できたらなと思っています。

質問仕事で大変なことってありますか? 
回答…そうですね。基本一人でしてるので、子供の体調が悪いときは仕事が思うようにできないことですね。あと、開店までの準備や仕込みの時間も限られているので、そこまでに確実に終わらせないといけないっていうところも。メニューを考えたりするのも楽しいけど、大変と言えば大変かもしれませんね。 

質問このお仕事をするうえで意識していることはなんですか? 
回答…作った人の顔が見える素材で料理をつくりたいと思っています。例えば野菜とかは、なるべく義理の母が作った野菜とか、道の駅とか物産館とかに行って準備しています。あと、規格外の野菜なども美味しく調理して、フードロスがないように提供して行きたいって思っています。

質問仕事のやりがいを教えてください?
回答…買ってくださった人たちが、あぁ美味しかったなとか、これなんの味付けなんだろうとか、食べたことで会話が生まれるような、食べた人たちが楽しくなるような場や時間を生み出したいと思っています。あとは、今度は何を作ろうとか悩んでいると、旦那からは同じメニューを続けて出せばいいのにって言われるけど、そこは自分があまり納得できなくて。できれば毎回違うのを作って、食べた人たちに毎回楽しんでほしいです。

質問今の仕事の目標はなんですか?
回答…色んな人に色んな味とか食材とかを知ってもらいたいなっていうのが目標かな。「えっ?何これ!」っていう驚きや出会いをたくさん作っていけたらいいなって思っています。あとは、営業日をもっと増やせるように頑張りたいなっていうことです(笑)

質問仕事をしている中で、一番印象に残っている出来事を教えてください。
回答…週に一回くらいしか開いてないお店に、そのお弁当を楽しみにして毎回来てくれる人がいる。特にここは車がないと来れないような場所にあるから、それでもここを目指して来てくれるお客さんがいるっていうのが嬉しいし印象深いですね。

質問デザイン系のことを大学で学んでらっしゃったっていうふうに聞いたんですけど、この前髪が「お店の名前になってる」看板ってデザインされたんですか?

お店に着くと、かわいい看板が迎えてくれます。

 回答…いい質問してくる(笑)私がやりましたって言いたいところなんですけど(笑)それこそ、大学のとき同じ研究室にいた友達がデザインしてくれました。その人は今も金沢で現役のデザイナーをしているんですよ。実は、すごいいっぱい色々なデザインの提案をしてもらって。最終的にこのデザインに決めました。以前2年くらい同居してた友達で、本当その人がいたから料理の道に進んだっていうのもあるくらい、私が作る料理をめっちゃ褒めてくれた人(笑)大事なお友達です。

◀個人のこと▶
質問
中学生の頃の思い出とかありますか?
回答…中学生の頃の思い出・・・昔使い捨てカメラが流行ってて。今もまた写ルンですとかちょっと流行ってるのかな。中学生の時、ちょっと先生の前でこんなこと言っていいのか分からないんですけど、カメラを学校に持って行って、昼休みとか休み時間にそのカメラで友達とすごいいっぱい撮って遊んでました。なんてことない思い出だけど、そんな何気ない日常がすごい楽しかったかなと思います。

質問…例えばどんな写真を撮ったりしてたんですか? 
回答…どんな・・・友達が踊ってる本当くだらない一コマとか、自分たちでこうやって持って撮ったりとか、あと渡り廊下でわーって走ってくる人を撮ったりとか、なんかそんなくだらない時間が楽しかったかなって、今思います(笑)

質問結構話が変わってしまうんですけど、趣味を教えてください。
回答…料理しかないかもしれない(笑)趣味が仕事(笑)時間があったらなんか作ってる。子供が好きなドーナツを作ろうとか、バナナがちょっと茶色になってきてるからマフィンを作ろうとか、けっこう料理しかしてないかもしれない(笑)

質問今やっているこの仕事をやめたいなと思ったことってありますか?
回答…それはないかな。大変な部分も多いけど、まぁ売れないときがあったりとか、天候に左右されてかお客さんがあまり来なかったりするときは売れ残ったりするんですね。でも、やっぱりお店を開けてるタイミングで買いに来てくれたりとか、週一回しか開いてないお店に、毎回楽しみに買いに来てくれるお客さんがいるのを考えると、やっぱりやっててよかったなという思いの方が強い。

