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第4話 開場5分前

楽屋へ到着したKOBはCD販売の準備を始めた。

「今日はリハーサル無しか・・・ 緊張するな。」

ミッキーは荷物を漁りながら、つぶやいた。

「仕方がないだろう。 時間がないんだから。」

ツカチャンは鏡の前で帽子の位置を直した。

「そうだな。でも俺たちはプロなんだから、リハがなくても大丈夫じゃないか?」

ヒラチャンはツカチャンの方を見てこう言った。

「プロか・・・ そうだよ俺たちはプロだよ!ヒラチャンの言うとおりだ。」

ツカチャンはメンバーの顔を順番に見た。

「よし、早く行こう。今日はあの方が来るぞ。」

ケンチャンの掛け声を聞き、メンバーは楽屋を出た。

「あんた達、遅かったじゃない。もうみんなCD並べてるわよ!」

あかね先生は相変わらず元気だ。

でもその元気のおかげで初めての東京公演にもかかわらず、あまり緊張していないのかもしれない。

受付の前には出演歌手のポスターとCDがずらりと並び、誰もが慌ただしく動き回っていた。

「KOBは、どこにCDを置きましょうか。」

トミーは販売コーナーを見回した。

「もうCDの場所は確保してるわよ。」

ひろみ先生が後ろからやって来た。

「あそこのテーブルの・・・ あれ、どうして彼女があそこにCDを置いているの?」

ひろみ先生の視線の先には、すでに他の歌手のCDが陳列されていた。

「仕方ない、一番端に置くか。」

ヒラチャンがそう言うと、一行はテーブルの方へ移動した。

「この場所でも良いんじゃない? パネルが端に置けるし、お客さんの邪魔にもならないし。」

ひろみ先生は皆に向かって言った。

「そうと決まれば、早速準備を。 開場まで時間がない。」

ダイチャンはCDをテーブルに並べ始めた。

さすが頼れるKOBのマネージャーだ。 仕事が早い。

(後にダイチャンは伊達なKOBの正規メンバーとなるが、それはまた別のお話)

開場5分前になり、皆そわそわし始めた。

「あっ、いたわ! みんな、あの方が来てるわよ。」

あかね先生は興奮気味に言った。

ガラス扉の向こう側にその方の姿が見え、一行に緊張が走った。

今日は失敗できないぞ・・・ 誰もがそう思った。

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