質問この職業についていなかったら何をしていたと思いますか?
回答…デザイン系の仕事をしてたかな(笑)大学でそっちに行ったから、そっちに就職するもんだと思ってたました。もしその料理の道への分岐点に立ってなかったら、デザインの仕事を続けていたかもしれませんね。

質問…仕事は楽しいですか?
回答…楽しかったり、辛かったり、両方ですね(笑)何か作ってるときとかメニューを考えてるときは、すごくわくわくする自分がいる。実は、自分の中でちょっとした決まりがあって、一個のお弁当に入っている数種類のおかずを同じ味付けにはしたくないんです。どこを食べても飽きないお弁当にするにはどうしたらいいかなっていうのを考えてるときとか、あと食材を見ながら今回はこの切り方にしようかなとか、食べたときにこの食感だったらいいかなとか、考えてるのが特に楽しさを感じますね。

◀地域のこと▶
質問この町の好きなところを教えてください。
回答…優しいところだと思う。例えば、子どもがうるさくしていても「いいんだよ」「子供は元気なのが一番だから」って声をかけてくれたりするんです。私が子供の送迎ができないなってときに「やろうか」「やるよ」って言ってくれたりする友達もいたり。なんかそういう意味では人が優しいかなって思います。 

質問逆にこの町の不便なところってありますか?
回答…車がないとどこにも行けないことかな(笑)

質問今挑戦してみたいことを教えてください。
回答…お母さん世代や子どもたちに食に興味を持ってもらうようなワークショップをしてみたいですね。子どもたちにだったら、味噌づくりってどんなのなんだろうとか、包丁の使い方とか、食べること作ることが楽しいって思える機会を作ってみたいですね。

質問30年後、どんな風景が高尾野に広がっていてほしいですか?
回答…30年後っていったら、みなさんが45歳くらいだもんね。活気のある高尾野になっていて欲しいですね。一回都会に出た人たちが、戻ってきたくなるような魅力がある高尾野であって欲しいですね。県内・県外どこ行っても同じようなお店ばかりっていう町じゃなくて。今も色んな特色のあるお店が少しずつ増えてきていると思うけど、お互いにただの競争相手とかじゃなく、共想とか共創っていう思いもあるような、全体として大人たちが楽しんでいるような高尾野の町の風景があったらいいなって思います。

◀中学生にメッセージ▶
質問中学生へのメッセージをお願いします。
回答…・・・こんな私がメッセージとか(笑)
まだみんな三年生。ちょうど高校進学するかとか一つの分岐点だと思う。でも、そこが最後じゃなくて色んな分岐点がもっといっぱいある。その時に自分の気持ちに正直に進んでいってほしいなって思います。他人の人生じゃなくて自分の人生なので。それこそ私も最初は親が医療系の職に就いてたから、作業療法士か理学療法士になりたいなって思っていました。高校に行ってたくさんの色んな人と出会ってもっと世界が広がっていく。そして、大学に行ってまたもっと広がっていくと思う。そんな時、小さい殻に閉じこもるのではなくて、中に飛び込んで色んな選択肢を自分で見つけて、可能性を広げていって欲しい。もちろん、どうしようって悩むのも必要だけど、「とりあえずやってみようかな」とか「とりあえず自分はこうしたいな」って自分の思いに素直に進んでいけばいいかなって思います。人の意見も大事だけど、一番は「自分の気持ち」かなと思っています。

◀まとめ▶
 今回のインタビューで感じたことは「挑戦する事を諦めないこと」です。何事においても真っ直ぐ歩み続けることだけが正解とは限りません。時には立ち止まって考えて、回り道を通って、たくさんの人達から助言を貰い自分の意思で好きな方向に進む。なにかに囚われて無理やり気持ちを押し曲げることは人生の損ともいえるのではと感じました。
 たくさんの気持ちを抱えて迷いながらも挑戦する。そこで悔いではなく、結果を残せられるような人間に私はなりたいです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?